個性を使うと動けなくなる。なんて、どんな個性を持っているんだ緑谷くんは。
相澤先生がイレイザーヘッドと言う知る人ぞ知るプロヒーローである事がわかり、そして先生に個性を抹消された彼は布によってぐるぐる巻きだ。
そしてその後、彼は今までの体力テストの成績からはかけ離れた大記録を打ち出したが、
「…………指が…………。」
「……相当負担の大きい個性なのね…………。」
梅雨ちゃんに頷く。でろん、と動かなくなってしまっている指はなんとも痛々しい。
しかしそれを見ていた相澤先生は口角を上げて笑っていて。あれが彼の成長……?とても痛々しくて私には見ていられない。
◇
「次、夜魔。」
ボールを渡されて、深呼吸。
…………悪魔になるのは簡単だけど、あの姿は出来ることなら見せたくない。
尖った耳や大きな尻尾。怖いにもほどがある。
なので、先程から腕だけ悪魔化出来ないか試しているが中々上手くいかない。
こんな事したことないもんな……脳内のばあちゃんは、自らの姿を偽るなんて、そんな馬鹿らしいことしとんじゃないわ!!とキレ倒している。怖。
怖い姿を見せたくない。…………でも、負けたくもない。
同じクラスの推薦枠である轟くん。彼が入試の時に私の前を駆けていた彼だとつい先程気づいてしまった。
彼は着々と優秀な成績を修めていっている、それに対して私は。
負けたくない、負けたくない。
決めただろ、ここからまた。1から始めるって。
「ほら、始めろ。」
先程は上手く腕が個性発現出来ず、やむを得ず順番を最後にしてもらった。
…………中々上手くできない、けど…………ちょっとだけ掴めた。
集中して腕に力を込める。すると、
「っし!!」
禍々しく尖った鉤爪。鱗のような肌。見慣れた姿が宿ってくれて安堵する。
この姿であれば……!
ボールを片手に振りかぶって、
渾身のパワーを乗せて空へと投げた。
◇
「凄かったわ、美悪ちゃん。」
「いやいや、梅雨ちゃんも!お茶子ちゃんも!」
「いやぁ!でもパワー系は美悪ちゃんトップなんじゃない!?握力とかとんでもなかったよね!?」
握力とんでもない系女子。ちょっとだけ胸に突き刺さるが、良い成績を修められた事に変わりないのでにっこりだ。
「そう言えば、緑谷くん大丈夫かな?」
「手、痛そうだったわよね……。」
「あんな体の使い方してたら、持たんよなぁ……。」
確かにパワーは凄かった。でも、その度に負傷していては長期戦は見込めない。
…………まぁそれも、この学校で学んでいく課題の1つなのだろう。
「あんまり大きな怪我とか、しないと良いけどね。」
少しだけ願うようにして声に出した。
今日初めて会った人だけれど、縁があってクラスメイトになったんだ。クラスメイトがぼろぼろになって傷つく様なんて、あんまり見たくないものだから。