++イエス以外要らないから/舞田類



「Before I met you, my life was empty. You complete me. I want you to be my wife.
Will you marry me?」
「うわっ!」

 The 虎牙道とS.E.Mの共同撮影。今回はウエディングということで、虎牙道は和装、セムは洋装での結婚式をイメージしている。和装にしても洋装にしても着替えるのに時間がかかるよなあ、そんなことを思いながら今後のスケジュールを確認していたときだった。にゅっと舞田さんが現れて、跪くように指輪を差し出すポーズをする。それに思わず驚いて肩が飛び跳ねると、舞田さんは名前ちゃんリアクションが大きいね!、と笑われてしまった。そんなきらきらした夢に描いたような王子様然とした人が目の前に現れたら驚くに決まってるし、その人からいきなりプロポーズの言葉を言われたら更に驚くに決まっている。

「それにしてもすごいプロポーズの言葉ですね……。君と出会う前、僕の人生は空っぽだったけど、君が僕を満たしてくれた。僕の奥さんになってください。僕と、結婚してくれませんか?、だなんて」
「ya! 名前ちゃん流石だね! listeningも完璧!」

 メイクも髪の毛のセットも他の人よりも早く終わったらしい舞田さんは、タキシードって結構苦しいんだね、と襟に少し触れた。

「何だか着られてるみたいでやだなあ。ミスターはざまとミスターやましたはlook amazingだったのに!」
「舞田さんも十分似合ってると思いますけど」
「Really? 今俺からプロポーズされたらOKする」
「しますします」

 そんな軽口を笑いながらたたき合う。
 髪も服装もきちんとセットしたばかりだから、彼は耳近くの髪に触れそうになってあっ、と声を上げた。ワックスで固めた髪に触れられず、んん、と唸る。

「名前ちゃん」
「何でしょう」
「今回の撮影のさ、プロポーズの言葉ってどうすればいいかな」
「あれ、舞田さん何個か考えてたって言ってませんでしたっけ」
「Of corse! でも自分で考えてるだけだとちょっと不安になっちゃって。今までしたこと無いし」
「確かにそうですね……。自分で客観的に評価するって難しいですし」
「だから名前ちゃんに聞いて貰って、judgeして貰いたいなって」
「良いですけど……」

 この撮影をするにあたって、一番の難所はプロポーズの言葉やその時の動作だとは感じていた。彼ら自身としても未知の体験(もしかしたらしたことがある人がいるかもしれないけど)、いくら結婚関連の雑誌やそれに関わるサイトを見ていたとしても、一朝一夕でそれを体得するのは難しい。それに加えて、今回の撮影は個人に向けてのプロポーズを想定しているわけではなく、不特定多数に向けてのものだ。使用される語句は自ずと限られてくる。

「何個か考えてきたから、名前ちゃんに良いか悪いか教えて欲しいな」
「了解です」

 これからもずっと俺と一緒に居てください。世界中の誰よりもあなたを愛しています。必ず君を幸せにすると誓うから、俺と結婚してください。俺は君を選ぶから、君も俺を選んでください。
 何個か彼がプロポーズの言葉を言ってくる。模範的な言葉だ。良いんだけれど、彼らしいと言ったら少しだけ首を傾げてしまう。

「もっと舞田さんらしい言葉で良いと思いますよ。英語混じりの、いつも通りの」
「Really? もっとseriousにしなきゃいけないかなって思ってたんだけど、俺らしさも大切ってこと?」
「そういうことです」

 うーん、と彼が悩む。
 そんな彼の後ろから、ばっちりとメイクと服装を決めた二人が登場する。るい早いな〜、と山下さんが辟易とした表情で言った。どうやらだいぶタキシードが堪えているようだった。真剣に考えている彼には悪いけれど、硲さんと山下さんの準備が終わったので、撮影場所に行こうと彼の腕にちょんちょん、と触れる。すると突然がしりと手を掴まれ、くるりと手の甲を向けられる。

「この先に、君と歩きたい未来がある……一緒に描きたい、夢がある。……世界で一番、君を愛してる……。please marry me, my princess?」

 彼は少しかがんで、私と目線を逸らすこと無く手の甲に口づけを落とした。突然のことに頭が混乱している。おじさんたち邪魔だった?、と山下さんが呟いた。

「ミスターたちもどう? very goodなプロポーズじゃない?」
「素晴らしいプロポーズだ、舞田くん。所作や目線も素晴らしい。ぜひ参考にしよう」
「今息止まっちゃったよ……若いってすごいねえ」
「名前ちゃんは?」

 どう思う?、と彼が尋ねる。流れるように屈んだ。少し上目遣いに見る、不安げで、だけれど幸せに満ちた表情。迷い無く口づけをする姿も、甘いプロポーズの言葉も、その全てが何だか夢を見ているようで実感が湧かなかったけれど、再度彼から尋ねられたことで現実に引き戻される。徐々に顔に熱が集まっていくのを感じた。練習のはずなのに。やばい、としか言えない。
 成功じゃん、と山下さんが口笛を吹く。答え、教えてくれる?、と舞田さんが追い打ちをかけるように私に尋ねる。イエス以外の言葉を思いつかない。






お題箱より。プロデューサーちゃんに好き好きアピールをする舞田類。
20170826




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