林間合宿

「林間合宿、厳しいって聞いてるけど……それでも楽しみだなぁ!」


「そうね、皆でお泊まりですものね。」


「ねー!学校行事っぽいし!」


わくわくするね!!なんて話したのは数十分前。そう、ほんの数十分前なのだ。


それが何がどうなって。


「施設までは自分たちの足でおいでませー?この、魔獣の森を抜けて!!」


突然崖から落とされたと思ったらこれだ。聞いてない、先生聞いてないですこんなの!!!


「魔獣って……まま、まさかね!!そんなの本当にいるわけないし。」


「そ、そうだよね美悪ちゃん、何かの比喩だよね?」


「そうだよ絶対!魔獣なんているわけ」


………………えっ?


「………………ま、」


「「「魔獣だあああああ!!!??」」」


ま、ままままマジ!?何あれ!?怖!!見た目怖!!!


ガクガクと震えながらお茶子ちゃんと抱きしめ合う。な、何あれええ!!?


咄嗟に襲われそうになっていた峰田くんを救出した緑谷くん。そこへ口田くんが呼びかけるが、反応しない魔獣。


口田くんに反応しないのなら、生き物じゃない……?


プッシーキャッツの個性は正直知らないが、先程の盛り上がった地面。…………土で出来た人形のようなもの?


すると間髪入れずに攻撃していく飯田くん、轟くん、爆豪くん。そして緑谷くん。


「すげぇな!魔獣あっさり倒しちまって!」


「流石だなぁ!爆豪!!」


んぐぐぐ…………出遅れた…………反応が遅い、即座に対応出来てない。……負けてられん!!


ぐぬぬ、と悔しさを噛み締めていると


「まだだ。」


「え?」


爆豪くんの視線の先を見ると、次々出てくる魔獣達。


……挽回のチャンス、あり!!


制服のシャツを脱いで、腰にまきつける。……インナー着てて良かった。制服のシャツは破きたくないし。


個性を発現。しかし尻尾は無しで。スカート捲りあがって見るに堪えない事になってしまうから。


「っ緑谷!!」


「緑谷くん!!後ろ!!」


飯田くん達の慌てたような声を聞き見ると緑谷くんの背後に迫る魔獣。


びり。とインナーを破きながら翼を出して、彼の後ろに手を伸ばす。


「ふんっ!!」


鉤爪でしっかりと掴んだ魔獣をそのまま後ろに叩きつけ、破壊。


「ありがとう、夜魔さん!!」


「いえいえ!……気張ってくよ!!」


照りつける太陽、日光。


正直体調はすこぶる悪いが、仕方がない。出来るだけ早く屋内を目指すしかない。


飯田くんの掛け声に合わせて、私たちは魔獣へと駆け出した。





一体、また一体と爆豪に邪魔すんなだとか言われながらも破壊していく。


……クラスの連中も疲れが出てきてる、そこを魔獣が狙ってくるから気が抜けねぇ。


なんて言ったそばから息を切らした飯田の元へ一体。


「飯田!!」


すかさず氷漬け、動きを止めたところを炎で壊す。


「すまん……!助かったよ轟くん!」


「あぁ、気をつけろよ。あいつら休む暇も与えちゃくれねぇ……!」


「あぁ!……って、轟くん!!」


飯田の焦った様子、まずい。振り返る前に氷漬けに。と思考する前に横切った黒翼。


「夜魔!」


夜魔は物凄い勢いで文字通り飛んできたかと思えば、柔軟な動きで魔獣の攻撃を避け、


「おらああ!!」


今日も今日とて男らしい掛け声と共に、鉤爪を切りつけるようにして魔獣を破壊した。


「悪ぃ、助かった!!」


「無事なら……良かったよ…………!!」


「……おい、お前。」


ふらふらと飛びながら笑った夜魔。そもそも個性を使うと青白くなる顔色が更に悪くなっている。


…………そうか、日光。


「ちょっと休め、倒れるぞ。」


「大丈夫。それにまだまだ魔獣来るし休んでられない。」


確かに夜魔は高い攻撃力を誇る、クラスの中でも攻撃力の一角を担っているだろう。


しかし、だからこそ。まだここからどれほど距離があるのか分からない状況で倒れられたら困る。


「いいから休め。まだまだ先が長いかもしれねぇんだぞ。」


「こ、怖いこと言わないでよ轟くん……!!」


「怖いことじゃなくて事実に近い推測だ。」


「マジレスぅ…………。」


「後方下がって障子達の元に行け。」


「で、でも……。」


「良いから行け。早く!!」


「ひぃ!!わ、わかったよ……。」


睨みつけるようにして言うと漸く動き出した夜魔。


「と、轟くん……段々と夜魔くんへの当たりが強くなってきてないか……?」


「…………最近やっとわかってきたんだ、あいつはとんでもなく負けず嫌いでとんでもなく強気で好戦的だと。」


「…………割とそれは、入学当初からそうじゃないか?」


「言うだけなら自由だし、正直攻撃に特化している個性だ。放っておいても大抵の事は乗り切れる。だが、」


体育祭で俺がどれだけ嫌悪感を持って言葉を放っても怯まなかった。


ヒーロー殺しと対峙した際は俺と緑谷がギリギリの状況で戦っている中、初めて実戦で使う技を形態を出してきた。


勝つか負けるかギリギリで、多くの傷を負い血も流したあの状況で、だ。そこで勝負に出るなんて正直どうかしているし、異常な気の強さだ。


それ故に、どこか危ういんだあいつは。


自分の力を過信している。というより、その先のことを考えずにその時出来る精一杯へ挑戦してしまう。


自分のことなんか二の次で、その場を切り開くことに全てをかけてしまう。


「あいつは自分じゃ止まれねぇ。……誰かが止めてやんねぇと駄目なんだ。」


「轟くん……。」


「それに、生温い言い方してもろくに話聞かねぇからな。……本当に伝えたいことは、怖がらせてでも聞かせねぇと。」


お前が道を見誤って戻れなくなる前に。


俺がお前を止めるから。



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