Act-12 朝の風景
「え!? いいのっ!?」

赤井と並んで朝食を―…といっても、桜の席に置かれたのは豆乳で作られたコーンスープと小さなデニッシュにサラダ。
お昼ごはんにと作ってくれたのはサンドイッチ用のパンでソーセージを巻いたロールサンドとフルーツサラダにアップルティ。

「勿論でございますよ。 探坊ちゃまからお友達が出来たと聞いて、ばあやはもう、嬉しくて。」
「邸の警備の問題があるから今週末とか来週末とかは無理だが、来月以降の週末ならお友達を御呼びしてお茶会をしてもいいからね。サンルームなら日差しも遮れるからリビングでのお茶会よりも楽しいだろう」
「総監。 気持ちは有りがたいですが、危険では」
「いや、来月以降の土曜か日曜のどちらかなら、私が公休をとれそうだからね。桜ちゃんのお友達なら私も会ってみたいよ」
「少年探偵団の子供たちですよ。団長は小嶋元太君、だったかな?」
「うん、あと円谷光彦君に吉田歩美ちゃんと、灰原哀ちゃん。 それから超絶音痴の江戸川コナン君」
「―… また、嫌われたものだね、コナン君は」
「桜嬢ちゃまはその江戸川君、とやらがお嫌いなのでございますか? まだ昨日、会ったばかりでございましょ?」
「だって、この私に音楽の時間に喧嘩吹っ掛けてきたんだもん! 絶対音感あるなんて信じられない」
「桜。音楽に関しては他の子たちも皆お前の足元にも及ばないだろう? そんな言い方をするんじゃない。」

赤井が窘める

「そうだよ。日本にいる間は必要以上に目立ったら危険なんだから。―… と、言っても桜ちゃんが歌が上手なのはもう噂になっちゃうだろうけどね」
「ぁー… そうか。 ムカ付いたからつい、唄っちゃったけど、目立つ事はしないって約束だったっけ……」
「まぁ、起ってしまった事は仕方ない。それに学校側も、お前はアメリカで飛び級出来る位IQが高いが、日本であえて小学校に通うのは学校という場所に通わせてやりたい、と父親の希望でと云ってある。だが、回りとのバランスもあるから、授業では専門用語とかで答えるなよ?」
「うん。 大丈夫。 昨日、教科書貰ったし。今日、歩美ちゃんに授業でやるトコ、聞いておく。」
「そうだね。まぁ、勉強は日本にいる間は僕が家庭教師役って事で云っておくといいよ」
「うん!」

桜はにこりと笑う。


「そういえば、秀パパ、今週末はお出かけ、大丈夫? 行きたいトコがあるって云ってたでしょ?」
「ん? あぁ―‥‥ そう、だな。」

赤井はふっと溜息を付く。

「お前にな、1曲、唄って欲しい場所があるんだ。」
「―… 唄?」
「パパの知り合いが眠る墓地で、お前の好きな歌を。」
「―… ! 亡くなった、の?」
「パパの仕事仲間、だったんだか、事故で無くなって。 親戚が居なかったから無縁墓地に葬られた。 今週末は月命日なんだ。―… 嫌か?」
「ううん。 いいよ。天国に行けるように歌ってあげる。」
「―… ありがとう。 友人が喜ぶだろう」

(明美、俺に出来るのはこれ位しかない。お前が葬られたのは無縁墓地。それも警察のモルグから組織が盗み出してさびれた寺に投げすてたという。)

(日本警察が秘密裡に探しているが、今だにみつけられてない、という事になっている。 埋葬された墓地を知っているのは日本警察のTOPと警察庁長官位だ)

「秀パパ?」

桜は黙り込んだ赤井を見る。

何かを考え込む時の顔。

「―… パパ」

「あらま、赤井の旦那様は何か事件の事でも考え出してしまったようですわねぇ」

赤井の前に置かれる珈琲。

「ん、もう!」

ぷー、と頬を膨らませる桜はすーっと深呼吸を一つ。



♪・・・・・・・・♪

Humpty Dumpty sat on a wall
Humpty Dumpty had a great fall.

