体育祭

「……………………は?」


体育祭が始まり、USJでの出来事も踏まえて注目されながら入場すると、視界の端。…………と言うか割と目立つところに立つ人気ヒーローに思わず声を上げてしまう。


「……え!?ちょ、あれ、えぇ!?美悪ちゃ、梅雨ちゃ、あのヒーローってアスモデウスだよね!!?」


「そ、そうね…………なんでここに……。」


「え!?本物!!?で、デクくん!!」


「う、麗日さん!!ぼ、僕夢見てる!!?アスモデウスが見えるんだけど、」


「見てないよ!!私たちにも見えるもん!!」


「…………っ本物かぁああ!!!」


あれだな、緑谷くんは本物のヒーローオタクだな。喜び方がガチのあれだ。


拳を握って雄叫びでもあげそうな勢いで喜んでいる。


「え、なぁ。あれってアスモデウスだよな!?…………アスモデウスってプロヒーローなんだっけ?モデルだっけ?」


切島くんの質問に答えようとすると、それより先にヒーローオタクが口を開いた。


「プロヒーローだよ!!アスモデウスは超有名モデルとして活躍する一方、女優業や広告への出演もしながら、ちゃんとヒーロー事務所に所属していて、ヒーロー活動だってしてるんだ!!何よりメディア露出の方が目立っているから、ヒーロー活動があまり目立っていないんだけど、彼女の倒し方は非常に効率的で僕好きなんだぁああ!!!」


こ………………怖い。凄いな緑谷くん、よくご存知で……。


「へぇ…………ってなんかすげぇこっち見てない?」


「本当ね、……誰か選手を見に来たのかしら?」


「…………そう言えば、ネットニュースで見た気がするな。」


「何を?」


緑谷くんが頭を抱えながらなんとか思い出そうと踏ん張る。


「……あぁ!そうだ。アスモデウスには二人の子供がいて、兄は既にサイドキックとして活躍中。それで妹が今年ヒーロー科に入学するって…………。」


「………………え!!?じゃあまさか雄英に!!?」


「……有り得るよ。兄の方は雄英の卒業生だから!それに、今はアスモデウスが有名になっているけど、そのアスモデウスのお母さんはルシファーって言うヒーローで、」


「え!!俺知ってる!!かなり昔に活躍したヒーローだけど、超強いんだよな!!?しかも見た目もかっこよくってよ!!」


「そう!!オールマイトが雄英にいた時代に、雄英で教師を務めていたらしいんだ!!前線を退いてからは長らく雄英で教師を続けていたって聞いたから…………たぶん、お孫さんが雄英に入るのは妥当だと思う……!!」


……………………とんでもない情報量だな。


しかも、切島くんよくそんな古いヒーロー知ってたな…………ばあちゃん活躍してたのなんてウン10年前だけどな?……本人の前で言ったら消し炭にされるけど。


「えー!!!B組の子かな!?どんな子おったっけ!?」


「でも、アスモデウスの娘さんってことは少なくとも整った顔立ちをしてるんじゃないかしら?」


あ、あぁ…………言い出せない、もう言い出せない空気感が流れ始めている。


きっとこんな子だろう、とか。きっとこうに違いない。とか。ご、ごめん!!そんな出来た人間じゃなくてごめん!!!





「それでは第1種目の説明の前に……今日はゲストが来てくれてるわ!!しかも皆知ってるこのヒーロー!」


「こんにちはー!!アスモデウスでーす!!」


胸元のはだけた服。肩も出して、バッチリとした化粧でこちらに向かってウインクしてくる母親。


年齢とか色々きっついにも程があるが、それはまぁ母さんの個性のお陰でなんやかんやなっていて、現に男子生徒達は母さんに釘付けだ。


「皆のこと応援してるから頑張ってねー♡」


今度は投げキス。う、うぇ…………。


「それと…………うちの娘をよろしくね!」


「ちょっと、うちの娘ってだけじゃわかんないでしょ。」


ミッドナイトの言葉にあぁ!そうか!と笑った母親。え、ちょ、まっ


「1-A、夜魔美悪をよろしくお願いしますしまぁす♡」


ひっ。と喉が引きつく中母親は一息にその言葉を放って。


「…………え?」


「夜魔さん…………え!?」


「ま、マジか……。」


「通りで可愛いと思ったよ!!?」


ああああもおおお!!!一気に周囲の視線を向けられ、恥ずかしさから顔に熱を集まらせつつ元凶を睨みつけると


「…………ふふっ。」


口の端から牙を覗かせながら妖艶に笑って見せた。それはまるで、まるで悪魔のような微笑みで。


馬鹿なフリしてこうなる事を望んで言い放ったのだと理解すると、やり場のない怒りが私を襲った。

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