個性伸ばし

精々死なないように。なんて大袈裟な、と思ったのだが全然大袈裟ではない。


カッ!!ともはや強すぎる日差しの中悪魔の姿で空をかける。


し、しぬ………暑すぎて、眩しすぎてしぬ……。


個性伸ばし、と称されて始まった訓練。


それぞれの個性を伸ばすべく先生が考えたメニューをこなすが、どれもこれもしんど過ぎる。


そんな中私に与えられたのは、日光下でもパフォーマンスを落とさないこと。そう言う種族なので……ととりあえず言ってみたが先生の目を見たら何も言えなくなってしまった。


半日、特に昼からの時間はこのように日光下でも体を動かす訓練で空を飛び回っているが、午前中は切島くんと尾白くんと殴り合いをしていた。


尻尾の使い方を学んだり、パワー任せではない接近戦の立ち回りを学ぶためだ。これを半日、日光浴を半日。死にそう。


既に吐きそうになるくらい気分が悪い。あ、お茶子ちゃんも同じ顔してる。


空をかけながら見ていると、轟くんは氷結と炎熱を繰り返し放出していて、本人もしんどそうな顔をしていた。


あれは暑いのかな……暑いんだろうなぁ。


圧倒的に炎熱のコントロールが上手くいっていない、お陰で上空のこちらにまで熱気が伝わっている。


……少しでも涼しくなると良いな。


そう思い、私の身を案じてくれた優しい彼へ翼を使い風を送る。


すると気づいたようにこちらを振り返った轟くん。


「あっ……えっと、だ、大丈夫ー??」


そんなガッツリ見てくると思わなくて少したじろいでしまった、ほんのり赤くなっている頬を見ながら聞くと、少しだけ黙り込んで


「あんまり大丈夫じゃねぇ。」


なんて、真顔でこちらに言い放った。


それがなんともシュールで、堪えきれずに笑ってしまう。


「ふふっ……大丈夫じゃないかぁ……ふふふっ。」


「あぁ、お前は大丈夫か? 」


「私?……あんまり大丈夫じゃないや。」


「……そうか、一緒だな。」


「ふふ、一緒だね!」


なんとも頭の悪そうな会話。それもまたおかしくて笑ってしまう。


しかしながらあんまり無駄口叩いていると相澤先生の目が光るので、それじゃ。と私はその場を後にする。


うん、今のは仲良しな会話だなぁ。遠くて怖くて強過ぎた、そして今では優しく穏やかで少し頑固な轟くん。


そんな彼とのなんてことないやり取りに、私の胸は軽やかに踊った。





「こういう時轟くんの個性って便利だよね。」


「まぁ、そうだな。」


なんて言いつつ火を点していく轟くん。


疲れた体もそのままに皆でカレー作り。轟くんいれば火も水も氷も手に入ってしまうのだから凄い。無人島に是非とも連れていきたくなるような人材だ。


「いや、凄いよ爆豪くん!!?ねぇ、美悪ちゃん見てよ!!」


「うん?何が?」


「爆豪くんの手さばきやばい!!」


「やばいって何だ丸顔ぉ!!」


と怒りつつも寸分狂わぬ手さばき。現にまな板の上に乗っていた野菜たちは綺麗に1口大に切りそろえられている。


「す、凄!!?え!?いつ使うのその特技!?」


「…………今だろうがぁ!!!消すぞテメェ!!」


「いやいや!!爆豪くんなんて将来結婚しても家事は嫁の仕事だろ、って言って全くやらない系の旦那になりそうなのに!!」


「あ、それはわかる!!」


「……ん だ と てめぇらぁああ!!?」


「家事とか全く出来なさそうなのに……意外だなぁ。」


「呑気に駄弁ってんじゃねぇぞ!!手動かせや夜魔!!」


「す、すいません……。」


「……そう言えば爆豪くんって美悪ちゃんの事だけはちゃんと苗字呼ぶよね?なんで?」


「……別にあいつだけじゃねぇわ。」


「え?……あぁ!切島くんとか?でも2人だけだよね?」


「…………夜魔は呼ばねぇと腹立つ呼び方してくるから、仕方なくだ!!」


「え?なんて呼んでくるの?」


「………………言うわけねぇだろ!!」


「えぇ!?」





「なんてことがあったんだけど、爆豪くんの事なんて呼んだの?」


「うーん?……あれの時かな。皆聞いてたと思うけど、異常者って呼んでた。」


「…………あれか。」


「今思い出しても肝が冷えるよ夜魔さん……よくかっちゃんのこと異常者だなんて呼べるね……?」


「どこからどう見ても異常者じゃん。」


「はい出た強気。」


「安定の強気ね。」


強気と言うか事実だろう。すぐに人のこと殺すとか死ねとか言っちゃうまさかのヒーロー志望。人を救ける気があるのだろうか。


それなりに美味しく出来たカレーを口に運びながらむむ、と考える。


「でもまさか異常者って呼ぶからって私の事苗字で呼んでくれるようになるとは思わなかったな。」


「案外美悪ちゃんって爆豪くんとも仲良し?」


「さっきまでの会話見ててそう思えるなら、病院行った方がいいかもしれないよお茶子ちゃん。」


「でも案外懐いてるんじゃねぇか?」


「懐いてるって……。」


「確かに、かっちゃんはある程度心開いてないと言う事なんて聞いてくれないと思うけど…………。」


「言う事なんて全然聞いてないよ。なんなら今度やって見る?フリスビーでも投げて取ってこい!って。」


きっと見れるのは汚ぇ花火だけだと思うけど。

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