及川くんとデート

「ねぇ日向……」


「ん?どうしたの、谷地さん」


「影山くん、いつもより顔怖くない?」


「いつも怖いよ?」


「いやまぁそうなんだけど……いつにも増して凄みがあると言うか……」


「ん?…………………確かに、眉間のシワが3割増ぐらいだね」


「だよね?何かあったのかなぁ」


「あいつ自分からはあんまり言わねぇもんなぁ………おーい影山ー!!」


「あ?」


「今日何かあったのか?顔怖いぞ!」


「あぁ!?」


「ひ、ひいい!!日向ダイレクト過ぎ!」


「何何?どうしたの?」


「や、山口くん……月島くん……」


「今日いつもより影山の顔が怖ぇんだよ」


「確かに、目付きが3割増で悪いよね」


「あぁ!?」


「で、何かあったのか?」


「……………………………………明日」


「おう」


「名前と及川さんがデートするらしい」


「はあ!?」


「えぇ!?」


「で、デートって!!」


「なんでそんな事になってるのさ」


「………前名前の名前使って及川さん騙した」


「いやその時点でツッコミどころ満載なんだけど」


「それでその詫びでデートしろって及川さんが言って名前が約束した」


「えぇえ!!」


「そ、それって大王様も苗字さんの事好きなのかよ!?」


「……そうなんじゃねぇの」


「つくづく変人にばっかり好かれる人だね」


「しかも一際苦労しそうな2人……」


「明日オフだけど、2人が会ってるってこと考えちまって何にも手につかなさそうだ……そもそも今だって腹たって仕方ねぇのに」


「……それならさぁ、影山」


「あ?」


「尾行しようぜ!!」


「「「はぁ!?」」」


「ちょ、日向尾行って意味わかってる!?」


「わかってるよ!だって気になるんだろ?たまたま明日部活無いし、跡付けちゃえばいいじゃん!1人が嫌なら俺もついてってやろうか?」


「…………尾行か」


「え、ちょ、影山も真面目に考えちゃダメだよ!?普通にダメだからな!?」


「よし、やるぞ。日向お前も来い。」


「よっしゃー!!大王様がどうやって苗字さん口説くのか見に行くぞ!」


「口説くって……」


「ね、谷地さんも来ない?」


「え、えぇ!?」


「おい谷地さんまで巻き込むなよ!」


「山口と月島もどうだ?」


「えぇ!?」


「はぁ?行くわけないでしょ」


「そっかぁ……じゃあ仕方ねぇ影山と2人でいく」


「……わ、私行こうか?」


「いいの?」


「いいんすか」


「う、うん。2人だけだとちょっと……心配、かなぁ……?」


「正しい判断だと思うよ。この馬鹿2人だと何するかわからないから見張り役いると思う。」


「見張り役谷地さん1人だと心配だな………俺も行こうか?」


「いいのか!?山口も!!」


「助かる」


「うん、いざとなった時止められないのはやばいからね……」


「…………………僕は行かないからね」


「えぇ?あと月島で全員なのに?どうしても?何がなんでも?」


「引っ付くな、行かないよ」


「………………………………。」


「何、王様」


「……………尾行、頭悪いとすぐバレそうだから、お前来て欲しい」


「知らないよ、自分達の話でしょ?」


「えぇー?つーきーしーまー!!行こうぜー?」


「ツッキー……」


「月島くん……」


「…………………………あぁもう!わかったよ!!」


「よっしゃあああ!!1年全員で尾行だー!」





「…………よし」


姿見で自分の姿を確認する、ふんわりとした白のニットにブラウンのフレアスカート。まだ寒いのでグレーのコートを上から着て、おかしくないかな?今から美形の隣を歩くけど笑われないかな?と確認した。


今日は及川くんとお出かけ。いつもは車で移動するが、今日は及川くんからの指定で駅に集合だ。


久しぶりに電車での移動になるので歩きやすいようヒールの無い靴を選んで、誰もいない家に向かって行ってきますと言う。


飛雄は朝から珍しく部活の子達と遊びに行ったらしく、朝イチに見送った所だ。


さて、遅刻しないように駅に向かうかな!





