パンドラの使者-1
「ごめんな天理、急に休みもらえると思ってへんかったから…」
「1日だけ!本当ごめん!」
「明日の夜には戻るからね、天理ちゃん」
「いいんだよ〜、そもそも私が帰ったら?って提案したんだし!」
葵、薫、紫穂がそれぞれ大きな荷物を持って天理に言う。
天理が帰ってきた記念に、チルドレンたちにまとまった休みをもらったわけだが、天理はせっかくならと、3人に帰省を提案したのだった。
4人と皆本…ザ・チルドレンとしてはこれから先もしばらく一緒に過ごすことができる。
ただ子供のうちに親に甘えられるのは、限られた時間内だけだ。
「独りだからってハメ外すなよ〜皆本!」
「あのなーー」
「心配すんなって!皆本はちゃんと俺が見張っておくからよ!」
「賢木先生のことは最初から信用してない〜」
「そもそも天理がいるから〜」
休日から皆本家へやってきた賢木。皆本と天理とともに3人を見送る為に来たわけではなかろうと、紫穂が透視するとやはり色恋沙汰で何かあったようだった。
3人がそれぞれ帰省していくのをベランダから見送る。見届ける皆本はまるで親のような顔をしていた。
「さてと…天理、賢木。昼は何が食べたい?行きたいところはあるかい?」
「あ、皆本さん!私友達んち泊まりに行ってくるからさ、賢木さんとたまには2人で遊んできてよ」
「気が効くなぁ天理ちゃん!そしたら皆本、飲みにでも行くか!」
皆本にも休息は必要だ。四六時中チルドレンの面倒を見るのは大変だろう。
賢木飲みの誘いを断り、家事に精を出す姿を横目に見ながら、まぁそんなに自分たちがいなくてもやることは変わらないんだなと笑みが溢れる。
「それじゃーいってきまーす!」
「気をつけるんだぞー!」
「はーい!」
「とは言ったものの…どうしよう。ママの実家…おばあちゃんちにでもいってみるかなぁ」
皆本と賢木に気を利かせて、とりあえずの着替えを持って出てきた天理だったか、友達の家に泊まりにいくとは咄嗟の嘘だった。
コメリカで両親に親孝行したし、日本では祖父母孝行に励むか。
「おばあちゃんちの方、温泉の名所だしな…ふふ!」
コメリカではシャワーばかりだったが、やはり湯船にはゆっくり浸かりたいもの。
観光地でもある祖母の家へ、ウキウキるんるんご機嫌な様子で向かう天理だった。
「…うーん、タイミング…」
合鍵で入った祖母宅。いつも昼間にはいるはずが、誰もいない。ブレーカーも落とされガスの元栓も閉まっていた。
カレンダーを見ると、「沖縄旅行」の文字。
どうやら旅行中で、すれ違ってしまったらしい。
「電話が通じないと思った…
んーでもせっかくきたしなぁ、明日朝イチで帰るからちょっとだけいさせてもらお!温泉も入りたい!」
帰省したはずが、家主不在。まるで所有している別荘で過ごすかのように、天理は家のあらゆるものを使っていく。
もちろん、電話のつながらなかった祖母にはメール済みだ。ついでに母親にも。
「ん?あれ、そういえば…」
ふと気になることがあり、もう一度カレンダーを見る。
局長にもらった休暇は5日間で、この日程を確かにあの子にも伝えた。
「…いつ来るか聞いてなかったけど、まさかあちらもすれ違ってたり…なんてね」
エスパーといえど、気にとまった事全てが勘で当たると言うわけでもなかろう。
天理はローカルテレビを見ながら、お茶をすすっていた。
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