02

目を閉じたまま、まだ冴えない珀祢の頭の中に子供の声が聞こえてくる。

しかも一人ではない、四、五人くらいだ。一人は声変わりしているようだが、全員男の子のようだ。
鼻をわずかにぴくつかせ、その場の匂いを探る。木材と薬品、それから畳といっただろうか、それらの匂いがした。ここはどこかの山奥の古い民家か何かだろうか。


「なかなか起きませんねー…やっぱり頭打ったんでしょうか?」
「いや、瘤はできてなかった。頭は打ってないはずだよ」
「そうですかー……」


ざわざわとした声から、はっきりとした会話が聞こえてきたところで漸く目を開ける。


「……」


木材の匂いは、建物が木で出来ていたからだった。そして少し頭を動かしてみると、左に箪笥があった。とあるひとつの引き出しから草が飛び出ている。恐らく薬草か何かだろう。


「わっ!」


箪笥を見ていると、右上の方から男の子の声がして顔をあげる。眼鏡をかけ、両頬にそばかすをのせた10歳くらいの男の子が尻餅をついていた。

(この服装…!!)

「どうした乱太郎!」
「女の子、目覚ましました!」
「本当か!」


今度は茶髪の男の子が包帯片手にこちらに近づいてきた。乱太郎と呼ばれた眼鏡の男の子が水色なのに対し、この茶髪少年は緑色の服を着ている。

(まさか…いやまさか)

乱太郎だけでは判断し難かったが、この茶髪少年の服装を見て珀祢は思った。

(この人たち、忍者のコスプレしている…?ということは、これは昔あったという"コスプレ喫茶"とかいうやつ…?)


「どうだ伊作」
「仙蔵!」
「立花仙蔵先輩!」


シュタっという足音が聞こえ、上半身をお越し二人が声を掛けた方を見た。
茶髪少年と同じ緑色の忍装束を着たストレートヘアの人がたっていた。容姿端麗、見た目だけなら女性にも見えただろう。

立花仙蔵と呼ばれた彼は珀祢を見た瞬間、一瞬だけ眉をぴくりと動かした。


「この通り、目が覚めたばかりなんだ」
「そうか。学園長先生から、彼女が落ち着いてから来るようにとのことだ。その際は私が同伴することになっている」
「うん、分かった。」


学園長先生…店長くらいの立場のすごい人なのか、はたまた凝った設定なのか。
珀祢がぼーっとしていると、乱太郎が伊作に「やっぱり頭打ってませんか、あの人」と耳打ちしていた。


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