ファーストキスの思い出を話す話




※高校生編の日常回のイメージ
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そういえば中学生の頃、思春期で若気の至りだったのか、寝ている"彼"にこっそりキスしちゃった…こともあったな。

あれが私の────








初恋気分♪ソーダ
アセロラが効いた甘酸っぱいピンク色のソーダだ。
SNS映えするとJKを中心にブームとなっている。
これがまた、見た目の可愛さだけではなく、ビタミンCやクエン酸が入っていて美容的にも良いとさらに女性人気を集めていた。

パンドラ内でも流行っていて、共用の冷蔵庫に何十本と入ってるくらいだ。

子供達と混ざって高校に通う兵部もまた、そのブームの渦中にいる。


「誰でも飲んでいい、んだったな?」


冷蔵庫の張り紙を確認してから一本取り出して、蓋をあける。プシュッと炭酸が抜ける音がして、途端に甘酸っぱい香りがしてきた。

そこに、お風呂上がりでまだ髪が濡れている天理が瞬間移動でやってくる。


「あ、京介だ」
「天理、今日は女王たちと一緒じゃないのか?」
「うん、澪とカズラとゲームする約束してたから、今日はこっち〜」


ザ・チルドレンの一員でありながらパンドラのメンバーでもある天理。
先ほど兵部が閉めたばかりの冷蔵庫を開けて、初恋気分♪サイダーを取り出した。


「京介もそういうの飲むんだ?」
「生徒会長たるもの、流行りは把握しておかないとね」
「初恋の味を思い出す…あまずっぱ〜い初恋気分♪サイダー」


天理がCMの真似をしてみせる。流石テレパスだ、感情表現はお手のもの。


「うまいうまい」
「テキトーに言ってない?割と本気でやったんだけど〜」
「もちろん本心さ」


口を尖らせてた天理だったが、兵部と目を合わせると2人は弾けるように笑う。


「ねえねえ!京介の初恋って…女王だよね?」
「んっ?!あー、いやどうかなぁ〜」


急に天理が目を細めて鋭く質問。兵部は驚き自分の唾液で少しむせながら答えるが、それもまた飄々としていて本当かわからない。


「これってさ〜CMが物語みたいに続いてて」
「へえ」

まだ湿っている髪の毛の毛先をもてあそびながら、天理は続ける。

「最初は初恋の思い出が蘇るような甘酸っぱい味って謳い文句なんだけど、
その後、CMのヒロインが初恋の人と再会して、ファーストキスを思い出すんだよね。

つまりこれ、初恋の味でありファーストキスの味なんだけど…」


天理が一口サイダーを口に含んで、ごくりと喉を鳴らして飲み込む。


「京介、ファーストキスって覚えてるの?」


同じくサイダーを飲もうとした兵部だったが、ペットボトルが口に当たらず、サイダーがそのまま床にドバドバとこぼれ落ちる。


「どうだったカナー」
「あらまぁ、ひどい動揺だこと…」


あからさまに動揺する様子に、流石の天理も同情の眼差しを向ける。
肩にかけていたフェイスタオルで兵部の胸元を拭きながら


「ねえ教えてよ」

兵部を見上げて言った。

状況的には、お風呂上りで濡れた髪をまとめてしっとり潤う天理が上目遣いで兵部を見つめている。
この角度なら、少し胸元が見えそうなくらいだ。


「はは、からかってるのかい?」
「本気で聞いてるの!」


いつの間にか兵部の胸元をギュッと掴んでいた天理。
潤んだ目が真剣に兵部を捉える。


「私のファーストキスは、さ…京介だったんだけど」


まっすぐ見て伝えてから、恥ずかしそうに目を逸らしてしまった。
兵部はサイダーを念動力でテーブルに置くと、天理の頬に手をそっと添える。
驚いた天理が、再び兵部を見た。


「僕のファーストキスも…天理だって言ったら、どうする?」
「えっ?!」
「確かめてみようか?」


ゆっくりと、そっと、唇が触れた。
天理の髪からしたたる水が兵部の手に落ちる。


「え、どういう…?!」
「うーん、当たり前だけど、ジュースの味だな?」


口元をぺろりと舐めて、兵部はニヤニヤしながら言ってみせる。
天理は珍しく感情を隠せないらしく、恥ずかしさと驚きが入り混じった様子だ。


「うそ、覚えてるの…?!」
「当たり前だろう?僕だってあれがファーストキスだったんだから」


それはチルドレンが…天理が中学生の時だった。
黒い幽霊との戦いが一段落し、無事虚数空間から戻ってきた兵部が眠るある日の夜、
寝室に忍び込んだ天理は、溢れる思いからこっそりキスをしてしまったのだった。

思えば、テレパスで感情を統制してきた自分らしからぬ行動だったとは思う。
でもこれが、親愛ではなく恋愛だと確信してしまい、抑えられない気持ちから天理は感情で動いていたのだ。


「…簡単に部屋に入れたから、揶揄われてるかもと思ってたの」
「いや?天理ならいつでも歓迎だよ」
「でも起きないし、何も言われないし…本当に気づかれてないのかと思った」
「この僕に限ってそれはありない」
「…だよねぇ」


観念したように、大きく息を吐いて肩の力を抜く天理。


「…その、そういうことなので、私は京介のこと好きでいるからね」
「え、両思いじゃないの?さっきの、両思いのキスだよ?」
「分かってるー!分かってるけど…
私が…貴方に相応しい女性になれたその時に、伴侶として隣にいたい」


乙女の顔だった天理が、真剣な顔でまっすぐ兵部を見る。
それはただ真剣なだけではなく、使命感を帯びた表情だった。


「それは…、今だってもう十分に素敵な女性になったと思うんだけどな」
「ううん、まだだよ。私には…やるべきことが残ってる」


予知能力も持つ彼女の目には、何が見えているのだろうか。


「分かったよ。その時まで待とう。
でも…」


天理の肩に手を置き手繰り寄せる兵部。
そのまま額、頬、唇にキスをして、


「ひゃ?!」


鎖骨にも唇が触れた。


「僕の方が待てないかもよ?
…寿命的に」
「そ、それは困る!!てか冗談に聞こえないよ?!」
「あはは!なら1日でも早く天理をその気にさせられるよう、明日から頑張るよ」


飲みかけの初恋気分サイダーを手に取ると、兵部は瞬間移動でその場をさった。


「なんとも難しい問題…!私の治癒能力で少し若返りさせるしか…ん?」


サイダーを飲もうとした時、その違和感に気づいた。
あまり飲んでいないはずが、ペットボトルが軽い上に、かなり傾けないと飲めない。
つまり、量が少ないのだ。


「あれ、私そんなに飲んでない…もしかして、」


ペットボトルに残った残留思念をよみとる。
そこには兵部からのメッセージが残っていた。


──間接キスもキスに入るかな?なんてね。今夜はこれで許してあげよう。
ほら、風邪ひかないように、早く髪を乾かしておいで。


「…一本取られた、飲み物だけに」


今まで気にしたことなかったのに、途端に恥ずかしくなってくる。
超能力者が風邪をひいても害しかないので、天理は大人しく部屋に戻るのであった。


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2026/5/11

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