いっかい休み/秋月涼


 お世話になっている人に日頃のお礼も兼ねて何か渡すとしたら、何が良いと思いますか? 
 そう彼から尋ねられたのはつい2日、3日前のことだ。そのときはあんまり後に残るものもなんだし、お菓子かなあ、と無難に返した。お菓子ならそんなに重たくないし、あとお茶やコーヒーと一緒に飲むことも多かろうという考えだった。

「名前さん、どうぞ!」
「え、今日誰かの誕生日でしたっけ?」
「そういうことじゃなくて、いつも名前さんにお世話になってるから!」

 お礼です。そう言われてデスクに置かれたのは、カップケーキやプリン、クッキーといったお菓子だ。しかもそれらが明らかに市販品のようには見えなくて、目をぱちくりとしてると、彼が作ってきたのだと言うのでそれにまた驚いてしまう。

「カップケーキは、色んな味があるといあかなあってカップアイスを使って作ってみたんです。王道のバニラ、チョコとか、あと変わり種でモカコーヒー。プリンはかぼちゃとプレーンので、クッキーは紅茶味にしてみたんです」
「す、すごい……」
「えへへ、僕一人じゃこんなに作れないので、巻緒くんや咲ちゃんにちょっと手伝って貰ったりしたんですけどね」

 彼も元々、ケーキが好きだったりお菓子を作るのも好きだったりということは聞いていたし、その作ったものを食べたこともあるけれど。それにしてもすごい量なのだ。なにせ紙袋一つ分。モテる人がバレンタインで貰うチョコの量と同じくらい。
 彼が手間暇かけて作ってくれたものだ。もちろん食べたいと思うのだけれど、悲しいかな。胃にも容量というものがある。

「秋月さんごめんなさい……早めのお昼を食べてしまったあとで……」
「えっ」
「甘い物は別腹! 食べる、食べます!」

 すみません、とあわあわとし始めた彼に、私はそう言った。お茶淹れてくるね、と給湯室に向かいながら言うと僕がやります!、との返事。結局狭い給湯室中で二人並んでお湯が沸くのを待つ形になる。

「名前さん、最近疲れているように見えたから、気を遣うつもりが逆に遣わせてしまったみたいでごめんなさい……」
「そんなこと無いですよ。こうやって所属のアイドルたちとお話するのも、事務仕事ばっかりのときは良いリフレッシュになるし、あと糖分補給すると元気になるし」

 ぽこぽこと湧いたお湯を、ティーバッグが入ったマグカップに注ぐ。カフェパレードの面々が見たら、お湯の温度だとか淹れ方だとか、卒倒しそうな手順でしているけれど、今ここに彼らが居ないから良しとしよう。

「あ、何も考えずに二つ淹れちゃった。秋月さんも一緒に食べますよね」
「いや、でも名前さん作ってきたものだし……」

 ここだけの話、前月比1キロ増えてピンチなので一緒に食べましょう、こんなに美味しそうなの一人で食べたら絶対太っちゃいます。そう彼にこそっと言うと、そういうことならお言葉に甘えてお手伝いします、と笑いながら言った。







20170926

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