5/15 指ごと

 ドレッシングを作ったけれど、目分量なのでいつもと同じ味になっているのかさえも分からない。ついでにこれが甘いのかしょっぱいのかがよく分からない。私は小首を傾げながらもう一度舐めるけれど、それも徒労に終わる。こんな時に役に立つのは私の舌ではなくハルトさんだ。
「ハルトさん」
 リビングでテレビを見ている彼を呼ぶと、彼も何が求められているかは分かっているよで、真っすぐとキッチンに向かって来る。
「今日のお仕事はこれです」
「ドレッシング?」
「の味見」
 甘いのかしょっぱいのか、ちょうどいいのか分からなくて、と言えば、彼が分かったと返答する。味見よろしくお願いします、とスプーンを取り出そうとしたところで、彼ががしりと私の手首を掴む。そしてそのまま攪拌してボールに入ったドレッシングに私の指をつけると、自分の口の中に入れる。俺はちょうどいいと思うけど、と彼が言う。スプーンに手を伸ばそうとして結局取れなかった左手が宙を彷徨っている。いや、味見は合ってるんだけどそういうことじゃなくて。

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