色気の化身に太刀打ち出来ない

「……………………お前、なんかあっただろ」


「あ?」


名前と付き合い始めて1週間程度経過した時、日向に言われた。


「ずっとなんか……笑い…かけてる」


「なんだそれ、笑ってねぇよ。」


「いや、笑ってはねぇけど………なんか今にも笑いそう。」


「………じゃあな。」


「おい!待て!!影山ぁ!!」


◇


「影山ー」


「はい?」


「何かあったのか?」


「……………日向から聞いたんすか」


「おう、お前がずっと笑いかけてるって聞いたからよ」


「んな事ないっすよ、あいつがおかしいだけです。」


「んー……でも俺もちょっといつもと違う風に見えるな」


「そうですよね!?」


「!?」


「うわ!?お前どっから湧いた!?」


「すいません!!星海さん!!でもなんか違うんすよ!」


「なんも違わねぇよ!!」


「んーー?なーにしてんだお前ら」


「木兎さん!!聞いてください、影山が今日おかしいんです。」


「おかしくねぇっつってんだろ。日向ボゲェ!!」


「おかしい!!絶対おかしい!なんかいい事でもあったんだろ!」


「おー?…………俺にはいつもと変わんねぇ、ただの影山にしか見えんけどなぁ?」


「そうです、なんでもないです。」


「いや!!俺には違う風に見えます!!星海さんもですよね?」


「あぁ、なんかあったのか?雰囲気が柔らかく見える……気がしないでもない!!」


なんだなんだ、何があったんだ、とわらわら人が集まってきて、焦る。


ついこの間記者にでも撮られない限り言わない方がいいんじゃないかって言われたところなのに。


「お?どした?何しとるん飛雄くん達」


「侑さん!」


「なんや、えらい困った顔しとるやん!!どうしたん!?」


「侑さん、影山の顔いつもと違いません?絶対何かいい事あったのに教えてくれないんですよ!!」


「顔ぉ?………………………………あー……」


「わかります?」


「なんとなくな?………飛雄くん、恋やろ。」


「…………………え。」


「え!?」


「影山が、恋……?」


「おぉー!!彼女でも出来たか?」


「か、彼女って言ったら…………おい!!苗字さんと付き合えたのか!?」


うぐっ、と言葉に詰まる。日向にバレてしまった。悪い名前…。


「……………あぁ。」


「おぉ!!良かったじゃねぇか!!なんで教えてくれねぇんだよ!?」


「…記者にでも撮られない限り言わないって事にした。」


「なんや、俺達のこと信用しとらんのか?」


「ち、違います!」


「じゃあいいじゃねぇか!なんだーお前彼女出来たのかよ。それなら自慢しとけ!」


「いいなぁー彼女。俺も欲しい。」


彼女が出来たという事実を知れたので満足したのか、周りにいた人々は散っていった。


「んで??いつからだよ!!」


「なぁそもそも苗字さんって誰?」


そして残ったのは日向と侑さん。ブラックジャッカルと合同練習をする時、よく話す2人だ。


「…1週間ぐらい、前から。」


「え!!めっちゃ最近じゃねぇか!!」


「なぁ、苗字さんって誰??」


「あ、す、すいません…苗字さんって言うのは影山のお姉さんみたいな人で、影山を育てた人です!」


「………え?自分、お母ちゃんとつきおうとるん?」


「母さんじゃないです。」


「でも育てられた人なんやろ?」


「育てられたって言うか……ずっと一緒にいる幼馴染です。飯作ってくれて洗濯してくれて、試合とか見に来てくれたりとか…」


「そりゃお母ちゃんやろ。」


「違うんですよ!侑さん!!見たら分かります、全然母さんじゃないって分かります!!」


「見たらってなんや」


「めっっちゃくちゃ美人なんすよ!!」


「何!?飛雄くん、写真見せてや」


