筋肉痛/Jupiter
「名前さんっ!」
「ッいぎゃ!」
カタカタとキーボードを打つ手前、御手洗さんがどん、とのしかかってきて蛙が潰れたような声が出る。力が加わった場所がガクガクと震え始める。筋肉がびりびりとする。御手洗さんは軽いといえども、今の状態でのしかかられると大変まずい。あ、あの、と震える声で彼に話しかけると、なんか様子おかしいね?、と中々彼が鋭いことを言ってきたのでびくりとする。
「すみません、あの、いま筋肉痛で……」
「またどうして?」
「昨日、ハイジョーカーの早朝のトレーニングに付き合ったら物の見事に……」
「へえ、」
大変そうだねえ、とそんな素振りを一切見せること無く彼が言うと、再度のしかかってきた。二の腕も痛いし脇腹も痛いし、太ももも痛い。首も痛い。もう全身痛い。私は再び蛙の潰れたような声を出してしまう。
「あ、ほんとだ。シップのにおいする〜」
「御手洗さん、ほんと、まじでやばいんで、やめてくださっ……、い゛っ!」
後ろからぎゅー、と背中を押されてデスクと御手洗さんに挟まれる。襟に顔を近づけられるのも、健康時ならアイドルが背中にのしかかってくれてる最高、と手放しに喜んでるはずなのに、この筋肉痛のせいでまったく喜べなかった。弱点を見つけたぞと言わんばかりに、後ろで彼がにやにやと笑っている姿が想像できる。今首を動かせないから想像でしかないのだけど。
「あはは! 名前さん面白い〜!」
「笑い事じゃないです!」
「──何やってんだ?」
ばたん、と事務所のドアが開いて天ヶ瀬さんと伊集院さんとが現れる。ほら翔太忘れ物、とコートを伊集院さんが掲げた。
「名前さん筋肉痛なんだって。痛くてぶるぶる震えてる名前さんいじるなら今だよ!」
「ちょっと御手洗さん鬼すぎません?」
「だって珍しいんだもん!」
「おい翔太、あんまやりすぎんなよ」
ほら柔軟しよ、柔軟、とぐいー、と彼が背中を押す。痛い!折れる!、と喚いてもなお、彼は止めないのだから本当にやばい。
「冬馬くんも北斗くんも!」
「確かに名前さんが参ってるの、珍しいな」
「ちょ、と! 天ヶ瀬さん!」
「面白い……」
「うああ、び、びりびりする……!」
つんつん、と天ヶ瀬さんがこれを機にと言わんばかりに腕を突く。二人からいじめられて満身創痍だ。自分の日頃の運動不足をこれほどまで後悔したことがない。
「二人とも、名前さんあんまり虐めたら可哀想だろう? 名前さん、何か飲みますか? それだと立つのも辛いですよね」
「すみません、冷蔵庫からお茶を……」
「北斗くんだけ株上げる行動するの酷くない? 一緒にしようよ!」
「まあ、あとでね」
「あとで?!」
20171111
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