++きっと今年も素敵な一年/桜庭薫





 三が日を過ぎると初詣に神社に参拝する人も少ない。三が日はテレビの出演に引っ張りだこで、初詣に行く余力が全くもって無かった。そこで初詣というには少し遅いけれど、今日、ようやっと神社に来ることが出来たのだった。
 石畳の真ん中は神さまの通る場所。雪が薄らと積もった石畳の、端っこを歩く。お水で手を清めて口をゆすぐ。はあ、と息を吐くと白く曇る。隣の彼は、決して薄着なわけではないのだけれど、とても寒そうに見えるんだよなあ。そんなことを思いながら視線を遣ると、彼も気が付いたようだった。どうしたんだ?、そう言いたげにまた私に視線を投げる。それになんでもないです、と言った。拝殿前で二人並んで軽くお辞儀をする。お賽銭を入れて、鈴を鳴らした。二礼二拍手、そこで、昨年は大変実りある年であったこと、今年もそう出来るように頑張りたい、ということを念じて、また一礼する。少し前に315プロ全体のライブがあったから、それが成功するようにと参拝して、それのお礼参りをしてぶりだから、こうやって参拝するのは久しぶりだった。幼い頃から何度もしているはずだけれど、いつまで経っても慣れないものである。

「何かお守り買います? あとおみくじ」
「この場合は商売繁盛なのか?」
「確かに……。あー、健康守じゃないですか? 身体資本ですし」
「君はどうするんだ?」
「うーん、と健康守と、あと交通安全……皆さん乗せること多いし事故したくないので……」

 どうしようか、と二人で吟味する。結局同じ健康守と、あと淡い色の可愛らしい交通安全のお守りと、おみくじを二つ買った。
 しゃかしゃかと棒を取り出して、その書かれた番号のおみくじを貰う。

「でも意外です。薫さん、お参りなんてしないような気がしてましたし、あんまりおみくじとかお守りなんて信じないような気がしてたので」
「ああ、そもそもおみくじの結果で一喜一憂するのは馬鹿馬鹿しいし、自分の体調を管理するのは自分だろう」
「うわ、中々痛いことを……あ、吉だ」
「自分のことはともかく、他人のこととなれば話は別だ。神頼みするしか無いときもある」
「あ、私盲腸で入院したとき、皆で行ったんでしたっけ?」
「なぜそれを……」
「あはは、天道さんに聞きました」

 天道、と薫さんが呟く。それにくすくすと笑う。天道さんによると、薫さん眉を寄せながら真剣に手を合わせていたらしい。
 待ち人、来ず。恋愛、誠意を尽くして接せよ、縁談、他人の言うままにしてよし必ず叶う。これはどうなんだろうなあ、と思いながらくくりつけた。薫さんはどうですか?、と尋ねれば、大吉だ、との返答だ。

「薫さん、何念じたんです?」
「……君は?」
「昨年は大変実りある年でありがとうございました、今年もそうなるように頑張りますって」
「なるほど」
「え、待ってください、これ薫さん言わないんですか?」
「何も言うとは言ってないだろう」

 彼の手が赤くなっている。寒そうだな、そう思いながら指に触れると、びくりと震えて、だけれど指を絡めてくる。写真撮られるかなあ、そんなことを呟けば、撮られたときに考えればいい、とのこと。
 結局薫さんは何を思ったんだろうなあ、それを考えていると、彼の耳が赤くなっていることに気が付いた。私関係ですか?、ちょっと鎌を掛けてみる。すると、ためにためてそうだ、との返答が返ってきた。薫さんも可愛いところあるんだなあ、とちょっと思ってふふっと笑ってしまった。

「……昨年は君に出会えて良かった。今年は、」
「今年は?」
「いや何でも無い」
「そこで止められると気になるんですけど……!」

 




初詣に行く桜庭薫
20171231


- 53 -

*前次#
ALICE+