「及川くん!」


「名前さん!」


「ご、ごめん、待った?」


「いえ、ちょっと早く来すぎたんで」


「それなら良かった……今日寒いのに走ったからちょっと汗かいちゃったよ」


「そんな焦らなくても大丈夫でしたよ!遅れてないですし」


「遠目にでも及川くん待ってるの見えたから急いじゃったや……行こっか?」


「はい、…………あの、手繋いでもいいですか」


「へ!?」


「デートして下さいってお願いした筈なんで」


にっこり笑ってそう言う及川くん。見た目こそ優男感凄いが、要は脅されてる。デートって言っただろ?って脅されてる、怖いよぉ……


「………しょうがないな」


おずおずと右手を差し出すと、優しく及川くんの手に包み込まれる


あ、飛雄よりゴツゴツした手だな。たぶん飛雄より大きな手だ。


「今、飛雄の手と比べました?」


「えぇ!?な、なんでばれ………」


「正直過ぎて傷つきますよ?今まじまじと俺の手見てたんで、飛雄の手と比べられてんのかなって気づいちゃいました」


「す………すまん」


それは失礼な事をした………あははは!と楽しそうに笑う及川くんだが、こんな風に2人っきりで出かけるなんてあまりした事ないので緊張してしまう。


「今日は飛雄の事より俺の事考えて欲しいです、駄目ですか?」


「ぜ、善処します」


「善処って!!……頑張ってください。じゃあ行きましょうか」


そう手を引かれ、及川くんとのデートが始まった。





「うぇっ………ひっぐ……うぉん……」


「大丈夫ですか?」


「ひっぐ…………うん……」


及川くんとのデートは私が見たいと言っていた映画から始まった。始まったのだが、想像以上に感動してしまい化粧は崩れるし、あまりに泣くから及川くんちょっと引いてるしで最悪だ。


「ごめんね……こんなに感動するとは思わなくて……」


「いえ、大丈夫ですよ。ハンカチ使います?」


「持ってる……」


鞄からハンカチを取り出して、涙を抑える。その間ずっと背中を摩って落ち着かせてくれた及川くんは流石というかなんと言うか。


「………………………。」


「どうしたの……?」


「いや、虫がいたので」


「虫!?」


「はい、周りを飛び回ってます」


「え、ちょ、どこ」


「もう見えなくなりましたね」


あ、涙も止まりましたね!と顔に手を添えられ、至近距離でイケメンを見てしまう。ひん……と情けなく声を上げるが、及川くんは気にもせずご飯行きましょう?と手を差し伸べてくれる


やっさしいなぁ、及川くん。どうしたらこんな柔らかい人になれるんだ?と思うが、それだけで出来ている人間では無いと思い出す。彼のバレーボールに対する執着は泥臭い人間そのもので、物腰柔らかなこの外見と印象とは程遠いものだ。


それら全てを含めて及川くんなのだ、所謂これはよそ行きモード。そういえば告白もどきをされているんだった、そりゃよそ行きモードだわな。なんて冷静に納得する。


彼の手を取り、立ち上がる。改めてイケメンに部類されるかっこいい顔をまじまじと見て、私には荷が重いなぁと実感する。


「どうしました?」


「ううん、今日もかっこいいね及川くんは」


「…………へ」


「え?」


こんな事言われ慣れてると思っていた、そりゃあ思うじゃないか。あれだけ試合の時に及川くーん頑張ってー!と黄色い声援を送られている人だ。ピタッと動きを止めてしまった彼に私もビビる。


「お、及川くん?」


「そう言うの、不意打ちで言うの辞めてください」


「え!?」


「心臓止まるかと思った……」


ほんのり顔を赤くして、顔を逸らす彼を見ると年相応の男の子なのだと感じる。


それに対してうちの飛雄と言えば、褒めればキレるし褒めなければそれもキレる。なんなの?