パンプティダンプティー 壁に座ってたら
パンプティダンプティー 勢いよく落っこちた

All the king's horses, And all the king's men,
Couldn't put Humpty together again.

王様の家来や馬でも
ハンプティーは元に戻せない


Syuuichi Akai sat on a wall
Syuuichi Akai had a great fall.

All the Papa's daughter, And all the Papa's Gun,
Couldn't put SyuuichiPaPa's together again


♪・・・・・・・・♪


「酷い編曲だな…」
「あ、ちゃんと聴いてた?」
「―… まさか、パパとハンプティ・ダンプティが一緒にされるとは、な」
「ふふふ。週末はもっとちゃんとした唄を歌ってあげる。マザー・グースじゃない曲を」
「そうしてくれ。」


Pipipipi・・・


小さなアラーム音が鳴る。

「あら大変! 学校へ行く時間まであと15分ですよ、御仕度は?」
「大丈夫。今日の授業に必要な教科書は、全部入れたもん。後はばあやの美味しいサンドイッチをランチバックにいれるだけ」
「ばあや。サンドイッチは僕がいれるから、車を出しておいでよ。桜は、大急ぎで歯を磨いて玄関においで。ランドセルは僕が車まで持って行ってあげるから」
「うん! ありがと、探くん」
「どういたしまして」

パタパタ、とキッチンから出ていく桜

「全く、朝から笑わせてくれるね、桜ちゃんは」

くっくっくっと笑う白馬。

「申し訳ありません。 色々と思い出す事がありまして」
「墓参りは、時間が空けば私も行こう。 今は無縁仏として扱うしか出来ないが、時がくれば、家族の元へ、残された遺品と一緒に返してあげれる事を祈ってな」
「ありがとうございます。」
「墓地の場所は… まだ、知られてないとしたら危険では?」

桜のランドセルを持ちながら探が云う

「かもしれない。 だが、俺は約束したんだ。桜を護ると。 その約束として桜の姿を見せてやりたい」
「なら、僕も行きます。」

探が云う

「いいのか? 学校は」
「僕が通うのは正式には月曜からです。今週は小学校の迎はばあやと僕で行きますよ。」
「そうか。探君なら桜も懐いているから心強いよ。 下手な事に手を出さないように見張ってやってくれ」
「承知しました。」

と、そこへブラシとリボンを持った桜が駆けてくる

「パパ! リボンがドアに引っかかった!」
「―… やれやれ。 直してやるから椅子に座れ。」
「ふふっ。やっぱり女の子ですね。」

ツインテールにしていた髪がほどけてリボンが絡まっているのをみた赤井は溜息を付く。

「いい風景だな。 女の子がいるというのは華やかになって。」
「本当に。」

慣れた手つきで髪を縛りリボンを結ぶ。

「ありがと、パパ」
「家の中位ならいいが、学校や外では絶対、走るなよ。」
「はーい」

リボンを直してもらってカーディガンを羽織る桜

「ばあやと探がいるから大丈夫だと思うが、気を付けて行くんだよ。」
「はい。行ってきます」

桜は椅子に座ってる白馬の頬にちゅっ!とキスをする。

「桜! ここは日本だ。 アメリカならキスは挨拶で済むが日本は違うと云っただろ」
「あ、そっか」
「構わないよ。 桜ちゃんはもう、家族のようなものだ。家族どおしのキスは珍しくもないだろう。 それに探もイギリス生活が長いからキス位じゃ動じないよ」
「なら、いいのですが。」
「パパ。」
「ねぇ、 パパはキス、くれないの」
「はぁ―… 朝から賑やかなお姫さまだ。気を付けて」
「うん。 パパも気を付けて。週末まで事故っちゃ駄目だからね」
「あぁ、解ってるよ」

赤井が額にキスを落とし桜はぎゅっと抱き着いた
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