心配

よくよく考えれば、なんで轟くんはあそこまで私を心配するんだ?なんて疑問が沸き上がり、


私が弱いくせに突っ走るからだ。というアンサーが導き出され、ぷ、プルスウルトラああああ!!!と鍛錬しに走り出したい衝動に駆られていると現れた相澤先生。


私の叫び声に慌てて来たらしく、入ってきた瞬間は焦りの色を滲ませていたが、なんだ元気じゃねぇか。と言わんばかりにすぐ無気力そうな顔に戻ってしまった。


それから私はニュースで見た内容と、相澤先生達から聞いた内容。特に知らされていなかったオールマイトの引退について知り、驚いた。


そしてそれらを踏まえて、生徒の安全を守るためにも全寮制へと変わるのだ。と知らされる。


「だから、お前が退院したら家庭訪問して寮入りの承諾を貰いに行くよ。」


「りょ、了解です…………相澤先生だけですよね?」


「……いや、一応オールマイトさんも。」


「……………………アイマスクとか、持ってきてください。」


「……わかった。」


家に先生方が来る。=ヤバい母親の餌食になる。


想像に容易過ぎて悲しい、なんであの人あんなんなんだろう。


こうして意識の戻った私は翌日には退院し、


「いらっしゃいませー!先生方今日はわざわざありがとうございます♡」


「ど、どうも……。」


「お、お邪魔します……。」


「あらやだ、オールマイトったらその姿でも凛々しい顔つきは同じなのね?」


「えっ?あ、そ、そうですか……?」


「えぇ……本当に。素敵な殿方です、」


「ぎゃああああ!!!オールマイト!!逃げて!!!」


ゆらり、怪しく光った母さんの目。はっっや!!!早いよ!!まだ玄関だよ!!!


すぐさま母さんの顔面を殴り飛ばしてオールマイトに呼びかける。


「えっ!?ちょ、今殴って!?」


「気にしたら負けです、夜魔どっちに行けば」


「こっちです!!ばあちゃんはこっち!!」


ぴくぴくと足元でのびてる母さんを押さえつけたまま、ばあちゃんのいるリビングへと誘導する。


そして用意していたロープを母さんに巻き付けて、完成だ。


「ひどい…………ばあちゃん……には死ぬほど殴られたことあるけど……お父さんには殴られたこと無いのに……。」


「更に言うと私にも兄ちゃんにも殴られまくってるよね。」


「どうして殴るの……?私、綺麗な顔してるじゃない……。」


「自分の胸に手を当ててよぉぉぉぉく考えてみな???」





「おや、懐かしい顔が2つも。」


「……お久しぶりです、ルシファー。」


「お久しぶりです。」


お久しぶりです……って、もしかしてオールマイトも相澤先生もばあちゃんの教え子?すげぇ……。


2人の前にお茶を出しながら、明らかに初めましてではない空気に驚く。


「全寮制だってね。」


「はい。」


「生徒を守るために。……承諾を頂けませんか。」


「私は最初から許してるさ。ただ、美悪の親はさっきの痴女と……この人だ。」


そう言ってばあちゃんは隣に座った父さんを見る。


「は、初めまして。美悪の父です。」


にっこり、相変わらず人あたりの良さそうな顔をして父さんは笑った。


「僕も寮入りについては特に問題ないと思っています。……うちの子は非常にお転婆でご迷惑をおかけしていると思いますが……。」


「………………。」


「あ、やっぱりかけてるんですね。」


「相澤先生!?!?」


何故否定してくれない!?そんな悪いことしたっけ私!?


「お転婆ぐらいで丁度良いのよ、女の子は!」


するとあっさりロープを抜け出してきたのか、母さんがリビングへとやって来てしまった。


「…………でも、そんなお転婆娘であるうちの子。ちゃんと見張ってちゃんと守りきれますか?」


すっ、と目元を細めた母さん。ふざけている訳でもからかっている訳でもない。


…………心配、してるんだ。


「勿論。守りきってみせます。……教師陣は勿論の事ですが、美悪さんに関しては既にこれ以上突っ走らないよう止めてくれるストッパーが生徒にいます。」


ぎくっ。


「…………え!?そうなの?お友達??」


「う、うん……友達。凄く心配してくれる友達。」


「女の子?……それとも男の子???」


うわぁ…………言いたくない…………でも後から嘘だとバレた時がめんどくさい……。


「……男の子。」


「きゃあああ!!本当に!?えー!もう付き合っちゃいなよ!!」


「何言ってんの!?」


「この歳で既に男を捕まえてるとは……流石私の孫だね。」


「どこに誇らしさ感じてんのさ!?違うって、そういうのじゃないの!!轟くんは!!!」


「轟くんって言うのね!?」


「あぁああああ!!!!」


やらかしたああああ!!!!


