パンドラの使者-2
天理は日帰り入浴もできるホテルで入湯料を払い、温泉に入っていた。
数分入っただけでも、お肌がツヤツヤツルツルになるのを感じる。
「はぁ…」
うっとりと息をつく。温かいお湯に包まれて、気持ちも身体もリラックスしていた。
「気持ちいい…もっと温泉文化広がらないかなぁ…世界は平和になる…」
そんなことをぼんやりと考えながら、いつかチルドレンでここに観光したいなと思いながら星空を見上げる。
都内にてはなかなか見ることができない、数えきれない程の星空が広がっていた。
「私たちの未来は、この星空のように無限大…」
今だけは、現実も未来も。この無限に広がる星空の前では何も気にせず自由になれた気がした。
「…これは…」
翌朝。温泉を満喫し、名物のうどんを食べて祖母宅へ戻った天理は、用意した布団の上でぐっすり眠っていた。温泉のリラックス効果によって熟睡していたが、流石にものすごい量の電話の通知とバイブレーションに目を覚ました。
履歴を見ると、チルドレンの3人からと…昨日気にかけた人物からも写真付きでメールが届いていた。
「相変わらず読みづらい字だ…」
やはり決行は今日だったらしい。
天理は大して広げてもいなかった荷物をささっとまとめ、ブレーカーとガスの元栓、戸締りを確認してから祖母宅を後にした。
天理が、メールに添付されていた地図通りの場所に来た時には、すでに乱闘が行われていた。
「天理!」
「天理!いいところに!」
「え、天理?!」
あれほど、フリをしろと言ったのに、急に現れた天理に澪が反応する。
葵の腕の中には分身した澪がぐったりとしており、紫穂が対峙する分身が暴走し始めたところだった。
「ガ、ァアアアアアッ!!!」
「澪っ!」
どうやら、分身した人格が暴走をしたようだ。
暴走した人格は2/3を占めていて、もともと本体だった澪さえも飲み込もうとしている。
「今マデ誰モオ前ヲ守ッテナドクレナカッタ。
少佐ダッテオ前ヨリ女王ノホウガ大事ナンダ。
コノ世ニオ前ノ居場所ナンカナイノヨ!!」
「――――!!」
「……」
「女王ヲ倒シテモ彼女ノ持ッテル物ハ手ニ入ラナイ。
家モ!
家族モ!
恋人モ!
天女モ!!独リ占メハデキナイ!!」
「澪!!気をしっかり持って意識を保て!能力を理性でコントロールするんだ!!」
「ダ……ダメだよ。だって――あいつの言ってること――本当だもん……!!」
残された力で抵抗するも、分身に言われた言葉に顔を歪め不安そうな表情をする澪。
ちっ
と薫の舌打ちが聞こえた後に、ショベルカーのアームは大きな音を立てて崩壊した。
澪は何かあたたかいものに包まれた感覚になる。
近くには薫が、隣には天理がいた。
一瞬だが、2人に翼が見えた気がした。
「しっかりして、澪!」
「欲しいもんがあるなら、自分で作ればいいだろ!?そんだけの力があるのに何言ってんだ!」
天理は澪の肩に手を置き、寄り添っている。
ショベルカーを破壊し分身に攻撃を仕掛けたのは薫だった。
「わかってるの?」
「あいつ、あんたらをシメに来たんやで?」
「知ってるよ。ね?」
「うん。……なんでかな。ヘコんでるエスパーを見ると、ムズムズするんだよね!
んで…そういう時ってなんかやたら力が出るんだ!!
天理!!」
「ほい!」
天理は念動力と、テレポートの応用の空間固定で暴走した人格をおさえつけた。
そして、さらに薫の補佐も同時にやる。
「残像百烈拳!!」
「今だ!」
天理の声を合図に、澪が暴走した人格を吸収する。
が、分身が傷を受けた分、吸収した澪自身もボロボロになってしまった。
続いて、念動能力と瞬間移動能力の両方を使い、さらに薫の補佐までしていた
天理が、紙がゆっくりはらりと落ちてくるようにゆっくりと落ちてきた。
それを、薫が慌てて体を支える。
「は〜ちょっと疲れちゃった…ここまで飛ばしてきたのもあって…ひえ〜」
「無茶しすぎやねんて!」
「念動能力と、瞬間移動能力の応用で空間固定…さらに薫ちゃんの補佐まで…」
「本当、無茶しすぎだよなぁ、天理は…」
「ごめんねぇ…」
天理はそのまま、疲れてしまったのか寝てしまった。
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