国王陛下のチルドレン-1
「……本ぶりになってきちゃったね」
風と共に大粒の雨が降り注ぐ。ちょうど下校時間に本降りとなり、傘を持ってきていないチルドレン一向は止む気配のない雨空を見上げていた。
そこへクラスメイトのちさとが、自身の傘で可能な限り一緒に入って帰らないかと提案してくれた。
だが超度7のテレポーターがいるこのチーム、こっそり帰ろうということで、その提案を断っていたところだった。
「てっ?!」
薫の頭に鈍痛が走る。
デジャブ…と思いながらよく見ると、薫の後ろには東野がいた。
乱暴に開かれたままの傘で薫の頭を叩いて、そのまま傘を薫に押し付ける。
「2本ありゃ、頑張れば5人で帰れるだろ。
…ったく、天気予報見てねーのかよ?!」
それは不器用な彼なりのやさしさだった。
自分は家が近いから濡れて帰ると言っており、その優しさにちさとはときめいている。
「……」
それを見たチルドレンは、このチャンスを逃すわけにはいかないと、顔を合わせて小さく頷いた。
「ていッ!!」
次の瞬間、薫が膝で傘をバキッと折った。
逆上する東野に、こちらの好意を察しろと葵・紫穂がすかさずフォローに入る。
天理はその後方で腕を組み、指示役のような顔でうんうんと頷いてみせた。
「ヒューヒュー!!」
「あっついな〜〜!」
「遠回りするようにね〜〜!」
「濡れないように、気をつけてね〜!」
4人の後押しもあり、ちさとと東野は、ちさとの可愛らしい水玉柄の傘で帰ることになった。濡れないように、肩を寄せ合って歩くふたり。そう、相合傘である。
チルドレンは二人の背中を見送ると、自分たちも帰ろうという流れになった。
「ほな、ウチらも帰ろか」
「ちょっと待って、なーあれ、けっこーいいと思わね?」
「ふ…ん?」
「どれどれ?」
あれ、と薫が指さした先には、相合傘をしたちさとと東野がいる。
薫のイメージをサイコメトリーで読み取る紫穂、それとほぼ同時にテレパシーで受信する天理。
脳内では、皆本とチルドレンの5人で大きな相合傘の元、愉快に帰宅するイメージがあった。
「そっか、『蛇の目でお迎え』を要請するのね?」
「おおっ!」
「そうそれ!」
「濡れちゃうから車がいいな〜」
「あ、確かに」
「でもそれじゃ意味がない———」
4人がテンポよく会話していると、ズンと地響きを感じた。
それはだんだんと近づいてくる。
4人が校門の方へ目をやると、そこには4本の傘を鼻に抱えた象と…それにまたがる謎の好青年がいた。
「お迎えにあがりまシタ。
プリンセス・シホ、プリンセス・アオイ、プリンセス・天理、
アーンドプリンセス・カオル!!」
異国情緒漂う装飾を施された象がゆっくりと歩いてくる。
たっぷりのフリンジをあしらった傘を差す青年が象にまたがっていた。
青年は頭にターバンをまいており、その中央には大きな宝石が煌めく。
そしてその脇には、SPのような黒服の男を従えており、どこかのお偉い人に見えてくる。
とにかく、日常的に見ることのない光景に、チルドレンは目をまん丸にして驚いていた。
自分たちが名前を呼ばれたこと…彼に名前を知られていることに、驚きで固まった4人は、まだ気付かない。
「ご心配にはおよびまセン、プリンセス『チルドレン』!怪しい者ではありまセン!」
チルドレン、という言葉に天理が「は!」と正気を取り戻し、青年の素性を暴くべくテレパシーで透視を試みる。
最も、透視しなくとも悪意がないことは分かっていたが、その素性に心当たりがなく不気味に思っていたのだ。
透視した天理は、力が抜けたように小さめの声で言う。
「…うーんと、まぁ確かに怪しい人ではない…ね…」
放課後の雨降る校庭で、その場に居合わせた生徒の注目を集める青年と象。
まもなくして皆本が運転する車と何台ものパトカーが到着し、一向はバベルへ向かうこととなった。
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