Act-14 夫々の思惑
「お茶会?」
「桜ちゃんがね、招待状もくれるって。」
「招待状」

嬉しそうに話す歩美。

「朝、桜ちゃんのオウチから遠い順に迎に来てくれて、帰りも送ってくれるって!」
「へぇ〜 白銀さんのオウチで?」
「ううん。桜ちゃんが暮らしてる白馬のお兄さんのオウチ。」
「そう、白馬さんの? 仲良くなれて良かった、わ……って!?」

小林はハタッと思い出す。
白馬探の父親は日本警察乗れなかった頂点に立つ警視総監。
サミット等で各国首相陣営の警備の陣頭指揮をとり、皇宮警察や政府閣僚との繋がりもある。
付き合っている彼氏とはキャリアが違う。
警察官の頂点に立つ
コナン達に巻き込まれ、警視庁の警部とは知り合う機会を得たが、警部と警視総監では雲泥の差さだ。

もし、彼氏と警視総監を会わせる事が出来たらー………
もし、警視総監の覚えめでたく為ったらー……
彼との結婚式で祝電とか―…??

「先生? どうしたの?」
「えっと、その、保護者とかは? 誰かー……ホラ、江戸川君とか小島君が、オウチの中を探検とかして、詮索しそうじゃない?」
「でも、子供だけのパーティだもん」
「いくらコナン君でも、警視総監の家を探検とかするような馬鹿な事しませんよ」
「白銀は犯罪者じゃないもんな!」
「いくら事件ホイホイの江戸川君でも、初対面の家でそんな事したら、まずは保護者が捕まるわね。 一介の探偵と、警視総監じゃ勝敗は見えてるわ」

光彦、元太、哀が云う。

「それともー…… 警視総監とコネを作りたい、とか」
「そ、そ、そんな事は」
「当たり、だわね。彼氏の昇進の内助の功、って所かしら?」
「せ、先生が気にしてるのは江戸川君の事件ホイホイの方です! 警視総監家に事件呼ぶんじゃないかと気になって」
「ひどいなぁ。僕が呼ぶんじゃなくて、事件が僕をー……って!」
「アナタは事件に首を突っ込み過ぎなのっ! そのせいで、何回、吉田さん達を事故に巻き込んだか、思い出させてあげましょうか?」

哀がゴンッとノートでコナンの頭を叩く。

「小島君も! 暇潰しとかでサッカーボールとか持って行かない事!」
「え〜? ダメか? 俺のヘディングとか「小島君、カレー事件」」
「っ ははは、はぃっ 持って行きません」

哀にビンタされた事を思い出したのか元太は背筋を伸ばす。

「カレー事件?」

いつの間にか寄ってきた桜が聞き咎める

「そ! 吉田さんと私がお昼ご飯に作ってたカレーの中に、食い意地の張った誰かさんがサッカーボールを隠し味に投げ込んで、吉田さんをカレーまみれにしたの。」
「だってよぉ、出来上がってるのにさ、後30分煮込むとかいうだぜ!? 酷いだろ!?」
「家の中でサッカーするほうがおかしいの! 電気とか壊れたら弁償するのはアナタのご両親よ! 研究所の電球は取り寄せ品なんだからねっ!」
「しぃません…」
「で、元太君、灰原さんに叩かれたんです。 で、また食材の買い出しに行く時ー・・・「円谷君! アナタも同じよ。 アンタ達に任せたらヤイバーチョコとかヤイバーチップスとか、余計な物ばかり買うからでしょうが!」
「すいません」

首を竦める元太と光彦。

クスクスと笑う桜

「灰原は怒ると母ちゃんよりも怖ぇぞ」
「そーゆー事云うと2度とノート見せないわよ?「わわっ! ゴメンっ もう言わねぇから」」
「もぉ! 元太君のせいですよ!」

「でもね、哀ちゃん、本当はとても優しいんだよ。」
歩美が云う。
「そう」

(シェリーお姉ちゃまも優しかった。 会いたい。 ジン兄と並んでとてもお似合いのカップルだったから、大きくなれない私がジン兄の恋人になるなんて出来ない事だったけど)

でも、今の私は、パパを知ってる。
光の世界。
ジン兄達の居る闇の世界を知っている。

「白銀さん?」
「え?」
「気分でも悪い?」
「いいえ、大丈夫。 学校は初めてだから、面白いなって」
「面白い?」
「桜は、半年位前で入院してたから、保育園も幼稚園も行ってないもの」
「あ、そっか。心臓の―…」
「私も行ってないわよ。」

