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───都内 某病院

政府等に素性がバレるのは避けたいが、設備の整った病院で診察を受けたかった瀬名は、渋々それなりの大きめな病院へとやってきた。

悠太の作った特製の小型リミッターでレベルは3の状態だ。
超能力担当の診察室前の長椅子に座っておとなしく順番を待つ。
以前もこの病院に来たことはあるが、今日はやけに人が多い気がして気持ちが落ち着かなかった。

(定期検査のキャンペーンやってるんだ…超能力の無料相談会も…)


超能力検査を後押しするキャンペーンを、バベル協力の元行っているらしい事がわかる。
院内の壁には宣伝ポスターが貼ってあり、通路には臨時で作られた看板が、診察室の奥にある部屋でこの検査を行なっていることも示していた。


「お待たせしました。受付番号545番さん。診察室3番へどうぞ」
呼び出しの音声が流れる。瀬名は手元の受付表に記載された番号を確認してから、診察室3番へ入室した。




「いや〜、待たせて申し訳ない」

問診の結果、睡眠不足に関してはしばらく睡眠薬を飲むことで身体を休める方向となった。
医師曰く、睡眠不足で無理をするよりも、薬に頼ってしっかり眠った方がいいとのことだ。

超能力と脳に関しては一度精密機械で検査をすることになった。
また待合室で検査キャンペーンの人たちと順番待ちをした末、検査室に入ったのだが、そこにはバベルの名札をした若い男性──名札には賢木とあった──がいた。


「結城 瀬名ちゃんだな。普通の診察で来てるっていうのに、長く待たせてごめんな」
「いえ、そんなことは。」
「気を遣わせてしまい尚更申し訳ない…
よし、じゃあここに横になって、リラックスしてね」


検査服に着替えた瀬名が台の上に横たわる。頭に専用のヘルメットを装着した上で始まるところだったか、小さなアラートが聞こえた。


「おっと…瀬名ちゃん、リミッターを外してくれないか?」
「すみません、今外します」


以前検査した時にはリミッター装着のまま問題なかったのに、検査機械が変わったのだろうか…?
瀬名はそんな事を考えながらリミッターを外す。
確かにリミッターをつけたままでは、潜在能力も何も分からない。
しかし、高超度エスパーである事がバベルの職員にバレるのは、可能であれば避けたい事態ではあった。

(そのままバベルに保護されちゃうのかな…)


浮かない顔のまま、リミッターを外した瀬名はもう一度ヘルメットを被り横たわる。


「じゃあ、始めるぞ」


ウイイイン、と音を立てて機械が動きだす。
数十秒後、バベルの検査医───賢木の手元のディスプレイは、小さなアラートを鳴らしながら「超度 測定不可」と表示が点滅していた。


「これは…!超度7なのか?!
サイコキネシス、テレポート、サイコメトリー、プレコグの可能性…」
「プレコグって…予知能力…!」


画面に表示される能力名を読み上げる賢木。
瀬名はひとつだけ、自身で把握してない能力名が読み上げられたことに気がついた。
プレコグ…予知能力だ。
何度も繰り返し見るあの夢は、予知能力の可能性があるということだ。


「瀬名ちゃん、君───!」
「、ごめんなさい!!」




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