4/9お日さまこんにちは

「ほら、起きないと遅刻するよ」
「んー、やだ……」
「やだじゃなくて」
 ゆさゆさと彼が布団ごと私を揺さぶる。さんさんと輝く日光をこれでもかと降り注がせるために開け放れたカーテンが恨めしい。私は顔を顰めながら布団を頭の上まですっぽりと被って、布団を縮こまらせた体に巻き付けてミノムシのようになる。
「今日は早めに行くって言ったの、君だよね」
「むり……前言撤回……」
「無理じゃない。ほら起きないと」
「いつもと同じ時間、行く……」
「なんで起こしてくれなかったの、って君が言っても俺のせいじゃないからね」
 彼が諦めた。二度寝ほど幸せな時間を私は知らない。ぬくぬくとした布団が心地よくて、すぐにとろとろと睡魔が襲って来る。昨日の私は今日は早めに行って余裕で仕事を始めるって豪語したけれど、むりだった。そのまま眠気に身をゆだねていると、いきなり布団をはぎ取られた。
「まって寒い!」
「ほら起きる」
「むり!」
 こうなったら、と彼が言うと私のお腹や脇の下をくすぐり始める。それに耐えきれなくなって、足をばたばたとさせながら彼から逃れるようにベッドの上をごろごろと転がる。それに彼もしっかりとついてきて、私が転がって手が届かなくなってもくすぐり続ける。私はもう耐えきることが出来なくなって、ぜーぜーと荒い息を吐き出しながら「降参! 起きる! 起きるから!」と言うとぴたりとその攻撃が止まって、今日も勝った、と彼がにんまりとした顔で言った。というのも、こうやって彼から起こされると私が起きなかったことが無いのである。私が全敗なのに対して、彼は負け知らずで全勝である。ここまで偏った戦歴だと彼が何かずるをしているのではないかと思ってしまう。
「……おはようございます」
「おはよう。もう朝ごはん出来てるよ」
 酷い顔、と彼が笑う。彼に朝から負けて機嫌がすこぶる良くない。そんな私の表情を見た彼が、何か思いついたように口を開く。
「今日のお味噌汁は、わかめと玉ねぎだよ」
 途端に背筋が伸びる。昨日食べたいっていったのを彼はしっかりと覚えていたらしい。



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