でも、今だけは。
静かに、音を立てないように腕を上げ、近づけていく。
そのまま下がっている顔を見るために真っ黒の髪の毛をすくい上げた。思っていたよりもさらさらで、シャンプーの匂いがふわりと鼻をくすぐる。
髪の毛を持ち上げたことによって見えにくかった表情がわかるようになる。いつも見ているハシバミ色の瞳は見えず、穏やかな寝顔だ。夢を見ているのか口をかすかに動かしていて、不覚にも可愛いと感じる。
ずっと見ていられる、いや、見ていたい。そんなことを考えていると固く閉じられていた瞼がぴく、と動きやがてうっすらと目が開いた。
「ベル...」
まさか起きてしまうなんて思わなくて、しかも私だと既に気づかれている。驚きで動けないでいるとジェームズさんの意識がはっきりしてきたのか髪をすくい上げていた私の腕を彼がつかんだ。