VS源義経

※ほとんど試合の描写です、だいぶざっくりとですが。なので飛ばしてもらっても大丈夫です。


「来たぜ決勝………!!」


「俺達も本気出すぜ……!!」


「…………って苗字ちゃん?どうした?」


「ず、ずみまぜん………」


「なんで始まってもねぇのに泣いてんだよ!?」


「センターコート……決勝戦……!!うぐっ……」


「感動するのはわかるけどよ、勝ってから泣いてやれよぉ」


「ずみまぜん……我慢出来なくて……」


センターコートだぞ、明日!!と昨日ウキウキしていた飛雄を思い出す、うぐうう、良かったねぇ良かったねぇ飛雄おお!!


「ねぇちょっと!!不審なやついたから捕まえてきた!!」


冴子さんの声が聞こえる、今日も元気だなぁ……私は既に涙で目がベチョベチョですよ……


「不審者じゃないです!!月島蛍の兄、明光です!!」


月島くんのお兄さん………?に、似てない


「皆さんは…?」


「俺らは町内会チーム!あのコーチと同期でチームメイトだ!!」


「なるほど……あなたは……?」


「が、影山………セッターの……姉……もどきですぅ……」


「うわぁ!?名前ちゃんどした!?なんでもう泣いてんの!?」


「センターコートに影山が立ってるだけで泣けてくるんだと」


「うぐううう………飛雄おおおお!!がんばれえええ!!!」


「龍うううう!!!頑張れよおおお!!!」


「うわぁ、2人とも凄い顔してるぞ……」


「たぶん恥だと思われてるからやめたれよ……」


「ちょ、……これ、良かったら使ってください」


明光さんがハンカチを差し出してくれる、優しい……優しい人は好きです……


「ありがとうございます……」


「…………。」


「おい月島兄よ、苗字ちゃんは可愛いだろう?美人だろう?わかる、わかるけどな、この子には目付きの悪い番犬がついてるから気をつけろよ?」


「んな!そんなつもりは……ば、番犬!?」


「ほらあそこに、もう目付けられてんぞ」


「(凄いジト目でこちらを見てくる……もしかしてあれが影山くんか……?)」



そして試合が始まった。


選手の紹介とかもう大号泣だった。ムズムズした顔してんの見えたし、なんか、もう、凄く決勝!!って感じでここまで来たんだねぇ飛雄おお!!!って感じでとにかく泣きまくった。


しかし源義経のパワーは想像を遥かに超えていて、床にボールが叩きつけられた音で、涙は引っ込んだ。も、もげるよ、触ったら腕もげるよ!?


だが1セット目終盤、烏野の守護神こと西谷くんはそれを上げてみせる。かっこよすぎる。




2セット目ゲスモンスターと教わった5番のブロック。


それに対して冷静に対処する月島くんのブロック。


バレーボールは飛雄が小さな頃から見てきたが、高校生にもなると様々な技巧が存在して、見ていても違いがわかり、面白い。


月島くんの粘り強いワンタッチ。


それらが功を奏して、2セット目終盤、遂に源義経を止める。





そして4セット目


デュースの展開、体力の限界を迎えつつある飛雄。


その表情は苦しさもあり、悔しさも感じる。


しかしそんな中でも皆で繋ぎ、もぎ取った4セット目。


あともう1セット。フルでやる事に体力が心配にもなるけど、まだ負けてない。今から勝つんだ!!と応援一同気合いを入れ直し、5セット目に臨んだ。




スターティングは菅原くん、やはり飛雄の疲労は侮れないレベルだったようで。


しかも途中で月島くんが負傷。守備の要として頑張ってきてくれていたので、途端に不安になる。


しかし皆全然気持ちで負けてない、食らいついている。


そんな中、飛雄が復活。復活してボールを手にした時の顔が可愛くて少し笑ってしまう。


復活早々に変人速攻を決めてみせた2人。条善寺戦の時みたいに復活してすぐ失敗しなくて良かった。


しかし訪れる絶体絶命。デュースに持ち込むが白鳥沢の優勢。あと1点とられたら終わり。


そんな時に響くのはコーチの怒号のような愛のような激励のような事実を述べる声。


「下を向くんじゃねぇええええ!!!」


「バレーは!!常に上を向くスポーツだ!!」


じぃん、と熱くなる心。それは周りもコートの中の皆も同じなようで。


そして帰ってくるこの試合のヒーロー、月島くん。


しかし源義経の猛攻は止まらない、それに対するうちの守護神。


西谷くんもこの試合のヒーローだ。この試合はヒーローを2人も生み出した。


そして必死に繋ぐ中、絶好の攻撃チャンス。


ブロックフォローなんて誰もつかない。攻撃5枚で翻弄する。


そして、


日向くんが撃ったスパイクに


相手の手は届かなかった。





「うわあああああん!!!」


「いい加減泣きやめよ……」


「とか言いつつ苗字さんに抱きつかれて内心満更でもない影山くんですか?」


「あぁ!?」


「ふん!!疲れ過ぎて声に覇気が無いから怖くないね!!」


「おめぇも足震えてんぞ」


「う、うるせぇ!!」


「苗字さん、泣きすぎっすよ」


「だってえええ!!田中くんもかっこよかったよおおお!!」


「うぇ!?あざっす!!」


「苗字さああん!!俺は?俺はどうでした!?」


「西谷くんには惚れたあああ!!!」


「えっ……?」


「おい、ちょ、惚れたってどういう意味だオラ、おい名前。」


飛雄に肩を揺さぶられる。吐きそう。でも西谷くんには惚れたって仕方ないぐらいかっこよかったぁああ!!


「ちょ、ノヤっさん………!?息してねぇ!!」


「おい、名前!?惚れたってどういう」


「影山慌てすぎでしょ、必死なのバレバレなんだけど」


「うるせぇぞ月島ぁ!!」


皆バテバテだけど、笑ってる。私達は今日を笑って終えられたんだ。


「うわああああん!!!」


「!?苗字さん!?」


澤村くんに心配される。でもいいの、頭おかしい奴だとでも思っていてくれ。今日皆が笑って帰れるんだと思うだけで涙が止まらない。


「おめでとおおおおお!!!」


だーだー涙を垂れ流しながら、私は飛雄に抱きついていた。