お願い

「そろそろ行けるか?夜魔。」


「……うん、日陰にしてくれてありがとう障子くん!」


大きな影を作ってくれた障子くんの後ろから這い出る。


「いや。お前が休めたのなら良い。それより前線へ行ってやってくれ、緑谷達が苦戦してる。」


「了解!」


「気をつけなよ夜魔?またあんなふらふらになるまで動き回っちゃ駄目だからね?」


「りょっ……了解!!」


響香ちゃんに言われてたじろぎながらも返事をする。なんでだろう、轟くんも響香ちゃんも本当の母さんよりお母さんみたいだな。


再び個性を発現させ、空へと舞い上がる。


前線前線…………緑谷くんは…………。


いた!!


確かに体力が底をついたのだろうか、明らかにボロボロのフラフラである。


よっしゃ、助けるぞー!!と意気込み急いで向かうが変わらぬ日光。夏は嫌いだ、日が長いから……!!


またもどんどん体調が悪くなるが、休ませてもらった分ぐらいは仕事しないと。


瞳にて照準を合わせて周囲の魔獣全てを攻撃。


怯んだところを鉤爪でトドメを刺した。


「夜魔さん!!」


「ごめん、後方下がってた!」


「お前、体調は。」


「全回復!!」


とは言っても現在進行形でまた気分悪くなってきてるけどね!!なんて言えば、轟母ちゃんにまた後方へ戻されてしまう。私はにこー!!と笑ってマッスルポーズを繰り返した。


「……無理はすんなよ?」


「了解!!」


やっぱりお母さんだなぁ、と内心苦笑いを浮かべながら私は魔獣を爆ぜさせた。





体調は万全の状態で戻った。暫く休んだし結構距離も進んだと思ったんだけどな。


「…………おい、しっかりしろ。」


「ごめん…………轟くん…………。」


まさかこんなに遠いなんて。結局施設に辿り着いたのは夕方。


勿論日中ずっと外へ出ているなんて悪魔の私が耐えられるはずも無く、既に体力も無いし体調最悪な状態で轟くんに肩を貸してもらっている。


「無理すんなって言っただろ……お前夜型なんだから。」


「そうだけど……だからって見てるだけなんて……。」


「…………少しは自分のことも大事にしろよ。」


呆れたように言われてしまって何も言えない。でも、今回の状況だと、


「自分のことを大事にすると、他のものが大事に出来ないから…………体力尽きても前線にいたかった。」


戦闘が不得手な個性の子だっている。そんな中で私は戦闘に向いた個性だ、活躍しなければいけない理由があった。


だから自分のことより戦闘力として自分を数えるのは当たり前の事だと思った訳だが、


「………………おっ?」


今現在。私に肩を貸してくれているこの美形は酷く怒っているように見える。…………おっ?


「と、轟くん……?どうしたの……?あ、お、重い?重いかな!?ありがとうここまでで平気だ」


よ。と言おうとするが、彼の肩から腕を外され彼の手が離れる。


あ、重かったんか……と思ったのも束の間。すぐにその腕はまた私に伸びてきて、背中と膝裏に手を差し込み持ち上げた。


「…………………………ん?」


「おい…………この状況下でイチャついてるやつらいるんですけど…………!?」


「お前らどう言う心情なわけ……!?今の状況わかってる……!!?」


振り返ると血涙を流しながら私たちを見ている峰田くんと上鳴くん。


え、やっぱりこれって、


「と、ととと轟くん!!?降ろしてもらっても良いかな!!?」


お姫様抱っこだよね!!?し、しぬ!!恥ずかしい!!しぬ!!!


「嫌だ。」


「嫌だぁ!!?」


む。とまるで聞く耳を持たない轟くん。なんで!?何がどうして!!?


「やぁっと来たねぇ!!……っと、おふたりさんは仲が良いのね?……青春かしら?」


そして暴れる私もそのままに歩みを進め、ピクシーボムにそんな言葉をかけられてもはやトドメだ。もう殺してくれ。


「も、もう許してよ轟くん……!!降ろしてよ!!」


「嫌だ。」


「なんでぇ!?」


「お前も俺の頼みを聞いてくれねぇから。」


「…………え!?」


そんなことしたっけ。何を?って言うか何か頼まれたか?


「……無理するなって言った。自分を大事にしろとも言った。…………でも結局お前はなんの考え方も変わってねぇ。」


「…………え?」


「他人を大事にしたいから、自分のことは二の次。その考え方を辞めて欲しいのに、……俺の言葉全然聞いてねぇから。」


「そ、それは……。」


…………確かに、そうだ。


彼に言われた記憶はあるけど、自分の中ではその考え方が当たり前だと思ってしまっていた。


それを、……怒っているのか。


本当に優しい人だな、轟くん。お母さんってより、本当にただただ無条件に優しいだけなんだこの人は。


「だから、俺もお前の頼みは聞かねぇ。」


「いや!!ごめん!!それは謝るから!!!」


「謝って欲しい訳じゃねぇ。」


「か、考えを改めるから!!」


「信用出来ねぇ。」


じゃあどうしろと!!?


困惑する私もクラスメイト達もそのままに、轟くんは2人分の荷物まで抱えて施設へと入った。

top