++台詞から始まる掌編1


岡村直央、神楽麗、山下次郎、木村龍、伊瀬谷四季、葛之葉雨彦



「一本ください……!」
 直央くんが口をあーん、と開ける。そこに私はチョコレートがプレッツェルにコーティングされているお菓子を一本入れた。しゃくしゃく、と小動物のように食べる姿が可愛らしい。美味しい?、と尋ねれば、彼がとっても!、と言う。そんな姿が可愛らしくて、もう一本、もう一本と口の中に入れてしまうので、直央くんが少し困り顔だ。いっぱい食べて大きくおなりね。



「アルコールのにおいがする」
 眉根を顰めながら彼が言う。私は合点がいって、ああ、と頷いた。休憩の時に食べたチョコレートがほんの少し洋酒がきいていたのだ。そのことを彼に伝えると、なるほどと頷いた。貴殿はそういった甘味を好むのか?、それにあんまり強いのは苦手ですけど、と答えればなるほど、という返答。カレンダーの日付をちらりと確認して、お返しなんて気にしなくていいよ、そう言いたいけれど、してやったりとでも言いたげな彼の顔を見るとどうにも言えなくて困ったものだ。



「好きな人は?」
 首をこてんと傾げて、彼がふにゃりと笑いながら尋ねた。仄暗いバーカウンター。酔いが回って二人とも頭なんてどうかしてる。目の前に並んだ三つのショットグラスのうち二つは空だ。私は最後の一つに手をつけて勢いよく煽った。喉が焼ける感覚。好きなひとは、ふわふわとした脳みそが口を、舌を動かす。山下さんの目が笑っている。ねえ、カウンターの上、するりと彼が指先を絡めた。ずっと待ってた、口角を上げて彼が意地悪く笑う。今夜、そう言って確かめるように強く絡められた指に、少しだけ期待した。




「もっと近くに!」
 タケルくんにぐいっと肩を抱き寄せられて、ひっと蛙が押し潰されたような声が出た。車がすぐ脇を走っていく。筋肉質な腕に抱かれている。少し汗と制汗剤が混じったにおい。胸がざわざわする。すまない、と解放されたけれど、心臓がまだうるさい。ありがとうございます、少し片言になりながら彼にお礼をする。目はまだ合わせられない。



「この前、」
 ここ行ったよな、机いっぱいに地図を広げながら龍くんがそこを指さした。龍くんはロケのため、私はその付き添いという形で、アイドルと彼らを支える立場の仕事をしていると、やはり外に出る機会は必然的に多くなる。二人きりで旅行をするのは人目もあって中々厳しいけれど、日程が重なって仕事であってもたまたま一緒に行くことができるとなれば、喜びも大きいものだ。次はどこかなあ、そう嬉しそうな彼の姿を見ると、私も仕事取ってくるのを頑張らなきゃ、と決意がぐっと固まるのだ。



「死んでもいい」
 しゅうう、と顔を真っ赤にさせた四季が消え入りそうな声でそう言った。へなへなと崩れて、頭を両手で抱えながらしゃがみこんだ。いきなりちゅう、と不器用なリップ音を立ててキスをしてきたのはどこのどなたでしたっけ。帰り際人目を避けるように道の端にずれて私に覆い被さった。柔らかな唇の感触が生々しく残る。四季のあどけない目を閉じた表情も可愛らしかった。名前ちゃんだけ動じてないの、悔しいっす、彼がへにゃへにゃした声で言った。動じてないわけじゃないんだけどなあ、そう言うのはちょっと癪なので黙っておこう。



「眠いか?」
 ちょっとだけ、とあくびを噛み殺しながら答えると、雨彦さんが我慢しなくていいぞ、と言う。半分くらい彼に体重を乗せて、頭はふわふわしているし彼がかけてくれた毛布も暖かいし、もう眠くてしょうがないけれど、せっかくの休日なのだ。このまま眠って時間を浪費してしまうのも惜しい。んー、と唸っていると、どうせ夜は眠れないんだから我慢せずに今眠ればいいさ、とのこと。にやりと彼が笑う。このすけべ。



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