開会式が終わり、早々に第1種目である障害物競走が始まる。
念入りに準備運動をしている最中も、クラスの皆の視線が痛い。刺さる。
「……言いたいことも聞きたいこともわかる。わかるよ。」
でもね、と続けて怒りのままに全身悪魔の個性を発現させる。
「美悪ちゃん、その姿……!?」
「……本当はそういう個性だったの…………?」
「うん。……でもこの姿怖いから。見せたくなかったの、でもね。」
青白い顔。尖った耳に紅を引いたように赤い唇。
ヒビの入った皮膚に、大きく太い尻尾。そして背中から広がる黒翼。
両腕は鋭く尖り、皮膚は鱗に。髪は逆立ち恐らく瞳も鋭くなっている事だろう。
この姿は出来れば、出来ることなら見せたくなかった。でも、
「……母さんぎゃふんと言わせないと。次は何されるかわからないから、本気出してく。」
思い出される悪魔のような微笑み。クソっ……鬼畜が。と脳内のばあちゃんと二人並んで私を見て笑っている。
「聞きたいことは、後で答えられる範囲で答えるから…………今はそっとしておいて?」
そう頼むと、皆頷き黙って準備運動に入ってくれた。
有難い。助かるよ。と心の中で呟き、私は久しぶりに動かす黒翼で風を舞わせた。
◇
「解説はイレイザーヘッド!!アーユーレディ??」
「……勝手に連れてきたんだろうが。」
「早速だが、見所はどこだと思う??」
「…………今だ。」
狭いトンネル。人に押されて前に進めない。…………やばい、そろそろ飛んどかないと……っ!!
無理やり周囲の人たちを巻き込みながら風を起こしてトンネルを抜けるとやっぱり。
トンネルの外まで敷き詰められた氷結。
「…………やっぱりお前は抜けてきたか。」
空を飛ぶ私を見上げ、ぽつりと呟いた轟くん。
……え、それってどういう。…………もしかして入試の時見せた私の個性覚えてたとか……?
……考えるのは後だ。今はとにかくトップにいないと!!
「1-A轟!!流石推薦入学者!!なんかもうあれだな!!ずるいな!!」
「合理的だ。」
「そしてその後すぐを追うこちらも推薦入学者!!さっき説明されたように、大人気モデルアスモデウスの娘であり、超珍しい個性、悪魔を使いこなす夜魔!!!」
プレゼントマイクの声を遠くに聞きながら、轟くんの足元を狙うようにして爆破を続ける。
「ッチ、邪魔だな……。」
睨みつけられるが、なんだろう。イケメンが睨みつけてくると怖いけどあれだな、かっこいいな。
あれ?私こんな面食いだったっけ?とか思いながらも進むと、
「な……何これ。」
「障害物登場!!こいつら倒さねぇと先進めねぇぞ?今年のヒーロー科一般入試でも使った、戦闘ロボットだ!!」
一般入試…………って、一般でもこんなのと戦わないといけないんだ!?
流石雄英、一般と言えど狭き門な事には変わりないんだなぁ。
なんて考えていると、私のいる高さまで登ってきた氷結。…………は?
見ると、ロボットがまるごと一体氷漬け。……ま、マジ!?
轟くん範囲攻撃広すぎじゃない!?ちょ、もうチートじゃん!!
そしてちょうど良いタイミングで倒されたロボット。あ、頭良過ぎ…………って止まってる暇はない!!
筋肉に力を込めて、目の前にいるロボットの頭を掴む。
そしてそのまま後ろの地面に叩きつけるようにして沈める。
「触らずして凍らせた轟に対して、夜魔はゴリ押しパワー勝ち!!すげぇな!?悪魔ってパワー強いんだな!?」
「知らん。」
地について動かなくなったことを確認して、私はすぐにまた羽ばたいた。
◇
綱渡りは私には関係無いので轟くんへの距離を詰めていると、
「てめぇ…………こんなん隠してやがって!!」
「っ!?」
聞こえた音に慌てて身を躱すと避けんなぁ!!とキレられる。無理がある!!
「出し惜しみとかきめぇ事してんじゃねぇよ!!」
「き、きめぇって!?」
「うっせぇ!!死ねぇ!!」
酷すぎる。なんという語彙。
至近距離で繰り出される爆発。それらの光に目がくらんで、危機感から距離を取る。
……爆豪くんからは離れたまま進んだ方が良いな。
幸い地雷ゾーンに入り、轟くんのスピードは低下。今なら多少スピード落ちてもいけ……
「ごめん!!夜魔さん!!!」
へ。