国王陛下のチルドレン-3
なんと、結界の外にいる人間からは、チルドレンたちが大人の姿に見えていた。
髪の長さは変わっていないものの、手足が伸び、体つきも大人になっている。
「結界もレアメタル結晶で作られてマス!ESP波の共振により、外部からは姿形がチョット変わって見えマース!!
結界内にいる本人には見えてまセーン。放出エネルギーが我々の視覚に影響しているのデス。」
その説明を聞いていた天理は、こっそりテレパシーで皆本の視界を見た。
着ている服や髪型は変わっていないものの、姿だけが大人になっている。
ふと自分の手を見て、自分の体そのものが変化していないことを確かめた。
(私たちのパワーが大人並ってことか…)
なら勝機もあるな、と希望が見えた。見ていた手でぎゅっと拳を作り、自信に満ちた表情に変わる。
「本気で好きなら誰にも止められないってこと、見せてやる!」
「愛されてるじゃん〜〜!よかったわね、皆本クン。あの子たち本気よ?」
「ちょ、いや、そーゆー問題じゃないでしょ!!
チルドレンはパワーこそ超度7でも、まだ未熟なんです!相手は歴代巫女のさまざまな超能力を使えるんですよ?!」
皆本の心配をよそに、やる気のチルドレンを見てマサラも準備に入る。
4対1のハンデを埋めるために、”助っ人”を参加させるといって指を鳴らした。
すると、格子状に区切られたフィールドに次々と亀裂が走り、ガコガコと重い音を立てて割れ、トーテムポールを思わせる縦長の柱状の像が何体も出てきた。
ムーン!!と言いながらチルドレンに一斉に襲い掛かる。
「う…うわっ!?」
「退避っ!!」
まずは薫がサイコキネシスで受ける。囲まれたところで、葵がテレポートを発動させたが、その後ろにすぐマサラが現れた。
「おバカさん!!狭いフィールドの中じゃ、出現場所の特定はカンタンなのよ!
わざとスキを作って誘いこまれたのに気づかなかった?!」
「させるかあーーーっ!」
マサラはまたリング状のエネルギーの塊を手に4人に迫る。
放たれたリングに、薫がサイコキネシスでエネルギーをぶつけた。
弾けたそれを、マサラは石像たちを使ってガードする。
「ズルいっ!これじゃそっちに有利やん?!」
「4人いたって私は何もできないし———」
非戦闘タイプの葵と紫穂が嘆くのを見て、マサラは蕾見の乱入を提案した。
5対1でも問題ないというが、手袋をとって右手を結界内に入れた蕾見は見た目の変化を嫌がり拒否してしまった。
「それじゃ、コレを使ってくだサイ!」
バトゥラが壁に埋め込まれたボタンを押すと、またフィールドに亀裂が走る。
現れたのは、像ではなく4人分の武器だった。
「超能力を攻撃力に変換できる特別製デス!ただし、セラの体には傷つけないでくだサーイ!」
「これで?!難しいなあ…!!」
薫は鎖付きの鉄球を、葵は弓矢を、紫穂はサーベルを手にとる。
そして天理の前には、扇と…
(…短剣?私だけ2つ?)
短剣があった。ただし扇の下に隠されており、天理が短剣も手にとっていることは提供したバトゥラ以外知るタイミングがなかった。
「ウチからいくで!」
すぐさま、葵から攻撃に出る。
放った矢をテレポートで転移させ、次々と像に命中させていった。
紫穂はサーベルを器用に回しながら、その武器の特性と使い方をサイコメトリーで透視みとり、華麗に像を両断していく。
二人とも、超能力と武器をうまく組み合わせて戦闘に挑んでいた。
天理も、手に取った扇を広げて構え、その使い方をサイコメトリーで透視みとる。
「…よし、後方支援は得意だよ !」
サイコキネシスで弾かれるように飛び上がる天理。
上空で広げた扇を大きく仰いで見せた。
「わ、何やこれ…?!」
「すごい、見るより先にわかる…!」
風に吹かれた葵と紫穂は、華麗に連携して次々と像を打ち破っていく。
まるでお互いの動きも像の動きも、全方向見えているかのように。
「あれは…テレパシーを増幅させる武器なのね」
「なるほど、それであんなに連携がスムーズに…!教えたわけでもないのに、すごい…!!」
蕾見の読み通り、テレパスの天理に与えられた扇はテレパシーを増幅させる武器だった。
複合能力でサイコキネシスも持つ天理は、少し仰ぐだけで本来の動きよりも大きな風を思念波とともに巻き起こし、味方に与えることでスムーズな情報連携をとることができる。
上空にいるのは、戦況を把握するためのようだ。
「ザコはウチらがひきうけた!!」
「そのオバさんお願い、薫ちゃん!」
「もちろん、そっちもサポートするよ、っと!」
天理が薫に向けても扇をふるう。
マサラの動きも読みつつ、サイコキネシスでも援護できるように動いているのだ。
「よっしゃ!!おりゃあーー!!」
薫が鉄球をマサラに向けて投げる。サイコキネシスも上乗せされ、尋常ではない勢いで振るわれるが、マサラはテレポートでそれをよけていく。
またリング状のエネルギーがいくつも放たれ、薫は全て鉄球で相殺してみせた。
「埒が明かないわね…それなら!!」
マサラが天理をちらりと見てから、新しく召喚した像とエネルギーの塊を一斉に薫になげうった。
「!!やってやる!」
全て受けきろうとする薫。だが、エネルギー同士の衝撃で一体は粉塵がまって砂埃に包まれてしまった。
視界の混乱、マサラが狙っていたのはまさにこれだった。
上空の天理からは何も見えない。薫は今頃サイコキネシスでガードできているかもしれないが、無防備なのは葵と紫穂だ。
瞬時にそれを判断した天理は、薫よりも二人を優先するために腕を振るおうとした。
だが、マサラの戦い方を見て思い出したように、作り出した風邪を空気砲のようにエネルギーの塊にして、扇の先端から放ってみせる。
「きゃっ!」
フィールドすれすれで空気砲は散り、葵と紫穂の周りの視界がひらけた。二人は突風に驚きながらスカートを抑える。
すぐに天理の援助だったことに気付き見上げた。
上空の天理の背後に、瞬間移動で像が現れた瞬間だった。
「!天理!!」
「危ない——!!」
紫穂は咄嗟に手を伸ばすが、サイコメトラーの彼女には何も手出しができない。
葵はテレポートでの退避を考えたが、おそらく発動が間に合わない。
薫はその声だけを聴いて、声のした方を見るしかできなかった。
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