++俯瞰する



 気が付いたら死んでいてびっくりした。

 階段で足を踏み外した。両手に段ボール箱を抱えて、そのせいで満足に受け身を摂ること無く落下。下にアイドルが居なくてほっとした。どん、という音共に鈍い衝撃が打ち付けられた腰、肩、頭に直撃した。
 その衝撃音に気が付いたのだろう。なんだ、とガチャリとドアを開けた桜庭さんの姿が見えた。そして階下の床に力なく倒れている私の姿を見て、彼は大きく目を見開くと、同じくドアからぞろぞろと出てきた彼らに向かって一喝した。救急車を呼んでくれ、と。

「……名字、聞こえるか」

 名前さん!、と春名くんや悠介くんたちが血相を変えた。彼は私の体勢を変えること無く、肩の付近を軽く叩きながら意識確認をした。私はうんともすんとも言わない。その後、彼は私の呼吸が正常に行われているかを確認し、私の首筋に手を添えた。スマートフォンのライトで瞳孔の確認をする。奥の事務所では、天道さんの切羽詰まった声が聞こえた。事務所の場所、私の容態、それらを事細かに伝える。
 いやーやばいなあ、当の私は大変困り顔で頭をかいた。拝啓天国のおじいちゃん、人って死ぬと何かこう、一回魂抜けて自分でふよふよ好きなところに行けるようになるの?、そんなの今までフィクションでは何度とみたことあるけど、本当だと思ったこと無かったからすごく困惑してるよ私。真下には目を閉じて横たわる私。それを真上から眺める。そんな第二の私に気が付く人は誰も居なく。
 サイレンの音と車を通行規制する声が近くで聞こえる。わあ私の人生初かつ人生最期の救急車だ。何だか浮き足立ってしまう。物理的にも浮き足だって居るのだけれど。
 救急車のサイレンがとんでもなく近くで聞こえた。何せ事務所の目の前に停まっている。救急車の中からぞろぞろと隊員の方々が出てくる。桜庭さんが、私の意識が無いこと、呼吸と脈があること、頭を強く打っていることなどの詳細を話す。それらを聞いた隊員さんたちが、私を担架に乗せる。付き添いをどなたか、そう尋ねられると桜庭さんが手を挙げた。なんだか大変申し訳無い。桜庭さんが、天道さんに事務所のことを頼むと一言添える。
 流石に大人が何人も入ると手狭である。救急車の中ってこんな風になってるんだなあ、とぼけっと眺めながら救急車に乗りこんだ。





20180118
 



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