寝起きどっきり/High×Joker
アイドルと言えば寝起きどっきりだと思っている節がある。寝ていた場所が実はステージの真ん中で、起きると共に観客席が突如現れて曲が流れてそのまま踊るみたいな。流石にあれぐらい大規模には出来ないけど、普通にカメラを持って寝起きの姿を撮るというのもオフショット的には大変良いのではないだろうか、本人たちに了承がとれてかつ面白ければ写真集のおまけコーナーやライブの特典映像に忍び込ませることが出来るし、それが無理でも事務所のアルバムの中に入れることが出来る。どちらにしても本人たちにいい思い出になるかなあ、と思いながら前日、カメラを鞄に置いて、朝5時半にアラームをセットして眠った。翌朝は9時半集合だと伝えてある。まあ起きるとしても7時くらいなのでは、と高をくくってハイジョの面々が居る一室にお邪魔するそのはずだった。
ぴぴぴぴ、とアラームが鳴る。布団から腕を伸ばして、唸りながらそれを止めようとすると、阻むようにその手が重ねられる。そして私がそれを止める前に止められる。誰かいるのか、もの凄く嫌な予感がした。
「──ハイ、ハニー。お目覚めはいかがっすか?」
「ひいいい!」
隣に四季が居て、片肘をつけてベッドに横たわっていた。顔面がやばい。カンストしている。どうして朝なのにこんなに格好いいんだろうおかしい、神さまが二物を与えているとしか考えようがない。
情けない声が口から出る。暑くて半分蹴り飛ばしたお布団を限界までたぐり寄せると、あっ二度寝はだめっすよ、と四季が布団を引き剥がそうとするので、必死に抵抗する。今の私、何を隠そうすっぴんである。しかも彼が居たのか分からないが、暢気な寝顔を見られたことに大変ダメージが大きい。立ち直れなかった。
どっきり大成功〜!、と五人の重なった声が聞こえて、あはは、と笑う声がまばらに聞こえてくる。
「……僕は反対だったんですよ。女性の部屋に忍び込むなんて」
「俺も……」
「あー! 二人ともずるいっす! 結局着いて来たじゃないっすか! しかもジュンっちカメラ持ってるし!」
恐る恐る布団の隙間から彼らを見る。四季だけではないと思っていたが、まさかこの一人用の部屋に五人も集まると手狭である。辛い、その一言が口から自然に漏れる。旬くんの手には、私が持ってきたカメラが握られていた。
「集合時間遅かったし、名前さん事務所のカメラ持ってきてたし、あと予備のカードキーも念のためって渡したし渡されたから、これ絶対寝起きどっきりあるなあ、って思ったんだよね」
「昨日の夜、だったらオレたちが先回りして逆寝起きどっきり仕掛けたら面白くないかって思ってさ。名推理だろ?」
「……みんなの妙に勘の良いところ本当にきらい」
よく見れば五人ともホテルで貸し出されている浴衣のままである。起きがけすぐにここに来たのが分かる。春名があくびを噛み殺しながら戻ったら寝るかー、と言った。それに旬くんが今二度寝したら起きれなくなるので諦めてください、とぴしゃりと言い放つ。いまだ図々しくも私のベッドに寝ている四季も、髪の毛がセット前のようだった。ちらりと布団の隙間から見ると、二度寝しちゃうっすか?、とこてんと首を傾げながら聞いたことがない甘い声で言ったので、どこで覚えてきたんだそれ、と眩暈がした。女性ファンなら、いや男性ファンもイチコロにちがいない。現に私は心臓を穿たれて死んでいる。
名字名前、取れ高が私ひとりの寝起きどっきり映像という収穫の無さにめげる女じゃない。一気に頭が覚醒した。仕事モードだ。
「伊瀬谷さん、さっき私に言ったこと、もう一回言ってください」
「ええっ!」
「録ります」
「そんな恥ずかしいっすよ……!」
「私に逆寝起きどっきりを仕掛けたことが運の尽きだったと思ってください」
枕元のスマホを片手に私が言う。シキ恥ずかしがんなよ−、と若里さんと秋山さんが茶化す声が聞こえて、あなたたちもするんですよ、と言い放つとそれがぴしゃりと止まった。
「……特典映像に、絶対入れます」
映像を入れるのは今度のライブのDVDのにしよう、あと店舗特典の写真にしてしまうのも良いかもしれない。腕の鳴りどころである。
勘弁してくれよ〜、と若里さんが言うが、他の三人は既に諦めモードである。頭を抱えながらシキくんのせいですよ、と冬美さんがお怒りだ。
20180521
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