03


...その後も、俺たちは雑巾掛けをしていた。今は水道で雑巾を洗いながら緑川と話している。



「じゃあ俺さきに行ってるよ」
「あぁ、分かった。」



先に洗い終えた緑川は水道の蛇口を捻ると体育館に戻った。
俺も早く戻ろう、そう思い蛇口を捻った時、静まった廊下に何やら足音が響いていた。時々聞こえる足音は、まるで重い荷物を慎重に運んでいるように聞こえる。ふと音がする方を見ると、海理が花を運んでいた。



「…」



植木鉢ごと色のついた紙に包まれ、頂点で結われている花は海理の手に二つ。持ちにくいのか、たびたび持ち直しながらゆっくりと歩いていた。



「保科、」
「…あ、基山くん、」



俺が声をかけ、歩みよると海理は植木鉢を床に置いた。よほど重かったんだろう。ほう、と空気に溶けた息は長いものだった。



「今、それを運んでるのかい?」
「うん、そうなの。これが最後の2つだったから引き受けたんだけど…思ったより重くて」



1つにすればよかったなぁ、と苦笑いする海理だが、例えそう後悔しても最後まで物事をやり通す事を、俺は知ってる。昔からそうだった。
だから、今俺が手を貸さなければ海理は無理をしてでも運ぶだろう。怪我してからじゃ、遅い。



「どこまで?」
「体育館だよ」
「今から俺体育館に戻るし、1つ持つよ」
「え?」



植木鉢の頂点で結われた部分を掴み、持ち上げる。それから抱き抱えるように植木鉢を持ち、海理に「行こう」と言えば少し戸惑いながらも海理も植木鉢を持ち上げた。


海理の歩くスピードに合わせて歩いているが、先程よりも早くなっていた。横目で海理を見ると、どこか顔が楽しそうにしている。今にも鼻歌を歌い始めそうなほどに。



「何か言い事でもあった?」
「うん!基山くんが手伝ってくれたから、すごく嬉しいの!」



なんで?
と聞きたくなったが、それは聞かない事にした。理由なんかより、今海理が嬉しいならそれでいいじゃないかと思ったから。



「ありがとう基山くん!」



体育館に運んだ後にお礼を言われ、その後に緑川に「サボってイチャイチャかよ〜」とからかわれたが、その時に雑巾を水道に忘れた事を思い出して少しだけ先生に怒られた。



(水は無駄にしたらダメだぞー)
(分かってるよっ)


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