「おい!こっちにもいるぞ!?」
「あれは…………夜魔!!おい、しっかりしろ!」
微かに聞こえた耳馴染みのある声に、瞼を開く。
「せ…………んせ…………?」
「あぁ、そうだ。よく頑張ったな。…………こいつはヴィランか?」
ぼたぼた、と血を垂れ流しながら先生に抱き上げられる。
先生がちらりと横目に見たのは私が倒したヴィラン。
「そう……です…………、毒の……。」
「毒…………そうか、それでお前が…………すぐ病院に連れていく、もう少しの辛抱だからな。」
先生は少しばかり焦っているような声色をしている、恐らく自分でも感じているが、私の出血量がとんでもないのだろう。
あれからどれくらいの時間が経ったのかもわからないが、止血することも無く気絶してしまったから……。
「…………と……とどろき……くん……。」
「……轟?」
「とどろき……くん……に……ごめ……って……。」
謝らないと。必ず帰るって言ったのに、自分の足で戻れなかった。
きっと怒ってる、……それにまた心配をかけてしまう。
こんな血に塗れた姿見たら、あの綺麗なお顔が歪んでしまう。
…………ごめん、轟くん。
「……言いたいことがあるなら、元気になってから言え。今は死なないことがお前の目標だ。」
そう言って先生は私を抱えて走る。
…………彼に謝るためにも、今死ねない。
死ねない、けど、いしき……が…………
「夜魔?…………おい、夜魔!?」
ぶつり。意識が遠のいた。
◇
救急隊員や警察が大勢やって来て、事態は収拾していった。
緑谷や意識の戻っていない葉隠、耳郎などが救急搬送され、軽傷を負った奴らも救急隊員に診てもらっている。
…………夜魔、いねぇな。
既に救急搬送されたのか、それほどに大怪我をしたのか。それともまだ森の中から出てきていないのか。
様々なシチュエーションを想像しては、やはり止めておけば良かったかもしれねぇ。と少し後悔する。
しかしその後悔は、すぐに肥大化した。
「……夜魔…………?」
「出血量が多すぎる、布で患部は圧迫してあるが止まっていない。すぐに搬送お願いします。」
「美悪ちゃん……?……え……?」
「……嘘でしょ…………?」
ぐったりと先生に身を預けた夜魔。
着ている服は血に染まり、吸いきれない血が抱えて来たであろう相澤先生の服をも伝って、地に落ちている。
「先生……っ!!夜魔は、」
救急車に夜魔を乗せ終わった先生に駆け寄る。
「……ヴィランにやられたみたいだ。毒、と言っていたから恐らく1人で。…………轟、お前に何か言いたがっていた。」
「……え?」
「……目が覚めたら、聞いてやれ。」
そう言った先生の顔は、緊張感を帯びていて。つまりそういう事で。
「…………はい。」
必ず帰るって言っただろ、なぁ。
守れないなら約束するなよ…………!!
握った拳はただただ強く握りしめ、そして、行く宛ても無く届ける宛てもなく静かに解いた。