「無いっす」


「無いんかい!?」


「写真なんか……………あ」


スマホを起動し、データフォルダを起動する。


確か、アドラーズ入って初めてスタメン出場した試合の時にユニフォームで写真撮りたいって言って、2人での写真撮った気が…………あった。


汗だくでユニフォームを着た俺と、俺のグッズであるタオルやサイン入りのボールを持って笑顔を浮かべる名前。


写真越しに見ても、可愛さが伝わり頬が緩む。


「ちょ、ちょ、飛雄くんニヤついとるで。」


「何?愛しの彼女の写真見てニヤついちゃったんですか?影山くん??」


「うっせぇ!!……この、ボール持ってるやつです。」


侑さんにスマホを見せる。すると固まる侑さん。


「……あの…?」


「相変わらず綺麗だなぁ、苗字さん。全然変わんねぇな!?…………え、侑さん?」


「この人は……モデルさんか何かか?」


「?いや、ただの会社員っすけど」


「こんな会社員おってええの…?世の中はこんな美人放っておいてええの…?」


「……何言ってるんだ侑さんは」


「わ、わからない。俺にもわからないぞ。」


「飛雄くん」


「う、うす」


「頼む、会わせてくれ」


「は、」


「こんな美人と知りおうてみたい!!頼む!!この通りや!!」


そう言うとシュバッと腰を折った侑さん。やめて欲しい。


「ちょ、や、辞めてください。会わせませんけど。」


「会わせてくれへんのかい!?」


「嫌ですよ、無駄に男と知り合わせるの。」


「そりゃこんだけ美人ならなぁ…心配にもなるなぁ……」


「侑さん、影山は苗字さんの事になると頭おかしくなるので、引き下がっといた方がいいかと… 」


「頼むぅ!!!」


「「えぇ!?」」


その後もしつこく頼まれ、結局承諾する事になってしまった。



◇


『え?宮侑さん?……あのブラックジャッカルのセッターの人だよね?確か。』


「ん。写真見せたら会いたいってしつこくて…。」


『しつこいて!!先輩に対して失礼でしょ!!』


ケタケタと笑う名前。こんな事で怒るような人では無いとわかっていたが、怒ってなくて安心した。


「会ってもらえるか?今度こっち来た時にでも。」


『いいよ!むしろ私なんかと会っても楽しく無いと思うけど…』


「それで良い。無駄に仲良くならなくて良い。」


『無駄って!!』


「次いつ来れる?」


『明日!』


「は!?」


明日って、金曜日だろ。仕事は。


『明日ね、午前中には仕事落ち着きそうだから半日有休貰ったの!だから夕方にはそっち着けるかな!』


「聞いてねぇけど。」


『今言った!!』


「そういうのもっと早く言えよ。」


『なんで?内緒でも楽しいじゃん。』


「内緒で来るつもりだったのか?」


『うん。』


「………………………まぁ、」


それもそれでいいかもしれない、と思ったけれど、電話越しで顔は見えていないはずなのに名前のドヤ顔が見えた気がして、


『何何?どしたぁ?』


「うっせぇ!!」


『うわ!?何!?出たよ逆ギレ!!』


強制的に話をぶった斬る事しか出来なかった。


◇


練習を終えて、家に帰ると女物の靴が綺麗に揃えて並べてあった。


もう来てんのか、と緩む頬をなんとか抑えながらリビングへ向かう。


「あ!おかえり!!」


「…ただいま。」


何度も言われ慣れた言葉だが、東京にいても尚聞けた事に胸が熱くなる。


「ご飯もうすぐ出来るけど、お風呂先入ってくる?」


「いや、先飯食べる。」


「了解!ねぇ、最近ちゃんと自炊してる?キッチン綺麗すぎたんだけど。」


「……してる。」


「嘘つけぇ!?」


目を合わせられない。本当は全然してない。


家を出る前に散々教わったのに、結局面倒になってしまうばかりだった。


