母の旧友

「じゃあ頼んだわよ美悪!冷ちゃんによろしくね!」


「はーい、お花はいつものお店?」


「そう!予約してあるから受け取ってから行ってね。それじゃ行ってきます!」


「行ってらっしゃーい。」


母を見送り、私も支度を進める。


冷さん、母さんの学生時代の友人。としか聞いてない。


母さんは雄英の出身で、冷さんはプロヒーローとかだった。とかは聞いてないから……中学時代の友人なのかな。と勝手に推測している。


冷さんについては母も多くは教えてくれない。ただ、大切な友人なのだと。


そして入院している理由についても。……ある時精神病棟という事には自分で気づいてしまって、とても気になってしまったが聞けなかった。教えて貰えないとわかっていたから。


それでも、何も知らなくても教えて貰えなくても、私が母さんの代わりとして冷さんの元へ行くのに抵抗が無いのは、彼女の人柄故だろうな。


優しく穏やかな冷さん。母さんとはとても仲が良くて、2人が話していると親友なのだなぁ。と感じさせられる。





お花屋さんで受け取ったお花を手にいつもの病院へ。


そういえば轟くんもお見舞いに行くから行けないって断ってたな。…………お見舞いって誰のだろう。


期末テスト前の勉強会の際もお見舞い終わったあとなら、と時間を調整して集まった。……その時も聞かなかったな。


そう考えると、勉強教えてもらったり職場体験へ一緒に行ったり。馴れ馴れしくしちゃっている割には彼のことを知らない。


今度聞いてみようかな、…………教えてくれるかな。いや、でも私の事友達って言ってたし。………………もうちょっと仲良くなってからにしようかな。


なんて思いながら冷さんの病室へ向かう。何度も来てるので覚えてしまった道。


えっと、この部屋でちゃんと名前を確認しなさいって言われてて……そうそう、轟って言うんだよな冷さん。


………………………………。


……………………え?


2度見。


……………………ん?



そして3度見。変わらない。脳内の記憶も変わらない。確かにずっと轟、と書かれた名前を確認して入ってた。…………えっ。


いや、待て。落ち着け。苗字が同じなだけかもしれないし。


今まで散々見てきたのに今更気づくなんて言う、救いようのない脳味噌を生まれ持った自分にパニックになりつつ、別のパターンを想像する。


そうだ、きっとそうだ。冷さんから子供がいるとかそんな話聞いたことないし。…………独り身だって話も聞いたことないけど。


兎にも角にも入らないことには始まらない。私は1つ深呼吸してノックした。


すると聞こえたいつもの声に安堵しつつ扉を開けると、


「………………は……?夜魔……?」


「…………………………。」

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