最近のレイちんは少し変だ。室ちんと話してるときとか、室ちんと一緒にいるとき、少しだけ嬉しそうに笑うのだ。それは室ちんも同じで、まるで二人は恋人みたい。けど生身の人間と幽霊で、そんなこと許されるはずがない。

「禁断の恋愛ってやつ?」
「!?い、いかがなさいましたか敦さん」

びっくりして跳ね上がるおばけ、レイちん。頭が少し天井にのめり込んでいて、ちょっとホラー。

「レイちんさ、未練の手がかり何か見つかった?」
「…いいえ」

レイちんが眉を下げる。
レイちんが記憶のないまま彷徨っているのは、きっとこの世に未練があるからだ。それがオレと室ちんの意見だった。レイちんが未練を思い出して解決すれば成仏できるはず。レイちんはあっちこっちに行って手がかりを探してるみたいだけど、中々見つからないみたいだ。というか最近あんまり探してないみたい。呑気なおばけだなって、そう思う。

「学校は?」
「敦さんの?まだですね」
「じゃあ一回来てみたら?レイちん年近そうだし」
「私は学生だったんですかね」
「…生きてたらさ、レイちん」
「はい?」
「室ちんと、恋人同士になれたのにねー」
「なっ!」

叫ぶレイちん。

「わ、私っ!そんな、」
「自覚無いの?」
「違います!そんなこと、絶対無い…」
「室ちんと喋ってる時のレイちんさ、すっごい嬉しそうだけど」
「た、確かに辰也さんは優しくて、その、お話しするのも、楽しいです…けど」
「オレは?」
「敦さんもお優しいですよ」
「じゃあさ、オレと室ちんと、レイちんの中でおんなじ気持ち?」
「へ?」
「レイちん、オレと話しててドキドキする?」

ぽかんとしたレイちん。胸に手を当てて考えこむ。

「…違う。違います、私、敦さんにはその、申し訳ありませんが、ドキドキしません」
「ひどいねレイちん」
「す、すみません」
「ん、いーよ。で、室ちんにはドキドキする?」
「………あ、」

胸に当てた手を口に持っていって、ふんわり微笑むレイちん。幽霊だけど可愛いなって、単純に思う。

「私、辰也さんとお話しているとドキドキします」
「それが恋ってやつじゃない?」
「敦さん、何だか乙女みたいですね」
「はぁ?」

くすくす笑うレイちん。頬っぺたが色濃くなっているから、多分照れてる。

「笑わないでよ」
「ふふ、すみません」
「せっかく気付かせてあげたのにー」
「感謝、しています」

一礼するレイちん。

「何だか心が軽くなったような気がします」
「体も軽いけどねー」
「ひどい」
「お返しだしー。でもねレイちん」
「はい?」
「室ちんのこと好きすぎるからって、本物の幽霊になっちゃ駄目だよー」
「…………」

よくテレビで見る女の幽霊は、だいたい嫉妬とか汚い感情で血みどろの怨霊になってる。今は優しいレイちんがそうなるのは、オレも、きっと室ちんも嫌だ。

「…大丈夫」
「?」
「この想いは、私に肉体が無いばかりに叶いません。彼は生きていて、私は死んでいる。死人の片想いなんて馬鹿馬鹿しい話じゃありませんか」
「………」
「大丈夫です、私は私がこのまま、彼を好きなまま逝けるように、未練を見つけますから」
「…あっ、そ」
「それまでもう暫く、お邪魔いたしますね」
「別にいーよ。好きにすればー?」
「ふふ、ありがとうございます」

レイちんはそう言って、いつもみたいに消えていった。

「多分片想いじゃないけどなー」

レイちんと話す室ちんの顔。あれはきっと─

「あー、めんど」

もしかしたらレイちんの未練の手がかりは、案外近くにあるかもしれない。でも今はそっとしておくことにしよう。

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情交と街