++いちゃいちゃしたいとかキスしたいとか言いたいこと全部酔っぱらって持っていくんだ/百



「名前ちゃん〜、ちゅー」
「はいはいおかえり」

 べろべろに酔ったモモちゃんの熱いペーゼだ。しぬほど酒くさいやつ。幾分も丈があるモモちゃんが私の体にぐてんと体重をかけて、後ろの方で腕を回す。唇と唇とがくっつきかけるけど、そのアルコールのにおいを回避したいばかりに、彼の頬をがっしりと掴んで引き剥がして、後ろの岡崎さんに頭を下げる。

「本当にいつもいつもお世話になって……」
「いえ、いいんですよ。これが仕事ですから」
「こんなに遅い時間まで、しかもこんなにべろべろに酔ったモモ運ぶの骨折れますよね………。本当にありがとうございます。ほらモモも」
「おかり〜ん、いつもありがとう」
「百くん、酔わないと名前さんとイチャイチャできないって言っても限度がありますからね。明後日の14時から打ち合わせがあるので30分前には迎えに行きます。一応その前に連絡は入れますが、忘れないでくださいね」
「それないしょって言ったのにぃ」
「しっかり言っておきます」

 お気をつけて、と岡崎さんを見送る。彼は随分な苦労人だ。こんな遅くまで仕事だし、リバーレの二人はこうなんというか自由気ままだ。それが彼らの持ち味でもあると思うんだけど、度がすぎると、ちょっと、なんというか、迷惑である。

「……名前〜」
「モモちゃんいちゃいちゃしたいのは分かってるから」
「そ〜、うれし〜」

 モモちゃん筋肉質だから見た目よりずっと重い。抱きついたまま離れない彼を引きずりながらリビングまで行って、ソファに彼を置く。ねえ何か飲む?、と彼に尋ねるけれど、いらないと首を振られる。仕方がなく私も腰かけて、彼のなすがままに首もとに顔を埋められてくすぐったい。

「名前ちゃん〜、ちゅう」
「はいはい」

 唇を尖らせてキスを迫るモモちゃんの仰せのとおりに。やっぱ酒くさいな、と思いながらそれを甘受する。ちゅっちゅっと可愛らしいリップ音だ。
 あ〜名前だ〜あいたかったあ、とぎゅうぎゅうに私を抱き締めてべたべたと触る彼の体温は熱い。仕事で付き合いがあることは分かってるけど、ほどほどにしてもらわないと。こんなにべろべろになるまで酔っぱらうのは健康的じゃない。
 見れば見るほど綺麗な顔をしているモモちゃんだ。ちゅうちゅう際限なくキスをしてくるモモちゃんに、ふとした疑問を投げ掛ける。

「――モモちゃんって、ユキさんともちゅーできるの?」
「え?!」

 モモちゃんがびっくりして目をまん丸にしている。こんなキス魔ならユキさんと同居してたときとかさあ、と言う。

「も〜、今ので酔い半分くらい覚めた……」
「いつから覚め始めてたの?」
「玄関で名前にキスせがんだ辺りから四分の一くらいは覚めてたよね」

 そこで覚めてたなら、キスをせがまないでほしかった。甘えたな恋人からキスをせがまれる絵を他人から見られるって恥ずかしいし。

「で、できるの?」
「できる、ね……。でもユキさん顔良いから目開けたままだとちょっと恥ずかしいかな」
「あ〜わかる〜。私も目閉じてならできる」
「そこは彼氏のモモちゃん以外とキスなんてできなあい、って言って欲しかった」
「いまから言おうか?」
「うん」
「モモちゃん以外の男の人とキスなんて出来なあい」
「完璧」
「でもユキさんから迫られたらたぶんすると思うモモちゃんごめんね」
「浮気者〜! あーでもわかるもんな……」

 ユキイケメンだし、と肩を下ろすモモちゃんにモモちゃんもイケメンだよ、と言うと知ってるありがと、と返される。しばしの沈黙、いや待って、とモモちゃんが言う。

「違う違う。こっからディープキスしてエッチする予定だったのに、どうしてユキとキスする話になってるの?」
「え、ごめんね」
「そうですぞ〜、名前がいきなり話振るから〜」

 今着てる下着何かな、とぺらっとシャツを捲る。ああこれか、と視線を戻すとモモちゃんが手で顔を覆っていた。隙間からしっかり見てるけど。

「名前のえっち!」
「するなら一応確認しておこうかなって。そんな言えばいいのに。したいって」
「オレとエッチしてください、って、そんな素面じゃ恥ずかしい〜!」

 真顔かつ低い声で言ったあとに、きゃ〜といつものようにはしゃぐ。それにやれやれと私もキメ顔を作って参戦する。

「モモ、抱かれてあげようか?」
「きゃ〜! すき! 抱かせて!」
「でもモモちゃんって性欲強くない? 私終わったあと腰バキバキになるんだよね」
「25歳男子だよ? これが普通です〜」
「そういうものかなあ……」

 腰回りを這う手のひらが熱い。彼なりに照れているのだろうか。じっと顔を見つめると、恥ずかしいからやめてよ、とはにかんで私の目を手で覆った。唇に唇が重なって、舌がそろりと入ってくる。酔いが覚めたと言っていたけれど十分にアルコールの味がする。飲んでないのに私も頭がぐらぐらしてきた。

「オレたちって雰囲気なくない?」
「今度は私が酔ってモモちゃんに迫れば良いかな」
「名前酔ったらすぐ眠くなるじゃん」
「今もちょっと眠い」
「じゃあ途中で眠くならないように激しめにしなきゃ」

 いつも以上は困る、と言いかけたところで口を塞がれる。ソファで一回、ベッドで二回だろうか。ぷちりと金具を外された。終わる頃には空が白んでなければいいのだけれど。









20190112



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