そして名前が来る度にキッチンを綺麗にして帰ってくれるので、キッチンは永遠に綺麗なままだ。


それに気づいた名前に毎回言われてしまうのだが。


「もう、私が教えた意味無いじゃんか!」


「結婚したら作ってもらうからもういい。」


「諦めんな!?」


そう言って湯気がほわほわたっているカレーを手に歩いてくる名前。


匂いから食欲がそそられる。


「ポークカレー?」


「もちろん!飛雄の為のポークカレーだよ、温玉もありますぜ!!」


「でかした。」


「上司か??」


今日も軽く言い合いながら、席に着く。


「いただきます。」


「いただきます!」


スプーンを手に取り、カレーを口に入れる。うっめぇ……宮城にいた頃も思ってたけど、東京に来て、離れてからは更に思う。やっぱ名前の飯が1番だ。


「美味しい?」


「ん、やっぱ1番好きだ。」


「ポークカレー?ずっと好きだもんねぇ。」


「カレーもだし、名前の飯が。」


「それは大袈裟でしょ、大人になって色んな美味しいもの食べてきたでしょ?」


俺がこう言ってもいつも軽く流される、本当の事なんだけどな。


◇

お互い風呂に入ってきて、欠伸が出る頃


「そろそろ寝るか?」


「うーん……そうしようか」


2人並んで寝室へ向かう。飛雄のベッドはめっちゃでかいので2人並んで寝ても余裕なのだ。


ぼふん、と体を埋めて幸せを感じる。こんなふわふわのマットレス私も欲しいなぁ。


「このベッドいくらしたの?」


「あー………忘れた。なんで?」


「このマットレス欲しい。ふわふわ。」


「お前の部屋に入んねぇだろ。」


「うっせぇ!!!」


「あ!?」


誰もがこんなクソデカ広い家に住んでると思ってんじゃねぇぞこの野郎!!


そして始まる取っ組み合い。もはや勝てる気はしないけど、これを辞めれる気もしない。短気なのはお互い様なのであるー……。


「掴まえたぞ!!」


「ぎゃあ!!」


ぜいぜいと息が上がってベッドに組み敷かれる私と、息ひとつ乱れず私の両手を拘束して上にのしかかる飛雄。


こ、これが……アスリートの力か……!?


「お、大人気ない!!」


「お前の方が大人だろ。」


「そっちはアスリートだもん!!私はただの会社員!!」


「うるせぇ、最初に飛びかかってきたのお前だろ。」


「だってムカついたんだもん!!」


しょうがないでしょ、と続けようとしたが、


「うっせぇ、少し黙れ。」


と言った飛雄にちゅーされて続けられなかった。


何度も何度も角度を変えて重ねられる唇。


飛雄が満足して体を離す頃には、息も絶え絶えで顔は燃えそうな程に熱くなっていた。


「……その顔、すげぇそそる。」


「へ、変態!!何言ってんだ!!」


「名前、」


「何!?」


「したい。」


「…………飛雄はやり方なんて知らないでしょ。」


AVだって見たことないに決まってる、こんなバレー馬鹿。


「やり方は調べた。」


「調べた!?」


「だから任せろ。」


「任せられるか!!」


「じゃあリードしてくれよ。」


そう言ってまた顔を近づけられる、ちょっと待って!!と開いた口に舌をねじ込まれ、暴れ回る。


頭がぼーっとする……初めてじゃないの、飛雄。上手すぎないか。


とりあえず離せ!!と肩を殴り、体をひっぺ剥がした。


「んだよ。」


ぺろりと自分の唇を舐めた飛雄。色気の化身かよ……えっちすぎる。


「わかった、するから。ゆっくりしよ?」


「……ん」


「優しくしてね?無理やり進めないでよ?」


「……おう、優しくシマス。」


真面目にお願いする私を見て、ほんのり頬を赤らめ頷いた飛雄。


私はそれを見て、意を決して飛雄との行為に臨んだ。


飛雄、今から私はお前の童貞を奪う!!