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(どうしよう、やってしまった…)


一階の総合案内前まで戻った瀬名の顔はある意味で真っ青だ。
パニックになりバベルの医師を院内の別の階にテレポートで飛ばしてしまった。


しかし瀬名のカルテはあの検査室に残ったままだ。
当然ながら、保険証から全ての情報がわかってしまう。名前も住所も、どこの保険証なのかも。
後日バベルに保護されてしまうのだろうか、それは断れないのだろうかと様々な考えが駆け巡る。


「まぁそう慌てなさんな」


すると、突然後ろから、声と共に何か硬い板で頭を叩かれる。
後ろを振り向くと、そこには学ランを着た青年…雨の日の図書館で出会った、兵部京介がいた。


「兵部さん?!」


そしてその手には瀬名のカルテが。
ニコリと笑う兵部。
それをそのまま会計に持っていき、処方箋と診療明細書に変えて戻ってきた。


「これは、あの…?!」
「ひとまずここを出ようか。別の場所でゆっくり話そうよ」


瀬名の思考は未だ落ち着かない。その様子をクスリと笑いながら、兵部は瀬名の背中をぽんぽんと叩き、テレポートで病院を去った。





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