Act-09 車内密談 後編
「桜ちゃん。 口の悪い事をいうと、食後の苺を抜くようにばあやにいうよ」
「え!!」
「女の子なんだから、危険な事はしちゃ駄目だよ。例えハッキングが出来るとしても、僕らが預かっている以上、危険な真似は絶対させない。」
「でも、探君のお手伝いならしたい。 工藤新一や怪盗KIDのお手伝いは死んでも嫌だけど」
「なら、もしも、どうしようもない事態になったら、そのBAUに協力をお願いするかもしれない。 その時は一番最初に桜ちゃんに御願いするから、その時、桜ちゃんから、そのガルシアって人に、正攻法でハッキングを頼んでくれるかい?」
「分かった。」
「でも、まずは誰にも頼らずに自分でできる所まで調べるつもりです。 警視総監の息子として父の七光で協力をするような事はしたくありませんから。」
「そうか。 ならば、その時が来たら俺がいなくても君に協力してくれるように、私の方からもリーダーのホッチに頼んで置くよ。 それにBAU局長のストラウスも桜だけには甘いんだ」
「ありがとうございます」
桜はふっと笑う
「探君は、江戸川コナンと違うのね」
「え?」
「江戸川コナンは沢山の器械を身につけてこれ見よがしに事件を解決していく。 恐らく、FBIのガルシアの事を知ったら、あの子供言葉で喚いて父親の優作さんに頼み込んで組織を調べて欲しいと、脅す位はする筈よ。 元の姿に戻りたくて喚いてるみたいだし。 ―‥ 最も事件を解決しているのは表面上は毛利小五郎だけど。 工藤新一の時は事件を解決する度に新聞に取りあげられて自慢ばかりしている自信過剰な高校生。」
「自慢ばかりする探偵は嫌いかい?」
「工藤新一なんて親の七光でちやほやされているだけ。 ―… あ、探偵が嫌い、という訳じゃないの。 新聞に取り上げられて俺は凄いんだって自慢して、どうやって事件を快活したのか言いふらしているトコが嫌い。 時分の後ろに工藤優作氏がいて、その息子だから、とおだて上げれている面があるのに気づいてない」
「七光というのなら、―… 僕の父も警視総監だけど 僕も嫌いかい? 僕だって少なからず父の影響で犯罪現場に入らせてもらえているよ。」
「探君は大好き! 決して新聞の取材には応じないし、必ず警察を立て表には出ないで影に徹している事を忘れない。 僕が解決したんだと、自慢したり言いふらしたりしないもの」
「過大評価だね。 でもそう言って貰えると嬉しいよ。」
「つったく… 誰に似たのやら」
赤井は苦笑する。
「父親でしょう? FBIが評価される事件があっても解決に導いた捜査官の名前がでる事はない。 そして地道な調査です。 特に赤井さんは一匹狼で調査をして大物狙いの傾向が強い。」
「まぁ、否定はしないが」
「そうそう。あの江戸川コナンって子、メガネに何か仕込んでるわ。それからサスペンダーも伸縮補材。 それも可也協力な素材ね。 後、履いてる靴もサイドに螺子見たいのが付いてたわ。 何か仕込んでいるのかしらね」
「ほお―…」
「たしか、工藤新一の隣の家が発明家だった筈。 何かしら協力をしているのかもしれませんね」
「確か阿笠、とか云ったか?」
「まぁ。推理力は工藤新一だとしても見かけは子供ですしね」
「そう? 私は嫌いよ。 超絶音痴の江戸川コナンの唄なんて二度と聞きたくないわ」
「音痴? コナン君は音痴なのかい?」
「資料にはたしか、工藤新一は音痴とあったが、そんなに酷いのか?」
「もう、絶〜〜〜〜っ対に!! 2度と歌ってほしくない。 絶対音感があるっていうから楽しみにしてたのよ? でもね、テストですっごく下手だったのをカラオケのテープじゃ歌いにくい所為だってテープの所為にしたのよ。 耳が腐るかと思ったわ。 歌への冒涜よ!」
