「…………私と、……ずっと、一緒に生きていきませんか。」
そんなの、ずりぃ。
告白したのは俺なのに。なんで、俺は名前に告白されてるんだ。
首まで赤くして、ふるふると震える手を俺の顔に添えて、必死に伝えてくれた名前。
唇を噛み締める、心が満たされるってこういう事を言うのだろうか。
赤くなった名前の後頭部に手を伸ばし、そのままキスをした。
「………………へ?」
「っははは!!なんだよその顔」
「だ…………だって急に!!何すんだ!!」
「悪ぃ、可愛過ぎた」
「か、かわっ……!?」
「一緒に生きていこう、名前。……愛してる。」
慌てる名前にもう一度口付ける。
「ちょ、も、……落ち着け!!」
「お前がな」
「確かに……っはぁ………これから、よろしくお願いします。」
大きく深呼吸して、名前は向き直り頭を下げてきた。真面目かよ。
「よろしくお願いします。」
そんな名前に対して俺も、頭を下げた。
◇
「ねぇ、飛雄」
「ん?」
2人でソファーに座りながらテレビを見る。宮城にいた頃と同じ状態だ。
「結婚はすぐはしないからね」
「…………なんで」
なんでだ。好き同士なんだからいいだろ。
「……恋人期間も、……ちょっとは、欲しかったり……する」
そう言ってクッションを抱き締める名前。可愛過ぎねぇか…………?なんだこいつ、誰だこいつ。
「わ、わかった」
「ありがと、……遠距離になるけど…その、……浮気すんなよ!!」
そう言って俺の肩を殴る名前。しねぇよ、馬鹿か。
「しねぇよ、馬鹿か。」
「思ってもそういう言葉遣い辞めな??仮にも彼女ぞ?」
「仮でもねぇだろ」
「んんんん!!!」
今度はクッションに顔を埋めてわーわーうるさい名前。うるせぇ。
「浮気する暇あったら、お前に会いに行く。」
「……………こんなイケメン育てた私ってやっぱり凄い…?」
「は?」
「なんでもない……ありがとう、めっちゃ好きだね私の事。」
「おう、愛してるって言ったろ。」
「……近いうちに心臓止まって死んじゃいそう。」
「あ!?」
「あんまりかっこいい事言い続けないで、顔も良いんだからキツい。」
「…………おう……?」
何言ってるんだこいつ。目が座ってるけど大丈夫か。
「遠距離で暫く過ごして、……もっと近くにいたいって思ったら、結婚して一緒に住もうか。」
「もう俺は一緒に住みたい。養うから来てくれよ。」
「聞いてた?話聞いてた?」
「聞いてたけど、待てねぇ。」
「駄目、遠距離した方がきっと絆も深まるよ!」
「もうこれ以上ないくらい深まってるだろ。何年一緒にいたと思ってんだ。」
「……………18年?」
言われて、少し唖然とする。
…………本当に産まれた時から一緒にいる訳だからそうなるな。
「でも恋人としては今日が初日だから。……焦らずのんびり生きていこうよ、時間はまだまだ沢山あるんだからさ!」
「……沢山?」
「うん、あと60年くらい?」
長生きするぞー!と笑う名前。どちらかが死ぬ時まで一緒にいられるんだ。そう思ったら、焦らなくてもいい気もした。
「……わかった、でもちゃんと会いに来いよ、俺も行くから。」
「うん、勿論。電話もするしメッセージも送るね!」
「ん、今まで通りな。……茶柱ぐらいで送ってくるのは辞めろよ。」
「え!?なんで!?茶柱凄いじゃん!!」
そう言ってどれほど茶柱がレアなのかとかどーとかこーとか話し始めた名前をにやけながら眺める。
本当に俺の彼女になったんだ、………にやける。
……あ。
「姉ちゃんに報告しよう」
「……あ、私も言われてた」
スマホを手に取り、姉ちゃんにメッセージを送る名前。
「送れたか?」
「うん、送れた。………はやっ」
「返事?」
「うん……………お幸せにと……なんか色々書いてある」
そう言ってスマホの画面を俺に見せる名前。影山美羽、と書かれたトークルームを覗くと、
『お幸せに。影山家と苗字家には伝えとくわ。あと助言を1つ。飛雄は撮られでもしない限り自分から彼女出来ましたって言わない方がいいと思う、名前を無駄に危険に晒す必要なんて無いわ。その辺2人でよく考えて、メディアへの対応してね。』
「……………なんかめっちゃ業界人っぽい」
「まぁ……業界に近いもんな、姉ちゃん。」
「どうする?私はよくわかんないけど……美羽姉の言う通りにした方がいいのかなぁって思う。」
「……じゃあ、そうしよう。結婚した時はどっちみち公表するつもりだから少しの間だけだけどな。」
「ふふ、秘密の恋人期間だね」
「別に、バレたらバレたで別にいい。」
お前を東京に連れてきて俺が守ってやればいいんだから。
「まぁまぁ、……楽しく交際して行きましょうよ!」
そう言って俺に抱きついた名前。
こうして俺達の恋人期間は始まった。