「ご、ごめんね……?」


「……いえ、ご飯行きましょう?」


「うん!」


改めて手を繋ぎ直して私たちは映画館を出た。





「ねぇ見て…あの人かっこよくない……?」


「ホントだー!あ、でも彼女連れてるね…………って彼女めっちゃ美人じゃない!?」


「うわ。ほんとだ。美女!!お似合いのカップルだねぇ……」


周りの声が聞こえて苛立つ。わかってる、2人とも顔が良いってわかってるけどだからってお似合いかなんてわかんねぇだろ。


「か、影山……!顔!!」


「あぁ?」


「ねぇ!苗字さん達行っちゃうよ!?」


「やべ、追いかけるぞ」


「……っていうか、青城の主将たぶん気づいてるよ」


「「「え?」」」


「さっき僕達の方じーっと見てた。たぶん気づかれたんじゃない?」


「なっ……変装したのにか!」


「いや逆に怪しいでしょ、それに僕と君はそれなりに身長あるんだから目立ちやすいんだし。」


「…………だからってここで辞められねぇよ!!」


「そうだそうだ!!追いかけるぞ!!」


「ま、まっでぇ………」


「谷地さん!?」


「あぁ……さっきの映画で感動したんだね……」


「うぅ……ごめんけど私はここで離脱するよ……ごめん……」


「えぇ!……そっかぁ、仕方ないね」


「……俺付き添ってるよ」


「え?」


「いいの……?でも山口くんも行かないと……」


「僕一人でこの2人止めれる自信無いんだけど?」


「でも谷地さん1人になんて出来ないし……影山と日向はちゃんとツッキーの言うこと聞けよ?」


「おう!」


「……おう」


「…………はぁ、じゃあ跡追うよ」


「ごめんねぇぇ!!頑張ってぇえ!!」





「………………………悩むな」


「気が済むまで悩んでください」


にっこり。そう笑う及川くんは女の子に圧なんてかけないイケメンの鑑だ。


「……じゃあBセット!!」


「はーい、すいませーん!!」


「これとこれ、お願いします」


及川くんが店員さんに注文する、こういう時にパパっと動いてくれるのって地味に嬉しいよね。


「名前さんって意外と優柔不断なんですね」


「そうなんだぁ、それでよく怒られる…」


「誰に?」


「とび…………………申し訳ねぇ」


「あははは!飛雄って言っちゃダメなんて言ってないですよ、話題の1つぐらいなら全然。」


「ごめんよ、私の中は飛雄でほとんど出来てるから……口を開けば飛雄の話題を出してしまう……」


「いいですよ、最初はそれでも」


「…………最初?」


「まぁこの話はまた後で。」


にっこり。今度は貼り付けたような笑みだ、及川くんはあれだな、きっと嘘が上手い人だな。すぐ顔に出ちゃう飛雄とは大違い。





「ちょっと、あんまりそわそわしないでよ。目立つでしょ」


「だって、何話してんのか聞こえねぇ」


「聞こえねー!」


「うるさい!声でバレたら馬鹿過ぎるでしょ!?」


「そう言う月島だってうるせぇぞ」


「……………悪かったね、とにかくバレないように気をつけて。」


「おう!」


「………ちょっとトイレ行ってくる」


「行ってらっしゃい」


「いってらー!」





「……………。」


「どうしたの?」


「いや、…………ちょっと御手洗行ってきます」


「ん、行ってらっしゃい」





「飛雄」


「………………………っ!?」


「いや反応鈍すぎでしょ、大丈夫?」


「いや、あの、これは」


「わかってたから、映画館の時点で。」


「…………すんません」


「別にいいよ、君達がいようと俺がやる事は変わらないし」


「……やる事って」


「名前さんを口説き落とすこと。お前も大好きな名前さんが俺に奪われると思って来たんだろ?その通りだよ、その為に今日は気合い入れて来たんだ俺は。」


「………………………渡しません」


「はぁ?恋愛対象にさえ入ってないお前がどうやって名前さんを引き止めんだよ。そりゃあお前が高校出るまでは付き合って貰えないだろうけど、俺はそこから先名前さんの残りの人生全部が欲しいんだ。たかだかあと2年くらいだったらくれてやるよ。」


