幸運少女と食満留三郎
伊織が目を覚ますと、すぐに留三郎が抱きしめてきた。伊織はびっくりしながらも留三郎の背中に手をまわし抱きしめる。
すると急に留三郎が伊織から離れてしまった。顔を真っ赤にしてる。
「あの、私なんで…」
留三郎に解放され、部屋を見渡すとここは医務室らしい。崖から落とされた記憶しか残っていない伊織にしたら、何故自分がここにいるのか不思議なのだ。
「それはだな」
「私が君を助けたからなんだ」
「利吉さん!」
留三郎の言葉に続くように、医務室の入口から声がして見てみれば、そこには山田先生の息子である売れっ子プロ忍者の利吉がいた。
「私は仕事あの忍者を追っていたんだが、まさか彼らが君達を襲うとは思っていなくてね。どの道あの忍者を片付けなきゃならなかったし、苦戦してたようなので助けたというわけ」
留三郎と戦っていた忍者を倒した後、伊織の話を聞き留三郎を先に忍術学園に戻らせ探しにいったのだ。すると伊織の叫び声が聞こえ駆け付けるとあの忍者が伊織を崖から落とした後。始末し、伊織を助けて忍術学園に戻った、というわけだ。
「背後が崖だという事に気づかなかっただなんて、六年生にして不覚です…」
「まあ、あの忍者たちなかなかやる人たちだったから仕方ないっちゃ仕方ないよ!」
俯く伊織ににこりと利吉が笑うと、留三郎と目を合わせて「それじゃ、僕はそろそろ」といい医務室を出ていってしまった。
「ごめんね留三郎…私のせいで実習は失敗だね」
「まあ、仕方ないだろう。俺も結構苦戦してた。正直、あそこで利吉さんが来なかったら…」
実習内容が簡単だと思ったら、本当はあの忍者たちが絡む事が分かっていて六年生同士のペアである伊織たちに当たったのかもしれない。
伊織は話を繰り返すだけになると思い、話を少しだけ変えた。
「…私たち、実習やり直しだよね?」
「そうだな。伊織の怪我が治ってから、だが」
「そっか…」
会話がすぐ途切れてしまい、何となく気まずい雰囲気になる。
互いにちらっと相手の顔を伺うが、なかなか言葉は出てこない。
「あのさ!」
「俺!」
見事に出だしが被り、一拍ぽかんとした後に留三郎が口を結び伊織の話を聞く体制に移ってくれた。
「あのね…留三郎、この間、怒ってたよね?なんで怒ってたの?私が真面目に点検してなかったから…?」
そっと聞くかのように小さな声で言う伊織。留三郎は一瞬眉をぴくりと動かして反応した後、しばらく考えこんでから息をはき、口を開いた。
「この際だからはっきり言うし、はっきり聞くぞ」
「は、はい!」
きりっとして言った留三郎に思わず布団の上で正座をして返事をする伊織。
「俺が機嫌悪かったのはな、嫉妬してたからなんだ」
「し、嫉妬?」
「小平太とイチャイチャしてるし、団子奢ってもらうってめちゃくちゃ喜んでただろ?…小平太に嫉妬したんだ」
「嫉妬したって、つ、まり…?」
「俺、ずっと伊織が好きだった。」
頬を赤らめ言う留三郎が、昔伊織を探しててくれた時照れ臭そうにしていた時の留三郎と重なる。また、心臓が大きく脈をうった。
「わ、私…」
「お前が小平太を好きなのは知ってる、でも俺は諦められないんだ…!」
「え?」
「……困らせて悪い」
「ちょっと待って留三郎、私が好きなのは、おわっ!」
立ち上がろうとした留三郎を引き止めようと、立ち上がろうとした伊織が留三郎に倒れ込む。正座していたので足が痺れたのだろう。伊織が留三郎を押し倒している図が完成した。
「私が好きなのは、留三郎だよ!」
「えぇ!?」
「小平太の事は友人として好きなの!」
「そうだったのか…」
うなだれるように大の字になる留三郎。いつまでも乗っかっていては迷惑だなと思った伊織はそっと留三郎の上から身をひく。
「…夢、じゃないんだよな」
「夢じゃないよ」
「キス、してもいいか」
「いいよ」
ゆっくり起き上がる留三郎。ちょこんと座っている伊織の肩に手をおき、そっと顔を近づけて唇を重ねる。
「大好きだよ、留三郎」
「俺もだ伊織」
笑い合う二人を、僅かにあいた医務室の天井から見つめる伊作と利吉が顔を合わせ微笑む。
「よかったね、結ばれて」
「すれ違ってたので、僕としてはハラハラしてたんですよ」
一番うれしそうなのは、大好きな二人が結ばれた伊作なのかもしれないなと、天井裏 伊作の隣で思う利吉なのであった。
完結
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