Act-08 報告
小学校の1年の授業が終わるのは速い。
週に2日間6時間授業になるが、給食が終わって、もう1コマの5時間目が終われば帰りのホームルームがあって帰宅。
両親共働きで迎えに来れない生徒は、別棟の学童保育で5時まで預かる。
「桜ちゃんはお迎えくるの?」
「うん。 当分、ばあやがー…」
と、駐車場の方をみて桜は驚いたように目を見開く。
「探君!」
黒い外車の前に立っているバーバリーのスーツを着こなした青年がにこ、と笑って片手を上げる。
「ど、どうしたの、探君! 高校は? それに―… なんで?」
「今日は転入手続きだけ。 教科書も揃ってなかったしね。だから、ばあやのかわりに"彼"と迎えに来たんだよ」
ランドセルを受け取る探。
「白馬のお兄さん!」
「ホントだ! 白馬の兄ちゃんだ」
「―…… あれ? 君たちは少年探偵団の…」
「こんにちは! そっか、桜ちゃんが暮らしてるのって探お兄さんのお家なんだね」
「そうだよ。 桜の父と僕の父は、仕事上の付き合いもあってね。 ―… 初日にお友達ができたんだね?」
「うん。 今度、米花町を案内してくれるって! あとね、少年探偵団に入らないかって誘ってくれたの」
「少年探偵団? そっか。君達は探偵団で色々活躍してたんだったね。」
「おう! だから、桜をメンバーに加えたんだ! 困った時は助け合うのがモットーだからな!」
「ね、いいでしょう? 桜ちゃんが入ると男の子3人、女の子3人で丁度いいの」
「う〜〜ん。 僕は構わないけど、桜ちゃんのお父さんと主治医の先生の返事次第だね。 はしゃぎ過ぎて熱だしたら桜ちゃんパパが大騒ぎするだろうし」
探はやんわりと笑を絶やさない。
「―… 坊ちゃん、嬢ちゃん。そろそろ急がないと今日は―…」
運転席から桜たちの会話を邪魔しないようにとしていたサングラスをかけた男性が降りて来て静かに声をかける。
耳にイヤホンを付けているのはガードならではだろう。
「あ、そうか。今日は珍しく父さんが早く帰ってくるから、ばあやが夕食の支度に大わらわでね。 だから、変わりに彼に運転を頼んだんだよ。」
「探お兄さんのお父さんは、毎日そんなに遅く帰ってくるんですか?」
「ん―…まぁ、ね。 朝は早いし、たまに国会にも行ってるし、物心ついた時はいないのが普通だったかな。」
「国会?」
「そ。 まぁ、色々忙しい人だからね。 日曜祝日なんてあってなきがごとしだよ。 あ、ワトソンも無事に検疫が終わって帰ってきてるよ。」
「ワトソン? それ、ホームズの相棒の名前ですね!」
「ワトソンはメスの鷹なの。 レディ・ワトソン。探君のお友達。とってもかわいいのよ」
「鷹がペット! 恰好いいですね!」
「ね、ワトソンはどこに居るの? 何時もは探君と一緒にいるのに」
「検疫で戻ってきたばかりでまだ気が高ぶっているから家に置いてきたんだ。 帰ったら餌をやろうね? ワトソンも桜に会えると喜ぶよ」
「うん! ―…じゃあ、また、明日ね。」
「明日ね! 桜ちゃん」
運転手の開けた後部座席のドアに乗り込む桜と探。
運転手はドアを閉めると運転席に回る。
ガードという仕事柄なのか。
サングラスで顔を隠した男には1ミリの隙もない。
(銃を持ってる。―…ただの運転手、兼、ガードなんかじゃねぇな。しかもあの大きさからみて可也の大型の銃で左利きだ。最も左利きってのは珍しくもねぇけどな)
コナンはポケットにいれてある追跡ボタンをいじくりまわず。
「止めておきなさい」
「え?」
「ポケットにはいっているモノよ。白馬の家の車に付けたら手が後に回って毛利さんたちに迷惑をかけるだけよ」
「―…っ。 わぁーってるよ」
「それに、微弱な電波でも白銀さんの躰にはアレルギーの治療でペースメーカーが埋め込まれているかもしれない。 発作を起こして倒れたら責任を取るのは保護者である毛利さんたちよ」
「―…」
コナンは黙り込む。
「さ、帰りましょう。 今日は貴方たちの大好きな仮面ヤイバーの特集番組がある日でしょう?」
「あ!! そうだ! ビデオ入れなきゃ!」
「俺も!」
「僕は朝、セットしてきました」
わいわいと駐車場を後にする3人。
哀はくすりと笑うと3人の後を追う様に続いた。
(灰原―… なんか変だ? それに、白銀も。 あのガードを見た時、とても嬉しそうな顔をしたのは何故だ?)
コナンは有希子と優作からの電話を反芻する。
(何故、詮索をするなと云ったんだ? 詮索すると何かマズイ事でも起るのか?)
ブツブツとつぶやきながら歩くコナン。
「コナン君、何、一人小言いってるの?」
「気味が悪いですよ。 病人みたいで」
「病人―…?」
「あら、江戸川君はとうに病人よ。 事件を呼ぶ少年だから、今頃、白銀さんの家に潜り込んで何かを探ろうとしてるかもしれないわ」
「ぇぇえー…!!」
「駄目ですよ! そんな事考えちゃ!」
「そうだぞ! 桜は外国からの転校生なんだから、分からない事があっても、迎がきてもおかしくないんだからな!」
「そうそう! 元太君のいう通りだよ!」
「わっ 解ってるよ! 白銀さんは悪い事をした人じゃない事位。 ただ、白馬のお兄さんが言っていたワトソンに会ってみたいなーって思ってただけだよ!」
「歩美も鷹を傍で見て見たい! 哀ちゃんは?」
「そうね。 私も触ってみたいわ。」
「それならわかります。 今度、僕たちにも見せてくれるか、桜さんに聞いてみましょう!」
「じゃ、明日にでも聞いてみよーぜ! でも今日の所はまず、ヤイバースペシャルだぜ」
「おー!」
「どんな話だっけ?」
「仮面ヤイバーと火とかげの王の話でしたよねー」
ころっと話をかえて歩いて行く3人をみて、コナンはほっと息を付いた
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