週末

「お、前……なんでここに、」


「あら?焦凍、美悪ちゃんの事知ってるの?」


「知ってるも何も……。」


「く、クラスメイトです……。」


「…………え!?じゃあ美悪ちゃん雄英通ってるの?」


「は、はい……。」


「そうだったの……いつ見ても可愛らしい子で、てっきりお母さんのように芸能界の方を志してるのかと……。」


「可愛らしい。……つってもお母さん、夜魔の個性は、」


「轟くん??」


何か口走ろうとした轟くんの肩を掴んでにっこり笑う。可愛らしいとは程遠い悪魔だ、なんて言わせないぞ??


「あ、これ母さんからです。」


「あら!今月も綺麗ね……ありがとう。看護師さんに生けてもらうわ。」


「今月も……って毎月来てんのかお前。……って言うかなんでここに?」


改めて現状を確認して混乱している様子の轟くん。だよね……私も扉の前でなってた……。


「えっと、うちの母さんと冷さんが学生時代の友達……でしたよね?」


「そうなの、……でもまさか子供たち同士もクラスメイトだったなんて。」


そう言うと楽しそうに笑った冷さん。


「それで母さんが毎月お見舞いに来てるんだけど、仕事上行けない時はこうやってお花だけ私が。」


「そういう事か……。」


「でも、美悪ちゃん気づかなかったの?轟なんて苗字珍しいし……。」


ヴッ。と痛いとこを突かれて笑顔のまま固まってしまう。


「…………気づかなかったんだな。…………ふふっ。」


そして笑顔も虚しく轟くんに察され挙句の果てに笑われた。酷い。


「だって、轟さんって言うより冷さんって覚えてたから……まさか轟くんのお母さんだなんて。」


「俺週末はお見舞い行くって言ってただろ。」


「誰のかなんて聞いてないよ!」


「……そうだったか?」


「聞いてない!」


「……ふふっ!仲良いのね2人とも。」


肩を揺らして笑った冷さん。仲良い…………?


きょとん。と轟くんと見つめあって暫し考える。でも、仲が悪いと言うよりはずっとずっと、


「はい!」


「あぁ。」





「轟くんは毎週来てるの?」


お見舞いを終えて、一緒に病院を出てから聞くと


「あぁ、毎週。」


「そっかぁ。」


「……今日クラスの奴らは買い物行ってんだったな。」


「あれ、今日だっけ?」


「あぁ、緑谷がそう言ってた。」


「そっかぁ……。」


週末、と言われて土日のどちらになるかわからなかったのでとりあえず断ってしまったが、今日だったのか。どちらにせよ行けなかったな。


「轟くん、林間合宿の準備した?」


「……いや、まだだ。買わねぇといけないもん沢山ある。」


「良かった、私も。水着とか着替えとかも準備しておかないとだ。」


「?……家にあるもんじゃ駄目なのか、着替えなんて。」


「いや、良いと思うよ!?ただ私の部屋着ってすっごい伸びた服か間違えて個性発現させちゃってお尻に穴空いてる奴とか……。」


「…………尻尾あるもんな。」


「ついでに言うと翼もね。背中も穴まみれ。って言うか破れてるやつもある。」


「それ着てんのか?」


「うん、いつ寝違えて個性出すかわかんないし。」


「危ねぇ奴だな。」


そう言うと吹き出すようにして笑った轟くん。


「い、いや、滅多に無いよ!?それこそおねしょ的な感じで、」


「お、……おねしょってお前……ふふふっ。」


「でもほんと!全然無いから!!林間合宿で寝ながら人を襲うなんて事は!」


「ふふ……んなの心配してねぇって……ふふっ。」


ついに耐えられなくなったのかお腹を抱えて笑い始めた轟くん。いや、あの、こちらとしては弁解をちゃんとしておきたい所なんだけどな。


「……じゃあ部屋着も含めて買いに行かねぇとだな。」


「そうなんだぁ、林間合宿まで時間無いし早めに行っとかないと。」


「………………今から行くか?」


「え?」


「買い物。」


「か、買い物…………轟くんと一緒に?」


「………………嫌か?」


こてん、と小首を傾げた轟くんは少しだけ悲しそうに聞いてくる。


轟くんと一緒に買い物。


…………凄く友達として進歩してる気がする!!轟くんから誘ってくれるなんて!!!


「そんな訳無いじゃん!!轟くんさえ良いなら行こ!」


あまりの嬉しさから彼の腕を取り、引っ張るようにしてバス停へ向かう。


「おい、んな急がなくても!」


「早くしないと日が暮れちゃうよ!」


なんて、夏の日の長さは毎日浴びていて知っているのに。


私も彼もそれは言わずに、ただただ一緒に駆けた。少しでも長く一緒にいる為に。

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