肝試し

「じゃあくじ引きでペアを決めるよー!」


森の中での澄んだ空気。日の沈んだ空。なんて心地良いのだろうか。


先程補習組が相澤先生に引きずられていくと言う凄惨な出来事を見てしまったが、忘れよう。……鬼気迫る三奈ちゃんの顔が頭にこびりついて離れそうもないけども。


早く脅かす方がやりたいのになぁ。と思いながらピクシーボムの持つくじを引く。


同じ組の人はいじょ……爆豪くんじゃなければ誰でも良いんだけどなぁ、と探すと


「…………あれ?轟くん私と一緒じゃない?」


「……本当だ。」


同じ番号を見かけたと思ったら轟くん。


「やった!爆豪くん回避!!」


「あぁああ!!?今なんか言ったかお前ええ!!?」


「すご……地獄耳じゃん……。」


「気をつけろ夜魔。あいつどっからでもキレてくるぞ。」


「んだとこの舐めプどもぉおおお!!!」


と言って暴れている爆豪くんは緑谷くんと同じペアだったようで、物凄く可哀想だ。勿論緑谷くんが。





「じゃあ次の組!いってらっしゃーい!」


イヤァアアアア!!!ぎゃぁああああ!!!と言う声が聞こえる夜の森。中々仰々しいな。


「……お前、こういうの平気なのか?」


隣を歩くイケメンこと、轟くんに首を傾げながら聞かれるが


「うん、平気。可愛げの無い女でごめんね!!」


ゲラゲラ笑いながらそう言えば、別にんなの気にしてねぇ。と言われる。


「本当?やっぱりこういうの怖がる女子の方が可愛く思えない?」


「どうだろうな、人それぞれだろ。」


「そっかぁ……響香ちゃんと透ちゃんは駄目みたいだね、悲鳴がここまで届くぐらいだし。」


「せめて男子とのペアだったら良かったのにな。」


「ね、救済措置。」


女子2人っきりでこの森は中々無理な人は無理だろう。お茶子ちゃんも心配だなぁ……梅雨ちゃんがペアだから大丈夫か。


「お前は霊とか信じてねぇのか?」


「霊?」


「こういうの怖がるのは、出そう。って思うからなんだろ。」


その言い方的に誰かから聞いたのだろうか。緑谷くん辺りかな?


「そうだね、なんか出そうだもんねこの森。……でも私は霊とかお化けとか信じてないからなぁ。」


「…………お前悪魔なのにか。」


「確かに!!」


私自身あやふやな存在の個性を使っているというのに、笑ってしまう。


「逆に轟くんは」


信じてるの?と聞こうとしながら前を向くと現れた生首。


「おっ。」


「………………ヒュッ。」


「夜魔夜魔、いてぇ。力強ぇ、おい、いてぇって。」


ギリギリといつの間にか腕だけ悪魔になっており、その腕で轟くんの片腕を掴んでしまう。


「ごごご、ごめんね!?すぐ離すね!?」


「………………おい、離せてねぇぞ。こういうの平気なんじゃ無かったのか。」


「お、お化けじゃないじゃん今のは!?小大さんの首じゃん!?頭じゃん!!?」


信じるも信じないも、目の前に現れたじゃん!!割と知ってる人の頭がァ!!!


ずんずんと轟くんの手を引いて笑い声の聞こえるB組連中から離れる。


「……ふふ、おい。もう離れただろ。」


「……ごめんなさいでした。」


そっと腕を離して個性も解く。咄嗟に腕を掴んだのはなんでだったのか。


私にもつい男の子を頼ってしまうか弱い女の子の心があったのか、それとも1人で逃げるなんて許さんぞ。と言う執念か。恐らく後者だな。


「でも今のは流石に驚いたな。」


「え!?全然びっくりしてなかったじゃん。」


「いや、びっくりした。」


「嘘だ!?」


平然としてた癖に!?轟くんはあれかな、表情筋死んじゃってるのかな。


「……ふふっ、でもお前があんなに怯えるとは思わなかったな…。」


「流石に実体あるものは駄目でしょ……B組め……。」


恨めしそうに後方を見つめていると刺さる視線。


「え、何?」


「……確かに、強気に挑戦していくやつも良いと思うけど、怖がるやつもなんか良いな。」


「え、何の話?」


「ほら、可愛げのある女子どーのこーの。」


「……あぁ!!いや、あれよ。私みたいに男の子から痛いと言われるほどの腕力で掴みあげる女子。じゃなくて、きゃああ!怖い!ってする女子の事ね?」


「似たようなもんだろ。」


「人種的に違うよ!?」


ふむ。と勝手に納得している轟くん。やばい、轟くんの可愛いと言う概念が私のせいでねじ曲がって……って。


怖がるやつもなんか良いなって……。


「……ん?なんだ?」


平然と歩みを進める轟くんを見上げる。


……ビビった私のことが、可愛いと少しでも思ったって事?


………………。



「うぉ、ど、どうした?」


「なんでもない!!早く行こ!!」


そんな訳あるか、ビビった直後にとった行動を思い出せ。轟くんの腕を折れんばかりに掴んだんだぞ。どこが可愛いんだ。


ありえない、そんなのは。そう全否定してみせるが、不思議そうな顔して隣に並んだ轟くんを見ると、顔に熱が集まって仕方がない。

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