※事後表現あります
陽の光で目が覚める。ここは……と周りを見回して、飛雄の部屋だと思い出す。
隣で寝ていると思い、横を向くと姿は無く、
飛雄は既に寝室を出てしまったようで、残っていたのは飛雄の微かな温もりとふんわり香る飛雄の匂いだった。
涙と汗でぐちゃぐちゃだった顔も体もすっきりしていて、全身綺麗にしてくれたんだ。と恥ずかしいような嬉しいような気持ちになる。
沢山泣いたからか、喉がカラカラで死んでしまいそう。キッチンに行こうとベッドから起き上がろうとした時、
「いっ………っ!?」
あまりの激痛に再びベッドに戻ることとなった。痛んだのは腰。昨日散々掴まれ突かれた腰だ、どう考えても過労である。
こんな状態じゃ1人で歩けないじゃないか……と考えたところでもう1つの違和感を思い出す。
「っあ、あー……っ!」
声が上手く出ない。これも昨日散々泣かされた為の過労だろう。負担かけすぎた、ごめんよ私の喉よ。
完全に飛雄の性欲を舐めていた。いや、性欲だけじゃない、体力もあそこまでだとは思ってなかった。
頭を抱えながら、ベッドに沈む。とりあえず自分でここから離れられない。服も無いし、腰は痛いし。
そして声も上手く出せない、呼べない。困ったなぁ…。
どうしよう、と考えていたら突如開かれる寝室の扉。
「………!…名前!!」
慌てて駆け寄ってくる飛雄。どうしたどうした。
「大丈夫か!?」
「う…ん…………おは……」
「声、出ねぇのか?」
コクコクと頷く。出ない事は無いが、凄く出にくい。
「悪ぃ……体は大丈夫か?」
声が出にくいので、返事が出来ない。せめてもう少し喉を潤したくて、
「み…ず……」
となんとか絞り出し、
「水か?ちょっと待ってろ」
飛雄に持ってきてもらうことに成功した。ごくごくと飲み、喉が生き返る!!
「あ、あー…」
「声、治ったか?」
「まだちょっと出にくいけど……なんとか大丈夫そう。」
「そうか……体は?」
「腰が重症だね…痛すぎて動けない」
「…………本当、ごめん。」
しゅん、と落ち込む飛雄。なんだか可哀想で頭を撫でた。
「…怒ってねぇのか?」
「怒っては無いよ。私も飛雄の事舐めてたなぁって思い知らされた!」
「……俺だって男だぞ。」
「うん、よく分かったよ……。」
何度も何度も求められて、最終的には……………?
あれ?最後どうなったっけ。体を綺麗にした記憶も無いのでそれは飛雄がやってくれたとして。
その前の記憶も無い。最中の思い出したくも無い記憶しかなくて、事後の記憶が全く無い。
「……あの、飛雄さん?」
「なんだ?」
「昨日の、その……事後の記憶が無いんですけど……」
「……………お前、最後気絶したからな」
「……は?」
気絶?
え、気絶とか本当にするもんなの?
私のそんなに多くない経験回数の中でも気絶するほどした事なんて勿論無い。友人達と赤裸々に話した時でさえ、話すら聞いたことない。
「ほ、本当に気絶?」
「たぶん……気づいたらぐったりしてて、意識無くて……何度も名前もう死んじゃうから、って言ってたから本当に死んだのかと思って焦った……」
いや死なんけども!!
それを真に受けるなんて可愛いやつだなおい!!
「いやいや、それは無いけど……ごめんね、ビックリしたよね」
「心臓止まるかと思った……。でもちゃんと息してたし、とりあえず体拭いて寝かせておいた。」
「ありがとう、ここまでしてくれたのは助かる。」
「でも、拭いただけだからちゃんと風呂入った方がいいと思うぞ」
「……でも腰痛くて動けないし」
「任せろ。」
「は?」
そう言うとこちらに近づき体を持ち上げようとする飛雄。
「ちょ!!ちょっと待って!!!服着てない!!」
「?昨日全部見たからもういいだろ。」
「いい訳ない!!ちょ!!離せ!!」
いい訳無いじゃん??何言ってんだこいつ。なんとか離してもらってベッドに潜り込む。
「自分で動けるようになるまで休んでる!!」
「……仕方ねぇな、明日には歩けるようになって貰わねぇと困るし。」
「………?………!そうだった。」
一瞬なんの事かと思ったが、明日は宮侑さんに会う為練習所まで一緒に行くことにしていたのだ。
飛雄といちゃこらし過ぎて動けなくなり行けません!なんて言えるわけねぇ、馬鹿野郎案件である。
「こんな状態にしちまって、悪い。優しくしたかったんだけど…。」
「初めてだから、加減出来ないのは仕方ないと思うよ……」
ここまでされるなんて私だって思ってなかったし、初めてだった飛雄はもっとびっくりだろう。
「……悪い。」
「もう謝らないの!!……その、飛雄は良かった?」
「……すげぇ良かった。初めてがお前で良かった。」
「……それなら良かったよ。体を痛めた甲斐がある。」
「ん、……今日はゆっくり休んでくれ。あ、服…これとりあえず着とけ。」
そう言うと大きめなTシャツを置いていく飛雄。
「リビングにいる?」
「いや、こっちにいる。1人だと暇だろ。」
そう言ってダンベルやらヨガマットやら色々持って寝室に戻ってくる。
飛雄のTシャツを着て、一応体は隠れる格好出来たのでなんとか起き上がり、飛雄がストレッチやトレーニングしている様子を眺める。
「?寝とけよ、辛いんだろ。」
「痛いけど、暇なんだもん。なんかしようよ。」
「なんかって?」
「んー……しりとりとか。」
「…お前成長しねぇな。」
「んだと!?」
「ほら、やんぞ」
ダンベルを置いて、ベッドに座る飛雄。近くなった距離に今日も顔が良いな。と少しだけきゅんっとした。
赤くなった顔を見られたくなくて、ベッドに横になり、飛雄の視界から消える。
「じゃあ、しりとりのり!」
「りんご」
「ゴリラ!」
久しぶりにしりとりをやると意外に盛り上がる、お互いムキになって、笑いあって、悔しがって、時間はあっという間に過ぎた。
とは言え、曲がりなりにもピロートークと言うには、幼稚すぎるなぁ。