桜の言葉に哀が云う。
「え?」
「私も海外にいたんだけど、家庭の事情っていう事で、家庭教師だったの。」
「そう」

コナンは複雑そうな顔をする

「あ、そうだ! 桜さん、明日の土曜か明後日の日曜、お暇ですか?」
「ご免なさい。今週は、パパとお出かけするの。」
「折角お友だちになれた記念に、哀ちゃんの家で歓迎会って思ったのに。両方ともダメ?」
「ご免なさい。パパのお友だちが眠る場所で、讃美歌唄ってあげる御約束したの。」
「ってことは、天国に送ってあげる仕事をするんだよな」
「お仕事と思った事は無いんだけど、お墓がちょっと遠くて、もしかしたらホテルでお泊まりするかもしれないの」
「そぉ。 残念ね。」
「ごめんね? 月命日だからどうしても行きたいんだって。探君も一緒に来てくれるの。」
「ツキメーニチ?」
「月命日っていうのはですね! 例えば、先生が5月4日に亡くなったとして、6月4日とか、9月4日とか、亡くなった日の事をいうんです。 祥月命日は5月4日で無くなった月日です。」
「勝手に殺さないで頂戴。 ―…でも、その通りね。誰かが7月10日に亡くなったとして祥月命日は…」
「7月10日!」
「そう。 でも7月10日に確実にお墓参りを出来ない場合は、他の月で、その人が無くなった10日に行く場合もあるの。 だから、今週の土曜日は、白銀さんのお父さんは祥月命日にお友達のお墓参りに行けなかったから、月命日にお参りに行く、という事なのね?」
「はい」
「そう。」

(月命日か―… そういや、灰原の姉さんが無くなった月命日もそろそろ―…って、同じ日じゃねーか!? けど、灰原の姉さんの遺体は警察病院からなくなって、今だに見つかってねぇって目暮警部が言ってたな。 まぁ、偶然かもしれねぇし、墓地に行くなら身元も分かってる筈、しかも警察関係なら、なんらかの事件で殉職ってぇ事もー……?)

コナンの頭が回転を始める

(月命日が同じってのは変じねぇんだけど…、な。)

何かが引っかかる。

「所で、教室掃除が止まってるけど、いいの?」
「だぁあああああああ!!!!! 試合っ 席取りっ! 自由席だから、急がねぇと!!」
コナンが顔色を変えると箒を元太に押し付けて教室からでようとして、哀が服の襟首をつかんで引き戻す

「元太! 後、頼む! 今日はスピリッツの前哨戦だから、試合後にファンの交流ゲームがっ!! ヒデが〜〜〜っ」
「えぇ〜〜? お前が遅刻ばっかするから悪いンだぞ!」
「今度ヤイバーチョコを奢る!」
「チョコだけじゃなぁ」
「ヤイバーチップスも付ける!!」
「もう一声!」
「ヤイバーガムと、ヤイバードリンク」
「ー………」
「わぁーった! 光彦の分と、歩美ちゃんの分と、ー…… 灰原には、紅茶の茶葉!」
「桜ちゃんには?」
「え?! ぇーっと、えっと、アレルギーのおこらない―… ノンカフェインの紅茶!」
「ま、いいでしょう。 忘れたら蘭お姉さんにいいつけますよ!?」
「わぁーた!! わかったからっ! 俺を試合に行かせてくれ・・?!!」

「ま、仕方ないわね。 来週の掃除当番は江戸川君に頑張って貰いましょう」
「だね!」

にこっと笑う哀はジャケットから手を放す

「操るのがお上手ね。灰原さん」
「ま、ね。 この位できなきゃ事件ホイホイ人間と付き合えないわよ。」
「全く、灰原さんのいうとおりです!」
「歩美の危ない時、哀ちゃんが良く助けてくれるんだよ! コナン君も助けてくれるけど!」
「そう。」
「ね、早くおそうじしちゃおうよ! 後は机を戻すだけだもん!」
「そうね。早く終わらせないと」
「机は僕と元太君で動かしますから、歩美ちゃんと灰原さんは椅子をお願いします。桜さんも椅子なら軽いから動かせると思いますよ!」
「重い物を持つのは男のする事だかんな!」
「ありがと!元太君も光彦くんも優しいのよね。」
「いえ! 紳士たるもの当然です」
「紳士―…」

桜はくすくすと笑う。

「ぇっと、おかしい、ですか?」
「ううん。光彦君大きくなったら、探君みたいな紳士になるかもしれないわね。」
「そ、そうですか!? 探お兄さんはイギリス帰りの紳士ですからね! 光栄です」

桜の言葉にポリポリと頭を掻く光彦

「お、俺は!?」
「元太君は―… 」

さり気にアピールする元太に桜は歩美と顔を見合わせる

「元太君は、もう一寸落ち着くようにすれば、きっとカッコいいスポーツマンになると思うわ」
「紳士じゃねぇのか」
「スポーツから何かで躰を鍛えたら、引き締まってもっと恰好よくなるわ。」
「そっか?」
「そうね。お菓子ばかり食べるのを少し押さえて躰を動かす事が好きになれば、ね」
哀が頷く。

「さ、吉田さんのいう通り掃除を終わらせてしまいましょ」

哀の言葉に、桜を含めた数名が動き出す。



そして、同時刻
FBI日本支部の業務室の中では
赤井が耳に付けたイヤホンで、桜が付けているネックレス―・・・学校にアクセサリーは禁止だが、万一発作を起こした時の緊急薬を入れた赤十字発行の医療用の為学校側も特例として認めた…―に付けられたGPSと盗聴機能付きの ペンダントトップから聞こえる話題に口の端を緩めてパソコンを叩いていた。

(これでいい。 少しの間だけでもいい。桜に友達を。楽しい想い出を。組織の事を忘れて、子供らしい楽しみを教えてやる事ができるなら。 俺は、それだけで―…)

親とのしての願い。

(俺は、少しでも長く、あの子と居たい―…)
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