「おぉー!!!久しぶりやなぁ!!ヒーロー名!!」
ばしぃん!!と背中を叩かれて、痛みに悶える。吹き飛ぶかと思った……。
「お、……お久しぶりです…………ファットガム…………。」
「おぉ!!あの子が噂の新卒でたった1人のサイドキックか!!」
「…………噂なんて立ってるんですか。」
「当たり前やろ!?そもそもお前が独立するって言うのもかなりのビッグニュースやったのに、その上高校卒業したばっかの雄英生をサイドキックにするなんて、話題てんこ盛りやんけ!!」
「…………そ、…………そっすか…………。」
「あの子、名前……ショートくんやったっけ?」
「はい。」
「ショートくん!!こんにちは!!」
そう言いながら切島くんと話していた焦凍くんの元へと駆けていったファットガム。
今日は、ファットガムからチームアップの要請があり、関西までやって来た。
どうやら任務内容に私が適任だったらしく、ヴィランの大量確保が狙いらしいので適任であろう焦凍くんも連れてきた。
それにしても今日もコミュ力の鬼だな、ファットガム……陽だ、陽キャだ。
私やファットガムの他にもチームアップを要請されたヒーロー達が揃っているのだが、これがまぁ関西のヒーローばかりで。
あっちこっちで話し声や笑い声が絶えない。皆コミュ力の鬼か?なんでやねんの精神怖過ぎる。
私のような陰キャは端に寄っておこう…………そう思い体を壁際に寄せていくと、
「ぅわ、」
「っ、す、すみませ、」
誰かとぶつかってしまい、慌てて謝ると私と同じように頭からマントを被っている青年。
あれ、彼は確かファットガムの……。
「え、えっと…………確か…………サンイーター?」
「あ、は、……はい。……ゆ、有名なヒーロー名に知ってもらえてるなんて…………こ、光栄、です。」
「あ、いや……全然、有名とかじゃ…………。」
……………………。
終わった会話。見ろ、陽キャよ。これが陰キャの本気だぞ。
きっとサンイーターも私と同じでこの空気が苦手なのだろう、彼と並んで壁際にてぼーっと会議が始まるのを待つ。
すると目に入ったのは新人サイドキックとして注目されている切島くんと焦凍くん。
特に焦凍くんは女性ヒーローから黄色い声を浴びていて、少し困っているようにも見えた。
……ごめんね焦凍くん。あの中に入ってうちのサイドキックを困らせないで下さい!なんて、口が裂けても言えない情けないヒーローでごめん。
「…………大変そうですね。」
「え?」
隣から聞こえた声に首を傾げる。
「彼、……ショート。」
「あっ…………うん、でも…………割といつもの事だから……。」
現場でもよくある事で、私が次の現場へ行こう。と声をかけようと思ってショートを見ると、女性ファンに囲まれて動けなくなっている、なんて事はよくあって。
その度うぉ……あっ……さ、先行ってるね!!なんて言っておい!!と困っている様子の焦凍くんを放っていってしまう。ほんと最低な所長だ。ヒーロー辞めた方が良いのでは??
「……一緒にいるのも、……大変そうです。」
「…………それは、そこまででも……。」
「…………彼が注目されるだけ、……人が集まるじゃないですか……。」
あ、なるほど、そういう意味か。それは確かに……。
「……困る時も…………あるかな……。」
「…………大変ですね。」
「…………うん。」
そう答えると、なんだかおかしくて笑ってしまう。
私は人からコミュ障だとか、人と話すのが苦手だとか言われやすいけれど、そんな私と感覚の合う人がいたなんて。
私に負けず劣らず人目を苦手としているサンイーターは、なんとも話していて居心地が良かった。
「……君は、私と似てるね…………ふふっ。」
「…………ファットにも言われました。」
「そうだったんだ…………ファットも大変でしょう、コミュ力の鬼だから。」
「はい、……色んな人に話しかけられて、一緒にいる俺まで顔を覚えられて…………話しかけられてもファットみたいに答えられなくて…………。」
「…………大変だね。」
「…………はい。」
なんとも似たもの同士で、ふふ、と笑い合う。
すると突然、目の前に影が落ちてきて
「……楽しそうですね。」
「あ、焦凍くん。」
「轟くん。」
「こんにちは、天喰先輩。…………知り合いだったのか?」
「いや、今日初めて会ったけど…………凄く気が合って。」
ね、と隣を見るとこくりと頷いたサンイーター。本名は天喰くんと言うのか、かっこいい苗字だなぁ。
「…………そうか。」
あれ?なんか怒ってる?
いつもやらかしてしまう流れに、若干焦る。いつも私は彼が怒ってから、なんで怒ってるのか考えて考えて、そしてわからずまた怒らせる、なんて流れをやらかす。
そして今回も然り。綺麗なお顔にひっそりと寄ってしまった眉間に焦る。
「ど、どうしたの……?」
「…………いや。そろそろ会議始まるから、」
そう言って腕を取られる、半ば引きずられるようにしてサンイーターと離れて、私は席へと座らされた。
「しょ、焦凍くん……?」
「…………………………俺は、」
「うん?」
耳元に唇を寄せられる。
「…………俺は、嫉妬深いんだと思う。」
「…………………………えっ?」
そう言うと素早く身を離され、何事も無かったかのように隣の席に座っているが、赤くなっている耳は隠せてない。
嫉妬深い。
その言葉から先程の出来事を考えて、そして私まで顔に熱が集まったのは言うまでもない。