『A組、B組総員!!プロヒーローイレイザーヘッドの名において戦闘を許可する!!』
『ヴィラン側の標的はかっちゃん!!かっちゃんは戦闘を避けて逃げて!!』
テレパス越しに聞こえた情報に混乱する、爆豪くんが標的……!?何したの爆豪くん……?
彼が今無事なのか非常に気になる、気になるが、今はそれどころじゃない。
「…………んんんん!!!」
両腕に響香ちゃんや透ちゃん、B組の人達など4人を乗せて霧の晴れた場所へ運ぶ。
やはり想像通りだった、既に皆はこの霧に襲われて意識を奪われている。
……まだ気づいてそんなに経っていないのに、意識を飛ばすほどの毒。
…………早く元凶を叩かないと。
翼を広げ、霧の濃い方へ濃い方へ潜り込んだ。
◇
「雄英って名門だろぉ!?幻滅させんなよ!!」
聞こえた声、見えた拳銃。
その引き金が引かれる前に、拳銃を持った腕を蹴り飛ばす。
「っ夜魔!?」
「息止めて、吸っちゃ駄目。」
彼の口元を手で覆って霧を防ぐ。しかし、守りながら戦えるほど相手は優しく無いだろう。
…………人を殺すことも厭わない、そんな輩だろうから。
「お前吸ってて大丈夫なのかよ!?」
「私は悪魔。人間とは器官のつくりも違うんだよ。……でもあなたは駄目だ、早くここからにげ」
「…………逃げるわけねぇだろ!!俺はこいつを殴らなきゃなんねぇ!!」
強い意志。…………わかるよ鉄哲くん。救けたい、皆を救けたい。その気持ちで私も心配してくれる轟くんに背を向けた。
でも、
「……お願い、鉄哲くん。ここは任せて欲しい。」
「っけどよぉ!!」
「鉄哲くんは充分やってくれたよ、君じゃなかったらあの銃弾が誰か他の人に撃ち込まれていた。」
それを、鉄哲くんが弾いてくれたから。今も目の前で蹴られた腕を押さえてもがいているヴィランは、ここに留まっている。他の誰かに手をかけずに。
「充分だ、だからあとは毒って言うハンデの無い私に任せて欲しい。」
「……夜魔…………。」
「お願い。」
あいつが攻撃を再開する前に、早く。
「………………拳動!!!」
鉄哲くんがそう叫ぶと、現れた大きな手。
それが鉄哲くんを掴み上げる。
「ごめん、頼んだよ夜魔!!」
すると霧の中から現れた拳動さん。彼女はガスマスクをしており、鉄哲くんをその大きな手で囲んでいる。
「うん、……任せて。」
頷くと、彼女も凛々しく頷きこの場を去った。
「……へぇ…………仲間を逃がすなんて優しいじゃないか。悪魔のくせに。」
ガスマスクの奥から小馬鹿にしたような声が聞こえる。
するとその姿は霧の中に消え
「っ!?」
銃弾が腕をかすり、鮮血が溢れる。
「誰が相手だろうと、姿が見えなきゃ意味が無いだろ?お前も同じだ、お前の動きは僕にわかる。でも僕の動きは、」
動き出そうとした足に銃弾が撃ち込まれる。
「っぐゔ!!」
あまりの激痛に膝をついてしまう。見えない、なんで、どこから。
避けようにも弾道が見えないと避けられない、思えば拳銃相手なんて初めてだ。いつだって相手は個性を使ってきたから。
初めての状況、悪い視界。毒故に助けも呼べない。
どれか1つでも打破しないと……そう痛みに耐えながら思考するが、
「ねぇ、対策考えてみなよ?名門校だろ!?」
再び聞こえた銃声、そして
「ひっ!!」
今度は肩を撃ち抜かれて、痛みから震えて地面に倒れる。
どくどくと自分の血液が排出されているのを感じる、呼吸もどんどん荒くなり、手も足も出ていない敵に死を感じる。
「ねぇ、恥ずかしくないの?かっこつけて仲間送り出してさ、自分はこんなボロボロになって。恥ずかしくないの!?」
死ぬ、殺される。
カチャ、と銃を構える音が聞こえた。
声にもならない恐怖で体が動かない、どうしようどうしたら。動かなきゃ、ころされちゃう。
むりだよ、逃げられない。どこにいるかもわからないのに、どうしたら。
…………おわり、だ。
ギュッと目を瞑ったその時、思い出したのは轟くんへの誓い。
信じて欲しい。必ず、帰ってくるって。
…………自分で、言ったじゃないか。
じゃり、と砂を全身につけながら、震える手足に無理やり力を込めて立ち上がる。
自分で、言った。
心配そうに見つめる轟くんに、誓った。
………………帰らないと。
轟くんの元へ、生きて帰らないと。
広げた翼で上空に。
銃弾が向けられているだろうが関係ない。
なんで気づかなかったのだろう、霧なんて
強風の前では漂っていられないのに。
翼に空気を纏って、強風を送る。
霧は、風に攫われ
少年を浮き彫りに。
慌てて銃を構え直す暇さえ与えず目の前に。
「お前、そんな撃ったのに、当てたのに……っ!?」
「悪いね。」
鉤爪でその顔面を掴み、ガスマスクを粉砕する。
そしてそのまま、頭を掴んで地面に叩きつけた。
淡く輝く月光の下、私は血を流したまま気絶した少年を見下ろす。
「夜は、調子が良いんでね。」
だからと言って、出血しても平気だなんてことは無く。
ふらり、地面に倒れ込んだ。