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都内某所

カンカンカン、と工事の作業音が響き渡る工事中の一体。
ここに元々あった建物や倉庫を全て壊し、新しい商業施設を建てる予定であった事を、張り出されていた建築計画で知ったのはつい10分前のことだ。

兵部と瀬名は一旦、上空で指定された住所であるここら一帯を偵察してからここにいる。
着手したばかりなのか、作業が始まっている箇所もあれば全く手付かずで建物そのものが残っている箇所もあった。


「あの大きな倉庫…強力なECMがあるな。おそらく悠太はあそこにいるだろう」
「ありがとう…悠太の安全をちゃんと確かめたい、正面から堂々と入っても?」
「僕は付き添いだ。君に従うよ瀬名」

ただし、危ない時にはすぐに助ける
そう続けた兵部に、瀬名は不安そうに頷いた。










「こういうこと、今まではあったのかい?」


倉庫のような建物に入ってみると、中はただの倉庫ではなく、いくつも部屋がありガスや医療器具、薬品などが乱雑に置かれていて、どちらかというと病院や実験施設を思わせる造りをしていた。
決して綺麗とは言えないその建物内を歩きながら、さらに下の階…地下への道を探す2人。兵部が話しかけた。


「いえ…私たちは、超能力関係で特定の組織に所属する事を避けていたから、むしろ目をつけられた事が不思議で仕方ない。どこで知られてしまったのか…」
「奴らはどこにでもいるからな。医療機関なりにいて、君たちやエスパーの情報を組織に流している奴がいても不思議ではない」
「そうですね…。私たちは、ただ放っておいて欲しいだけなのに」


なんで私たちなの
立ち止まった瀬名は肩を震わせながら言う。それが怒りからなのか、不安からなのか、俯く瀬名に兵部は知ることができない。


「…たまたま得たもので、差別をされたり命を狙われたり、この世界は本当に理不尽だ。
でも君が、君たちが望むなら、僕たちはその理不尽から少しだけ守ることができる」

エスパーにとってより良い未来を一緒に作ろう。


それはパンドラへ直接的に勧誘しているのか、「頼っていい」と遠回しに柔らかく言われているのか。
瀬名は顔をあげ兵部を見る。瀬名を不安にさせないように、兵部の表情は穏やかだった。



「ごめん兵部さん、ちょっと弱気になっちゃった」
「いいんだ。でも、少しは仲間に頼ることも考えるんだよ」
「ありがとう。行こう」


まだ少し不安は残っているようだが、瀬名は兵部にお礼を言ってからまた歩き始めた。

2人は、さらに奥に進んでいく。





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