「おつかれっした!!」
「「「っした!!」」」
「おい澤村。あの人誰だよ」
「あっそうか、今日コーチと先生後から来たから……影山の幼馴染だそうです」
「幼馴染ぃ?なんで来てんだ」
「なんかチームメイトと仲良くやってるか見に来たとか」
「まるで親御さんですね……」
「実際家事やらなんやら面倒見てる人らしくて、親みたいなものなんじゃないですかね?」
「なるほど、…挨拶してきましょうか、烏養くん」
「あぁ、そうだな」
「あの、」
「はい?」
「今年度から顧問を務めています、武田一徹と申します。影山くんの保護者という認識で正しいでしょうか……?」
「あ!わざわざどうも!!はい!大体保護者です!」
「俺はコーチの烏養繋心だ、よろしくな」
「はい!苗字名前と申します。いつも飛雄がお世話になっております!」
「苗字さあああん!!」
「お、誰かが呼んでる。誰誰。」
「日向だな、ほら行ってやれ」
「はい!日向くううん!?どしたああ?」
「影山はなんでこんなに横暴なんですか!!」
「うっ……痛い所をついてくるね日向くん」
「ずっとこんなんなんですか!?」
「いやいや!!中一くらいまでは可愛かったよ!!いや!!今も!!今も可愛いよ!!飛雄おお!!」
「うっせぇよ!?可愛いなんて言うんじゃねぇよ!!」
「でもね、中二ぐらいから思春期が激化してね……あの頃は大変だったなぁ」
それから高校に入るまで飛雄は辛い時期だった。これから先生きていく中でも何より辛かった時期になるかもしれない。
「その思春期がまぁ、お分かりになられるように現在まで続いているんですがね?これが中々クソガキなのよねぇ……」
「横暴かどうかは知らねぇけど口の悪さは名前譲りな自信がある」
「なんだと、やんのかコラ」
「苗字さん……そういう所なのでは……」
「な、なんだと……!?」
「影山はさ、苗字さんに育てられたようなものなの?」
「……微妙な感じっす。親も勿論いるし。でも勉強教わったり、飯食べさせてくれたりなんだかんだ1番一緒にいたのは名前だなって感じです」
「もっと感謝してもいいんだよ?」
「………こういうとこがムカつくんですけど」
「あはは!!でも仲良いんだなぁ。そう言えばなんで俺の事名前言う前に知ってたんですか?」
「あ!そうそう、これ見て?」
「うわ!すげぇ!!」
「これ俺っすか?俺っすか!?」
「田中って書いてあるだろ……お、これ俺か!」
「飛雄から聞く話を元に似顔絵と特徴まとめてたの、だからね菅原くんは泣きぼくろでわかったよ!」
「なるほど!……と言うか影山が俺達の話を家でしてくれてることに泣きそう」
「「わかる」」
「そ、そんな沢山話してる訳じゃないっすよ!?」
「嘘こけ、家帰ったらずーっとバレー部の話してるくせに」
「黙っとけ!!」
「ひええ!!……あ、今日車で来たから飛雄も一緒に帰ろ?」
「近いのに車で来たのか」
「BBAには辛いんすよ」
「しょうがねぇなBBAは」
「うっせぇ!!」
「!?自分で言っただろうが!」
「………あの二人言い争いしながら一緒に帰ったよ」
「仲良いのか悪いのか……でも影山にあんななんでも話せる美女がいたとは驚きだな」
「なー……ちょっと羨ましいかも」
「わかる」
◇
「もう勝手に来んなよ」
「え?また行くよ?」
「何で来るんだよ、今日見てわかっただろちゃんと上手くやってる。」
固ゆで卵を乗せたポークカレーを一緒に食べる。両家の親はきっと名前が俺に怒ったのだと理解するだろう。
「それはわかったよ!でも皆面白い子達だったしまた会いに行くよ!」
「……来なくていい」
今日の様子を思い出す。名前が来た時に話していた澤村さんや菅原さん。それに日向や田中さん西谷さん。皆顔を赤くしていた。
確かに名前は自慢出来るぐらい綺麗だ。だけどそれを見て好意を寄せられるのを見るのは面白くなんかない。
「なんでそんなそっけないのさぁ」
食後にアイスを食べ始める名前
「太るぞ、動かねぇのに食べると」
「うるさいわねぇ!?今そこまで太ってないからいいの!!これ以上太ったら考えるけど……」
「太ったら一緒に走ってやるよ」
「上から目線でムカつくからいらない」
「なんだと?」
「やんのかこらー?」
俺と話している間に、持っていた棒付きのアイスが溶けていく。液体となって名前の手を伝っていた
「おい、溶けてんぞ」
「え?……うわぁ!?」
「あぁ、もう暴れんな!」
べろりと名前の手を掴み、手ごと舐める。こう言うのソファー落とすと怒るのは名前のくせに、自分はぼけーっとしやがって。
「ほらさっさと食べろ」
手に垂れた部分を全て舐め取り、名前の手を名前の口元へ運ぶ
しかし食べ始めない、どうしたんだと顔を覗き込めば
「………飛雄、そういう事姉ちゃん以外にやっちゃ駄目だからね」
「は?やらねぇよ」
むっと口を突き出し、そっぽを向いた名前。何怒ってんだ。
「なんだよ、怒ってんのか?」
「怒ってない!!」
「はぁ?じゃあさっさと食べろよ、また垂れるぞ」
そう言うと慌ててアイスにかぶりつく名前。
「……飛雄に好きな子出来たらやってもいいよ」
「何が?」
「さっきの……舐めるやつ」
「やらねぇよ。名前だからやんだろ、何言ってんださっきから。」
「…………そっかぁ」
さっきから意味がわからない、今までだってずっとこの距離感だろうが。むしろこの距離感で我慢してきただろうが。
ふふふ、と笑った名前を見て俺は首を傾げていた。