04


「おはよう、基山くん」
「おはよう、保科」


昨日からやけに海理は嬉しそうににこにこしている。いつもは玲名と一緒に帰っているのに、昨日に限っては掃除が終わった後すぐに帰ってしまった。何か急いでいたようだ。


「あのね、渡したいものがあるの」
「渡したいもの?」


鞄の中から海理は透明な袋を出した。中にはクッキーがたくさん入っている。それを受け取り、海理を見ると「作ってきたの」と言った。


「じゃあ手作りクッキーか…おいしそうだね。今食べてもいい?」
「いいよ。」


袋から出して、1番大きいクッキーを手にする。口へ運び、歯で砕いた。しっとりとしたクッキーの中にあるナッツの味がとてもおいしい。


「どうかな…?」
「すごくおいしいよ、ありがとう」
「よかったー…昨日、なんだか久しぶりにお菓子作りたくなって作ったら、作りすぎちゃったの」


だからこんなにたくさん…机の上に置いた袋の中のクッキーを見る。本当に作りすぎたんだなぁ、俺に好意があるからとか、そういう意味でくれたクッキーだったらよかったのにと心の中でため息をつく。

海理が鞄のチャックをしめながら、『喜んでもらえてよかったよ』と言いかけた時、


「席につきなさい」


ホームルームの為に、担任が教室に入ってきた。机の横に鞄をひっかけている為、もらったクッキーをカモフラージュするものは何もない。1番後ろの席だが、角度的にもクッキーの量的にも見えてしまうだろう。
俺は慌ててクッキーを膝の上に移動させ…ようとした。同じように隠そうとした海理の手と重なり、今海理の顔は俺の膝あたりにある。その拍子で海理の鞄が床にどさっと落ち、教室中の視線がこちらに集まる。


「(机の中にかくして)」


小声で言う海理に俺は頷き、膝の上のクッキーをそっと机の中にいれる。


「何してるんですか?保科さん」
「い、いえ!鞄を机にかけようと思ったら、鞄が重くて基山くんに、その…」
「俺が彼女を支えたんです」
「怪我がなくてよかったです。…ではホームルーム始めます」


なんとかクッキーの事はバレる事なく隠す事ができた。席につく海理はふうと息をつくと、「迷惑かけちゃってごめんね(>_<)」と書かれたノートの切れ端を渡してきた。



(ばれなくてよかったね)
(そうだね。クッキー、ありがとう)


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