マジック・ガールズ-2




「?空気抜いたら何が困るの?」
「えーと……
……息できないじゃん!」
「うん」


すぐ隣にいた薫が、単刀直入に答える。しかしそれを伝えてもすぐにピンとこないのか、少しの間沈黙が流れた。


「あっ!!死んじゃう?!」
「遅ッ?!アタマ悪ッ!!」
「お前が言うな!!」


やっと理解した澪だったが、薫にバカにされたことに腹を立て、お互いに手や足でケンカし始める。
見かねたマッスルが声だけで仲裁していると、マッスルと皆本の間に天理が入ってきた。
恐る恐る手を挙げて、何か提案があるようだ。


「あのー…このままだと、酸欠まであまり時間がないと思うんだけど…」


天理が首元のチョーカー型のリミッターを指さして言う。
真意に気付いた皆本は手元のケータイを開いた。

天理のリミッターには生体モニタリング機能が搭載されており、心拍数や血圧を計測している。
テレパシー使用による身体負荷を検知し、それに応じてリミッターを段階的に作動できる、天理専用の特注仕様だ。

指さしたのは、その計測データをケータイで確認しろ、という意味。
画面を見ると、換気扇が作動する前に比べて、心拍数と血圧が上昇しているのがわかった。
酸素が徐々に薄くなってきている証拠。
他3人には生体モニタリング機能が搭載されていないものの、ここにいる全員が少しずつ、薄くなる酸素の影響を受けていると想像はできる。

ケータイの画面を覗きこんだマッスルも、その意味を理解した。


「そうね…。
ねえ、一時休戦して協力しない?天理ちゃんの言う通りよ」


マッスルの提案に、皆本は即答せず考える。
マッスルの言うことは最もだが、『パンドラ』を信用してよいか迷っていた。
考え込む皆本に、マッスルが近づいてくる。


「何も迷うことなんか———」


そして次の瞬間、皆本の肩と顎を掴んでキスをした。


「「「「ぎゃーーーっ!!!!!!」」」


薫、葵、紫穂の絶叫。
澪と天理はドン引きしており、声すら出していなかった。
すかさず薫と葵が飛び掛かり、皆本とマッスルを引きはがす。
皆本も気分が悪そうに口を押えていた。


「薫ちゃん、どいて。始末するわ」
「よし、やれっ!!」
「あっ、僕のブラスター?!」
「わーー!!待って落ち着いて!!要するに問題はECMなのよ!!
あれされ止めたら、超能力が使えるんじゃなくてっ?!」


いつの間にか皆本の懐からブラスターを抜き取った紫穂が、マッスルに銃口を向ける。
必死の弁解にそうかと納得した紫穂は、銀行員の制止も聞かずにブラスターの引き金を引いた。

「?!偽物?!」

見事ECMに命中したが、その中から「ハズレ」と書かれた紙がひらりと舞う。


「天井のECMは半分がダミーだ!」
「じゃあ全部撃てばいいじゃない!」
「ダメだ!本物はいくつもあるし、ひとつでもそれを壊すと——
金庫室全体が爆発して生き埋めになる!」
「な…」


銀行員の説明を聞いて青ざめた紫穂が、よそ見をしながら二発目を打つ。
銃弾はECMからは外れ、天井に穴が空くだけで済んだ。
超能力を発動していれば百発百中の紫穂も、こればかりは外してよかったと安堵する。


「でも…これじゃ時間の問題やで?!」
「つまり、このままだと——」
「本当に、死んじゃうかも…ね」


いよいよ現実味を帯びてきた死に、青ざめていく葵と薫。
自分で言っておきながら、まだ現実味がなさそうな天理は静かに視線を落とした。

(なんか…大丈夫な気がするの、なんでだろ。
こういうとき、皆本さんが何か思いついてくれるハズ…)

ちらっと、皆本に目をやる天理。
何か打開策があるはずだ、と思考を巡らせる背中を見守っていると、天理の方が何かをひらめいて顔を上げる。
弾かれるように皆本に言った。


「皆本さん!ECCMは修理できないの?!」
「!!もしかしたら——!!」


皆本がECCMを確認する。壊れているのは燃料電池ユニットだけと確認できた。
修理のため、全員に携帯を出すよう呼びかける。
その燃料電池を繋ぎ、数秒でもECMを中和して脱出しようというのだ。






「くそ…!!目がかすんできた…!!」

皆本の指示で、酸欠対策で各々横たわっていた。
金塊に寄りかかる薫と澪は、少し呼吸が苦しい中話を続ける。


「京介——助けにきてくれたりしないかな」
「来ないわよ!私たちがここにいることは誰も知らないもの!!
仮にしてても来るのは少佐じゃなくて幹部の誰かよ!」


パンドラのリーダー、兵部の助けを期待する薫を横目に、澪は回想する。
兵部や皆本に特別扱いされる薫が羨ましい、なんでコイツばかり…


「!」


澪のスカートの裾が少し引っ張られた。
澪が横目で確認すると、澪の横に横たわっていた天理がそれを掴んでいた。
テレパシーがなくても、澪の気持ちを察したのか、天理がそっと澪を見つめる。

澪が天理の名前を口にしかけたところで、それを阻止するようにマッスルが言葉をかぶせて声をかけてきた。


「そんなことないわ。少佐はあんたのことも大事に思ってるわよ」


マッスルに感激したのもつかの間。
酸欠故に目の前で小さな兵部が飛び交う幻覚を見始めてしまい、澪が「急いで!!」と皆本をせかしたところで…


「待ってくれ……!!今————!!」


コード同士を繋げる。バチッと火花が散り、ECCMが作動した。


「どうだ?!」
「いける……!!超能力が戻ってる…!!」


念動能力者である薫がすかさず超能力を発動し、シャッターを吹き飛ばす。
しかし、特殊電磁素材とやらでできた壁はなかなか壊せない。
遅れて起き上がった天理が、薫に加勢する。


「二人がかりでも、だめか…!」
「どうする?!皆本!」
「新しくつけたブースターを使う!!サイコキネシスの念波が一番単純なんだ!」


皆本が携帯のキーをたたき、操作する。
するとチルドレンのリミッターがそれぞれ信号を受け取り輝き始める。


「他の3人のパワーを電気的に上乗せすることは、技術的に可能———!!
純粋なサイコキノである薫を中心に、集約させる!」
「よっしゃ薫!ウチらのパワー受け取り!」
「頼んだ薫!」
「ふ…わ?!力が…流れ込んでくる…?!」

「『ザ・チルドレン』クアドラプルブースト!!」
完全解禁!!


磁石のように薫に吸い込まれる3人。
3人分の力で、さらに金庫室の壁や扉にヒビが入る。
だが、まだ出力が足りなさそうだ。


「澪!」


天理が澪を呼んだ。その瞬間、澪のESP手錠が破壊される。
気付いた澪は自分でチルドレンの近くにテレポートした。


「なるほど…同じテレポーターだから——私の力も混ぜられるってことね?」
「…まんざらアホでもない?!」
「黙れっ!
あんたたちにただ助けられたんじゃつまんないのよ…!!
普通人の連中に、力を合わせたエスパーのすごさ、見せてやんなっ!」


澪も加わり、4人分の力が薫に上乗せされた。

「サイキックうう———
大脱出ーーーー!!」




-18-

prev ・ next
mokujiclegateau