「……これからの2年も、その先も全部俺が貰います」


「………精々足掻けば。」





「すいません、遅くなりました。混んでて。」


「ううん、全然。そろそろ出る?」


「そうですね、移動しましょうか…………あれ、」


「お会計は済ませちゃった。ごめんね?男の子として奢りたかったかなぁとか思ったけど、ここはやっぱり大人なので。」


嫌だったかなぁ、ごめんね、でも稼いでる私が稼いでない及川くんにたかるのはちょっとね…


「……いえ、全然。ありがとうございます。」


「いえいえ。行こう?」


今度は自ら手を差し伸べる。その手を見て少し驚き、はにかみ、手を握る及川くん。


嬉しそうな顔を見て、胸が痛む。ずっとそんな顔をさせてあげられたらいいんだけど、私の気持ちはもう決まっているから。




「だいぶ暗くなったねぇ」


「はい、………着いた。ここ、イルミネーションまだやってるんですよ」


「嘘!?もう2月なのに?」


「そうなんです、長いですよね。暗くなるのまだ早いんでいいかなぁと思って最後はここにしました」


「いいね!今シーズンイルミネーション見れてなかったんだぁ!!」


「……………名前さん」


「うん?」


「歩きながらでいいので、俺の話聞いてくれますか」


「……うん」


「俺、春からアルゼンチンに行きます」


「へぇそうな…………………ある?え?あ、あるぜ?え?」


初っ端から聞き捨てならないことを告げる及川くんに激しく動揺する、え?あ、アルゼンチン!?