「……轟って言ったらエンデヴァーの…………。」


そして嫌なとこに勘づくばあちゃん。


「………………え!?もしかしてこの間言ってた冷ちゃんの息子さん!?」


「……………………。」


「あらま!!!本当に!?やだもう、私と冷ちゃん仲良すぎて家族にまでなっちゃうのね……。」


「やめて!!!違うって!!!ほんと!!怒るよ!!」


「…………に、賑やかな家族ですね。」


「えぇ、本当に…………でも喧嘩も多くて大変ですよ。」


「……大変そうです。」


「あはは……どうしても悪魔の個性を持つ人達は強気な人ばかりでしてね……その分弱きを救けるのも義務感として持ってるので、優しい面もたくさんあるんですけどね……。」


「……ところで、お父様はなんの個性を?」


「僕は、無個性なんです。……無個性だけど、こんなにも強く優しい個性を持った彼女に見つけ出して貰えて。」


「そうだったんですか……無個性……。」


「そうよ!!」


突如として先生と父さんの間に割り込んだ母さん。


「お父さんは、私が捕まえたの。良い男でしょ?最初は全然相手にしてくれなくって大変だったわ。」


「ち、違うよ。君みたいな魅力に溢れた人が僕なんかをって……。」


「何度も求愛したじゃない!!なのに全然靡いてくれなくてね……それで聞いてくださいよ先生。最終的に彼にやっっと想いが伝わった言葉。なんだと思います?」


「………………なんだったんですか?」


何度か聞いたことのある話。その最後に聞くいつもの言葉。


「……あなたの魂、私に頂戴。」


「そう!!信じられます!?こんな悪魔みたいな、酷い言い方でやっっと伝わったの!!」


「だ、だって……!!あの時の君があまりに必死で、その……本当に好きじゃないとそんな言葉、言えないと思って……。」


「って言うかさっきから先生たちに何聞かせてんの!?!?寮入りさっさと了承しなさいよ!!!」


げし、と母さんを蹴り倒す。


なんと恥ずかしい話を……と先生達を見ると、案外緩んだ表情をしていて驚いた。





「すいません、恥ずかしい家族で……。」


「いや……楽しい御家族だね、夜魔少女が育った家庭だと感じたよ。」


「え、そ、そうなんですか?」


なんか嫌だな……あの家庭っぽい人間って言われても嬉しくない……。


「無事承諾は得れた。渡したプリントの通り荷物を送っといてくれ。」


「わかりました!」


「…………あと、御家族に言われた通り俺はお前を守らないといけない。」


少しだけ屈んだ相澤先生は私ときっちり目を合わせる。


「…………?はい。」


「だから、轟の言うことをある程度は聞け。」


「!?」


「でも今回みたいな無茶な行動を轟がしそうになったらお前が止めろ。良いな。」


「な、なんでそんな私と轟くんセットみたいな……。」


「……無茶無謀、それでいて単細胞セットだ。互いに互いを見張っとけ。」


「!!?」


ありえない暴言を吐いて相澤先生とオールマイトは去っていった。


私はともかく轟くんまで単細胞って…………そう言われてもおかしくないのか、爆豪くん救けにヴィラン連合のアジトに向かったんだもんな。


私が止める。…………出来るかなぁ。


彼より単細胞な自信しかないので、出来る気がしないがそれが彼を守ることに繋がるのなら、やるしかない。


そもそも私が弱いから、轟くんにも心配かけるのだ。


強くなれ、もっともっと。


「…………プルス……ウルトラあああああ!!!」


めげずに負けずにもっと上へ。更に、向こうへ。

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