「…………雑誌、撮影?」
「あぁ、そんな事を言われた。」
「わ、私に?」
「あぁ、断っておいた。」
「そ、そっか……………………て、え!?」
思わず大きな声を出して、撮影終わりのかっこよくキメられた髪型と服装で、いつもの5割増ぐらいでかっこいい焦凍くんに向き直る。
「こ、断った?」
「あぁ、……駄目だったか?」
「いや、全然。…………どうせ断るだろうし。」
「だよな、…………ヒーロー名、1回素顔明かしちゃったからそれで。どうにか出て貰えないか説得してくれませんか、なんて言われて。」
しゅるり、ネクタイを緩めながら机に凭れかかる焦凍くんは、なんだか色気があって直視出来ない。
「そ、そっか…………引き下がって貰えた?」
「一応。…………結構俺も頭に血昇って、強く言っちまったから……。」
「……え、な、なんで。」
そんな怒るような事だろうか、雑誌の撮影は焦凍くんだって苦手だと言いつつも怒るほど嫌がってる訳でもないのに。
「…………ヒーロー名は、見せ物じゃねぇだろ。」
「……そ、それは…………ショートだってそうだよ。」
「そうだけど、こういう仕事がヒーローにも求められてるのはわかるから、やってる。でも、ヒーロー名はそんな仕事しなくても充分ヒーローとして世の中に貢献してる。」
「…………そう、かな。」
「あぁ、だから無理して本当に苦手な事までやらなくて良い。嫌なことは、俺がやるから。」
さらり、頭を撫でられてどっちが年上かわからなくなってしまう。
「ヒーロー名は今まで通り、かっこいいヒーローでいてくれ。」
「……!」
にっ、歯を見せて笑った焦凍くん。君は私の傍に来ても私に憧れていてくれてるんだね。
…………期待に、応えなきゃ。
「……うん、私は私を貫くよ。」
「あぁ。…………あと、もう1つ個人的な理由として。」
「?」
事務所の中なので仮面も何もしてない素顔に手を滑らされる。
「こんな可愛い彼女、世の中に見せたくねぇ。」
「……………………!!!!」
ぶわわわ、顔に熱が集まって大変なことになってるだろう。現に目の前にいる焦凍くんは大変楽しそうにこちらを見てるんだから。
「か、………………からかわないで!」
「ふふっ、……からかってねぇよ、本心だ。」
更なる追撃を受けて、くらりと倒れそうになる。
今日も今日とて彼氏がかっこよ過ぎて、キャパオーバーだ。