「アルゼンチンですよ……っぶふふふふ!!」


あまりに私が動揺するから吹き出す及川くん、え、ちょ、ごめんなんかしんみり的な感じで話したそうだったのにごめん。


「な、なんで」


「………バレーをアルゼンチンで続けるつもりです、会いたい人がいて。」


「そ、そかそか……アルゼンチン……そうか…………」


「俺、2年間向こうで頑張ります。プロにもなります。」


「う、うん」


「名前さん」


足を止める及川くん。それに釣られて私も止まる。


「好きです」


ドクン、と胸が鳴った。甘酸っぱいのとは違う、重たい音。


「今はまだ付き合いません、飛雄の事もあるんで。だから、2年後。あいつが卒業したら、………迎えに来てもいいですか。」


ドクドクドク、うるさい心臓。ごめん、ごめんね、言わなければ。


「………………ごめん」


「……………っはぁ………そうですか」


「ほんっとごめん」


「………理由は聞いても?」


「えっと………荷が重い」


「へ?」


「こ、こんなイケメンの彼女なんて荷が重過ぎるよ!!」


「………そんな事ないです、そのままでいてくれたらそれでいいんです」


「だって私及川くんの前ですっぴんになれる自信ない。」


「えっ」


「白目も剥けないし、よだれの跡だって見せられない。」


「…………。」


「ごめん、私に及川くんはかっこよすぎる。」


「……………それだけですか?」


「……あとは」





「……あとは」


名前が断ったことに安心しながらも、理由がかっこよすぎるからと言うのには心配が残る、いつ気が変わるかなんてわからない。


「影山、絶対出てっちゃダメだぞ」


「わかってる」


「本当?さっき青城の主将が告った時暴れ出しそうだったのはどこの誰?」


「うっせぇんだよ!」


「か、影山静かにしろよ!!」


「……あとはね、やっぱり私って飛雄が自分の手を離れても応援していくし、大事だと思うんだ」


「……それは、そうなんじゃないんですか家族みたいなものだし」


「うん、そうなんだけど、私って自分でも思うんだけど飛雄に執着し過ぎなんだよね」


「……!気づいてたんですか」


「及川くんも思ってたんすか、マジですか。」


「周りの人皆気づいてると思いますよ?姉にしても弟にしても距離感近すぎるし、名前さんは飛雄の事大事にし過ぎです。」


「うっ……刺さります…こんなブラコンだからさ、飛雄がいなくなってもずっとこんな感じかもしれないんだ」


「そうなった時に、やっぱり飛雄の事大事に思って貰えない人とは付き合えない」


「………。」


「でもだからって及川くんに飛雄も可愛がって!なんて言えないし。………ごめん、私は今まで生きてきた時間の殆どを飛雄の為に使ってきた。そう簡単には飛雄離れも出来そうもない。」


そしてそんな事してる間にきっと私は自他ともに認めるBBAになり、孤独死でもするのだろうか。


「それだと、名前さんは一生誰とも付き合わないつもりですか」


「……少なくとも自分が飛雄離れ出来る自信がつくまでは」


「自信がついたら、俺とも付き合ってくれますか」


「そんなのいつになるかわかんないよ」


「いいです、待ちますずっと。」


「そんなの駄目、待ってたらおじさんになっちゃうかも」


「いいんです、俺、名前さんなんです初恋の相手」


「は!?」


「忘れられる訳ないんです。好きでいるのは、自由でしょう?」


苦しそうに笑う及川くん、そんな顔をさせてごめんね、本当にごめんね。


「自由だけど……」


「それに名前さんもずっと1人で生きていかせる訳にもいきません」


「でも……」


「いつか迎えに来させてください、お願いします」


そんな事を言われても。今だけの気持ちで及川くんの未来を縛る訳にはいかない。


でも頭ごなしに否定しても引き下がってくれそうもない、困った。


………あ、いいこと思いついた


「及川くん、何歳までに結婚したい?」


「え?」


「何歳?」


「え、えーっと……30歳とかですか?」


「じゃあ及川くんが30歳になった時、私は40歳手前だ。その時にお互い独り身で恋人もいなかったら結婚しよう?」


「えっ……!」


傍目から見たら圧倒的に私がラッキーな女過ぎる。40歳手前にしてこんなイケメンに嫁に貰って貰えるよう予約するなんて。


「勿論その前に結婚したくなったらしたらいい、これから沢山出会いがあるだろうし。でもその出会いも通してお互い独り身だったら、」


「します、結婚しましょう!!」


「よしゃ、約束ね?でも守ろうと思わないで。覚えてたら程度で良いから。私も守ろうと思ってあと10年ちょっと生きるつもりはないから。」


「わかりました。………ありがとうございます、名前さん!!」


及川くんならすぐに良い相手が見つかって結婚するだろう、と踏んで言ったものの、心底嬉しそうに笑う及川くんを見ると申し訳なくなる。


でもまぁあとは運に任せよう。私だって孤独死は嫌だし。でもだからと言って飛雄が巣立ったら自分の為に生きられるかと言ったら微妙な所だ。





「あんの馬鹿……!!」


「うわあああ!!落ち着けよ影山ああ!!」


「バレるから辞めてよ!!落ち着け!!」


何が結婚しよう、だ。ふざけるな。簡単にそんな約束すんじゃねぇよ!!


「俺がいるだろうが……!」


及川さんの言う通り、恋愛対象にさえ入れていない事を痛感し、膝から崩れ落ちる。くそ、クソ!!


「で、でもあと2年は彼氏作らねぇって事だろ?良かったじゃねぇか!」


「その間は影山の事も子供扱いするって事でしょ」


「え?そうなの?」


「……そうだよ、高校生までは頼まれてるんだよ名前は。でもその先が……」


モヤモヤ、イライラする。なんで及川さんの言葉はちゃんと受け止めるのに、俺の言葉は届かねぇんだ。


苛立ったまま、帰った及川さんと名前を追って俺達も家路に着いた。