目が覚めてから、現状をお見舞いにきてくれた皆から聞いた。
毒の影響で未だに目が覚めていない葉隠さんと耳郎さん。
頭へ怪我を負った八百万さんは意識が戻ったものの、入院中。
「……あれ?夜魔さんは?」
「……夜魔も、まだ意識が戻ってねぇ。」
静かに、とても静かに轟くんは言った。
「美悪ちゃん、1人で毒ガス使うヴィランと戦ったみたいで……色んなとこ銃で撃たれて出血多量、だったんだって……。」
「1人で……?」
「えぇ。悪魔だから毒は受けない、そう言って自分達を逃がしてくれたってB組の子達が言ってたわ。」
「……それ、なんだけどよ。」
眉間に皺を寄せたままの切島くんが口を開く。
「俺と轟、昨日もここに来ててさ。その時夜魔の病室にいたルシファーとアスモデウスに会ったんだ。」
「その2人ってことは……夜魔さんのお母さんとお祖母さん?」
「あぁ。…………聞いたら、悪魔だからと言って全ての毒を無効化出来るわけじゃない。……そう言ってた。」
「え……。」
苦しそうに苦しそうに轟くんは続ける。
「人間が少し吸うだけで意識を持っていかれるような毒。それに対して多少の無理は出来るけど、それを放出しているヴィランとの戦闘。そこまで耐えられるほど悪魔の体は強くない、って……。」
「……ルシファーはヴィランを仕留めるのに時間をかけ過ぎた夜魔が悪いって言ってたけど…………俺は、俺はそれをわかっていても、周りより自分が耐えられるからってヴィランに立ち向かったあいつを褒めてやりてぇよ……。」
「切島くん……。」
「…………だとしても、褒められる行動だとしても。俺は止めるべきだった。」
「……美悪ちゃんと一緒にいたの、轟くんだったもんね…………。」
「…………あいつの意志に気圧された。……でも、止めるべきだった。こんな事になるなら、一緒にプロヒーローを呼びに行くべきだった。……後悔しかねぇよ。」
震えるほどに拳を握った轟くんは、どこにも向けられない怒りをただひたすらに自分へ向けていた。
◇
……今日も変わらない表情。
苦しむことも、安らぐことも無く夜魔は横たわったままだ。
2日経って、あれだけ外傷の酷かった緑谷が起きた。
葉隠と耳郎はまだ起きていない事を考えると、やはりあの毒はとても危険なものだったのだと思う。
……その元凶と戦うことを止められなかった不甲斐なさ。
「……ごめん、夜魔。」
俺が止めるべきだった。感情的になって、体がすぐに動くお前を、戦えるのだから戦わないとという義務感を持つお前を俺が、守らないといけなかった。
二度と間違えない。もう二度と、お前に背を向けない。
だから、
「……起きてくれよ、夜魔。」
握った手は、いつも勇猛に奮う大きく鋭い鉤爪ではなく
俺の手にすっぽりと入ってしまうほどに小さくか弱い手。
この手に、守られた。1人ヴィランに立ち向かうお前を残して。
…………ごめん、ごめん。
どれだけ謝っても届かない。固く閉ざされた瞼は開かない。
「……夜魔、俺はもう間違えたくねぇ。」
手に届くものを、守りたい。
「……爆豪を救けに行ってくる。……次ここに来た時は目覚ましてくれよ。」
自分も無事ではいられないかもしれねぇ、それでも行かないと、そう思った。
「戦闘は避けて、必ず生きて戻るから。……待っててくれ。」
祈るように小さな手を握る。
表情一つ変わらない夜魔に背を向け、夜が来た。