「ははっ… それは歌の女神の祝福を受けた生まれたお前と比べる方が可哀想だ」
「パパ!」
「ん?」
「パパは聞いてないからそんな事が云えるのよ! 冗談じゃないわ! それにあの子! この私に向かって”自信があるならアカペラで歌ってみせてよ”みたいな事を言ったのよ! この、私によ!?」
「はぁー… その坊やには気の毒としか言いようがないな。 で、お前はどう言い返したんだ?」
「そんなの1曲唄って黙らせたわよ。 ロシア語と日本語を取りませて"カチューシャ"を歌いきってあげたわ。 暫く発声練習をしてないから微妙に音程がズレてしまって、江戸川君の歌が下手とは言えないけど、それでも素人には気づかないレベルで唄えたと思うわ」
「売られた喧嘩を買っちゃたわけだ」
探がくすくすと笑う
「当然でしょ? あの超絶音痴! あのレベルで絶対音感があるって公言してもいいってだれが教えたのか、有希子さんと優作さんに、伺ってみたいわね」
「―… おいおい。 それは」
「いまは聞かないわよ。 でも次に歌で喧嘩売ったら耳元で本当の名前を言ってやるわ」
「桜―…」
赤井は静かに車を止めるとあやすように抱き上げてポンポンと頭を撫ぜた
「頼むから工藤新一が江戸川コナンだという事は黙っててくれよ? でないとお前の身が危険になる。 パパはお前を喪いたくない」
「むー…」
見た目の姿で頬を膨らませる桜
「大丈夫、コナン君だって、歌に関して桜ちゃんに喧嘩を売るなんて事は2度としないよ」
「そう思う?」
「だって、歌に関しては桜ちゃんはジュリアードの教授とオペラ界の巨匠が即日ミリオンセラーを保証した折り紙付きだろう?」
「顔だけのアイドルなんてまっぴらごめんよ。」
「解っているよ。でもね、即日デビューできるって言われている位の歌唱力を持っているんだから、比べられた方が―… コナン君を含めて憐れだよ。 イギリスの聖歌隊を鍛え上げたのは桜ちゃんだろう? それだけの技量の持ち主なんだから大目にみてあげないとね」
「うううーーーーー」
「だ、そうだ、桜。 わかるな? 音に関しては妥協しない性格である事は良く解っているが、我慢してくれ。 な?」
「ぐるるるる…」
「もう。音楽に関しては容赦の無い子だね。 そうだ! 来月、3大テノールがくるコンサートの招待状をペアでお父さんが貰ったって言ってたんだ。 まだ誰にも譲ってない筈だから連れてってあけるから、それで機嫌をなおしてくれる?」
赤井の膝に抱かれて乍もまだ剥れている桜に探が苦笑しながら声をかける
「ホント!? 3大テノールのコンサート?」
「多分、だれにも上げてない筈だよ。 それにお父さんがね、桜の唄を聴きたいって言ってたよ」
「白馬のおじ様が」
「生で桜の唄を聴いた事はないから早く帰るって。 職権乱用だと思うよ。」
「おじ様や探君の為なら何曲でも唄ってあげる! 勿論パパの為にも!」
一気に機嫌を直す桜
「さてと、桜。ここでの会話はオフレコだ。 いいな? パパや探君の前で子供のフリははしなくていいが、小学校では見た目の姿で振る舞うようにな? それから江戸川コナンには近寄るな」
「何故?」
「恐らく、これから必然的に絡みが出てくるからな」
「じゃあ、学校ではそれなりに子供のフリをしているわ。 大丈夫。弱みはたっぷり握ってるもの。 いざとなったらFBIの権力でご両親を脅せばいいだけの事よ」
「法律違反な事は禁止だ」
「だめ?」
「優作さんや有希子さんには私の方から釘をさしておくから心配するな」
「分かった。」
桜は真顔になって頷いた。
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